第20話 近衛警備士
人手不足から、近衛警護士たちは城内で国予と共に行動していた。後方部隊が王宮以外なにも無くなった城内に移ってから施設設営の手伝い、物資の交付から負傷者の搬入まで様々だった。警護士の皆が対外的な攻撃によって不幸になった負傷者や死者を見るのが初めてで、取り乱すことは無くとも心に深く傷を負った者もいた。だが奇跡的に警護士に死者はおろか負傷者すらも出ていなかった。
ジェフがシャーリーとチャルと再会した頃、警護士たちは集められこの戦争における最後の任務を伝えられていた。
「近いうち、国際予備兵士の誰かが鍵を持ってくる。皆の誰でもよいからそれを受け取り、王宮地下の秘密部屋へ行け。私のところに持ってきても構わない。これまで伏せられていたが、そこに外の世界の人間がいる。着いたら彼らの指示に従ってくれ」
疲れ果てた警護士たちからどよめきが起きた。そもそも地下の秘密部屋は、誰も行ってはいけないと厳命されていた。まじめな王国民である警護士たちは足を踏み入れることすら考えず秘密部屋の存在も知らない者がほとんどだった。ただ、ケイトだけはかくれんぼしていた王女を探して秘密部屋を覗いたことがある。F4戦闘機との出会いの場。
上官が溜息混じりで安堵し続けた。
「我が王国の動乱がこれで収まる。我々には想像もつかないが、その鍵によってある装置を作動させ、なにやら厚い層を国の周りに張るらしい。外界と遮断されて敵は来れないから、戦は終わる」
どよめきは歓喜に変わった。死傷者を見ることはもとより、得体の知れない悪意というものを持った敵という存在が皆の心を削っていた。戦が終われば敵という人々の悪意も消え、これ以上死傷者も出ずに済むと純粋に思っていた。
「ケイト!よかったね!これでもう不幸な人たちを見なくていいし、不幸だった人も幸せに戻れるんだ!」
他の皆と同じようにランシャがケイトに抱きついた。初めて感じる、苦行からの解放に皆湧いていた。ただケイトは、喜ばしい反面上官の言う「外界と遮断」の言葉が気になり、暗く影がよぎった。
この前望楼から見渡した戦火の中にジェフがいると感じてから、彼との再会は諦めていたはずだった。それでもどこか心の片隅に、消しきれないジェフの面影が小さく宿っていた。国の出入りができなければ、いよいよ彼とは会えなくなる。
「もう一度だけでもいいから、会いたいな」
「なあに、ケイト?」
「ううん、なんでもない!」
ケイトは作り笑いでランシャを抱きしめ返した。ランシャはケイトの心を置き去りにした表情に気づかなかった。
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