第6片 私の決意
次の日の午後、駿くんのお母さんからかかってきた電話に私は耳を疑った。
それによると、やはり駿くんは事故の影響で記憶に不具合が起きていて、しかも私を子どものころからイジメてきた相手だと思い込んでしまっているとのこと。何度説明をしても、駿くんは自分の記憶が正しいと言って譲らないらしい。
お医者さんによると、時間が経てば回復する可能性はあるけど、その期間がどれくらいなのかは分からないって……。
『だからね、沙耶ちゃん。駿の記憶が正常になるまで、あの子に会わないでほしいの。こんなことを言うの、私もツライんだけど……。それがふたりのためだと思うから……』
「そ……う……ですか……。う……うぅ……ひぐっ……ううう……」
私は悲しくて苦しくて、堪えきれずに泣いてしまっていた。
『沙耶ちゃん……ごめんね……ごめんね……』
駿くんのお母さんも電話の向こうで泣いているみたい。鼻をすすっているのが聞こえてくるから。
そうだよね、駿くんのお母さんは自分の子どもがこんなことになって、私と同じくらいに悲しんでいるんだ。それなのに私にまで気を遣ってくれて……。
「っ!?」
この時、私は一番大切なことに気が付いた。
――それは誰よりも悲しくて苦しくてツライのは、駿くん本人だっていうこと。
こんなことくらいで私が逃げてどうするの?
私は駿くんを支えるって決意した。ずっと一緒にいようって約束をした。それなら何を言われてもぶつけられても、隣にいてあげなきゃダメなんだ!
「あのっ、やっぱり私は何があっても駿くんのそばにいます。 逆の立場だったとしたら、きっと駿くんはそうするはずですから!」
『で、でも、沙耶ちゃんに大怪我でもさせたら……』
「そうならないように注意しますし、万が一の時には駿くんに責任とってもらえばいいってだけの話ですから。いいですよね、お義母さん?」
『沙耶ちゃん……。ふ……ふふっ!』
駿くんのお母さんは泣き笑いをしているようだった。
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