第2話
彼と一緒に帰った夜、私は初めて彼に連絡した。
連絡先はクラスのグループLINEで知っていた。
結真:送ってくれてありがとう!
気をつけて帰ってね!!
彼:うん
こんなそっけない会話で初めてのLINEは終わった。
私はこの時、気持ちがもう抑えられなかった。
次の日私は彼に告白した。
教室でいつものように彼は1人でぼーっとしていた。
私はそんな彼を無理やり、誰も使っていない教室に引っ張り出した。
「私、あなたのことが好き!」
彼はそんな言葉初めて聞いたかの様な顔をしていた。
理解できてるのか不安になり、私は再び言った。
「ねぇ!好きなの!!」
今考えればこんな無理やりな告白はなかったのではないかと思う。
彼は今だにポカンとした顔をしていた。
しばらく無言が続き、彼から出てきた言葉は
「わかった」だった。
私は何がわかったのか、告白の返事で「わかった」ってのは答えとしてありなのか?謎だけが深まったが、
返事は気長に待つことにした。
それから1週間は彼は私を避ける様に行動していた。
私はあえて、何度も話しかけた。
ほとんど無視されていたが…笑
返事を待って2週間になるであろう頃に待てなくなった私はみんながホームルームをやってる時に私は彼を廊下に呼び出した。
「この前の告白の返事教えて!」
私は前振りもなく、単刀直入に聞いた。
「正直、付き合うって言う事がどう言う事なのか分からない。何をするかもわからない。」
「私が教えてあげる!恋愛の楽しさ!」
「わかった」
普通の恋愛とは少し違った恋愛が始まった。
私はまだこの関係がどれだけ
自分の価値観を覆し
自分の苦しめることになるか
わかっていなかった。
彼に恋愛を教えたい!
生きる楽しさを教えたい!という
考えだけで簡単に教えられるほど人生は簡単なものではない。
付き合って3日目に彼と一緒に帰った。
学校の授業のことや
自分の友達のこと、
そんなたわいもない話をして帰った。
それがものすごく幸せだった。
ただ一つ
名前を呼ばれたい
と思った。
彼氏になった途端、恥ずかしくなってしまい
名前呼んでよと言えなかった。
この日も彼は私の家まで送ってくれた。
彼は本当に優しいと思う。
まだ好きでもないのに…
絶対この人は私を好きになる自信があった。
なんでかな…
運命だったりするのかな…
家について彼にラインをした
結真:送ってくれてありがとう!
また一緒に帰ろうね!
今度はアイスでも食べよう!
彼:うん。
アイスいいね。
結真:好きだよ!
彼:うん。
私は彼への想いのキャパがオーバーしそうで、彼に想いを伝えた。
ラインだから言えたがリアルでは絶対言えなかった。
彼は「うん」しか言わなかったが気持ちが伝わって良かった。
正直、付き合って数日、私の方がテンション上がってる。
恋愛を満喫している。
彼と目が会うだけでドキドキして
彼とすれ違うだけで心が弾けそうで
彼と話せた日には眠れなくて
彼と一緒に帰れた日には世界終わりそう
って思った。
彼はどう思ったかな…
恋愛のたのしさわかってきたかな?
私が楽しまなきゃ、彼は楽しめないよね!
と思い存分に楽しんだ。
友人には彼と付き合ったことは言わなかった。
二人だけの秘密の方がドギドキするからね!
今思えば私の言動でバレてたって思う笑
それから数日経って、
学校が午前中で終わる日があった。
この日はなんでか午前中で終わった。
多分、先生たちの大きな会議とかそういう系だったと思う。
私はこのチャンスを活かし彼をデートに誘った。
「ねぇ!この後暇?」
「うん。暇だけど…」
「デートしたい!!」
「え!?!あ!うん。いいよ。」
彼はものすごく戸惑っていた。
彼にとっては初めて女の子とのデートだったらしい。
私たちは近くのカラオケに行った。
付き合って初めのデート。
お互い、そう考えただけでおかしくなりそうだった。
「16番お願いいたします」
私たちは16番の部屋に入った。
考えて見たら初めての二人きり。
ドギドキが止まらなく、
ガツガツな私でも無言になってしまった。
彼はもっと緊張しただろう。
しかし、彼の行動の細部にはデートをリードしなきゃという男らしい部分が見えた。
私はそんな彼をまた好きになった。
私たちは薄暗い部屋に入り、
人が2り入れるほど距離を開けて座った。
彼に先に歌ってもらうことにして、タブレットを渡した。
彼は有名なラブソングを歌った。
そのラブソングは私への気持ちなのかと思い
ものすごくドキドキした。
彼に近づきたいという思いで、歌っている最中30cmずつ近づいて行った。
彼が歌う番が5回目きたところで私は彼に触れる距離にたどり着いた。
そこから触れそうで触れられないという葛藤を20分ほどした。
私はドキドキしすぎて正直歌うとかそういう気分ではなかった笑
私は、触ったら嫌われるんじゃないか、
最近「うん」だけじゃなくて日本語喋るようになってきたのに、
私を怖くなったらどうしよう。
でも付き合ってるしいいのかな?
どうしようと思いながら、
二人きりになって、1時間後、
彼の制服のシャツの裾を触ることができた。
彼のシャツだ…
彼のシャツに触れた瞬間、
自分でも気持ち悪いぐらい、にやけてしまった。
幸せすぎる…
シャツになりたい…
そう思った。
それと、同時に
私は彼が嫌がっていないかを確認した。
とりあえず、避けてはいない。
大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせた。
その勢いで、私は眠たいふりをした。
自分で考えたくせに、あざとすぎて気持ち悪かった笑
しかし、眠たいふりしなきゃ近づけないと思った。
私は彼の方に頭を倒した。
そしてそのままよりかかった。
彼はそのまま固まっていた。
私がいないかのように、
何もなかったかのように、歌い続けた。
彼が避けなかったことが嬉しすぎて、
私はもう死んでもいいぐらい幸せ
と思った。
2時間後、
私は幸せの気分すぎて、
周りのことが考えられなくなって、
彼の気持ちとか考えずに
手を繋いだ。
付き合ってちょうど2週間目だった。
彼の手は大きくて
安心感があって、
私を包み込むような触り心地だった。
指と指が触れ合い、
手のひらが触れる。
お互いの指が曲がり、彼を感じた。
幸せすぎて、その後歌うことをやめた。
彼の耳が少しだけ赤くなっているのが
わかった。
そんな彼が愛おしかった。
お互いになにか喋ることなく、
この世界一幸せな瞬間を存分に楽しんだ。
この日、私は直接「好き」と言うと決めていたので、
終了時間を気にしながら、
終了時間の30分前に彼に告げた。
「好き…」
私は顔を下に向けて髪の毛で顔が見えないようにしていった。
付き合う前はあんなに言えたのに、
付き合った後の好きってこんなに言うのに時間がかかるのか…
と改めて実感した。
顔全体が熱くなり、熱でもあるんじゃないかと思った。
「俺…も…」
私はそう彼がいった瞬間、
わけがわからなくなった。
世界は終わったのかとか、
今の幻聴かなとか、
一瞬にしてたくさんのことを考えた。
少し経って、
彼が「俺も」といったことがわかった。
今まで好きの返事は「うん」だったのに!
「俺も」になった!
これって、彼、私のことすきなの?
好きなの?
スキなの?
スキナノ?
頭の中は完全にお花畑状態だった。
この日の事は私は永遠に忘れないだろうと思った。
こんなに幸せになった今日という日は
他の誰かにとってはいつもの毎日だが、
私にとって特別な日になった。
彼はどう感じたのか、私にはわからないが
彼にとっていい日であるといいな
と願った。
しかし、人というものは、
初心を忘れてしまう生き物なのだ。
辛いことと幸せなことがあると
辛いことが大きく見える。
いくら幸せなことのほうが多くても、
辛いことのほうがよく見える。
いつでも、小さな幸せを感じる事が出来るような人になりたい。
当たり前に感謝できる人になりたい。
そう私は思った。
その後私たちは家に帰った。
その日も彼は送ってくれた。
家についてすぐにラインをした。
結真:送ってくれてありがとう!
好きっていってくれて、デートできて
すんごい嬉しかった!!
ありがとう!!
またデートしようね!
彼:楽しかったね。
またデートしようね。
結真:お願いがあるんだけどいい?
彼:なに?
結真:ゆまって呼んでほしい!!
彼:わかった。
私たちはやっと恋人らしくなってきた。
人生3回目の私と人生1回目の彼 @s2_melody
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