第2片 夢であってほしい……

 気が付いた時、私は自分のベッドで眠っていた。窓を見ると、カーテンの向こう側には太陽の光が眩く映り込んでいる。


「最悪の夢……」


 全身がだるくて、気分もブルー。それらを吹き飛ばすために、私はそのまま部屋を出て洗面所へ顔を洗いに行くことにした。


 狭く薄暗い階段を降り、洗面所へ着くと冷たい水で勢いよく顔を洗う。さすがに十月も半ばになるとちょっと冷たい。いつもならぬるま湯と洗顔料でじっくり時間をかけて洗うんだけど、今日はなんだかそんな気にはなれない。


 やっぱり原因はあの夢だよね……。


 タオルで顔を拭いた私は、リビングを覗きこんだ。するとそこにはお母さんがいて、深刻そうな表情をしてソファーに座っている。


「おはよう、お母さん」


「っ!? 沙耶っ!」


「どうしたの? そんな深刻そうな顔をして?」


「沙耶……もう落ち着いたの?」


「何の話?」


「駿くんのことよ。事故に遭ったって……」


「っ? なんでお母さんが私の見た夢の話を知ってるの?」


「沙耶、あなたは関谷さん家の旦那さんから電話で連絡を受けていた時に、ショックで気を失って倒れたのよ?」


「え……」


「駿くんは事故に遭ったの。それは夢じゃなくて現実よ……」


 お母さんは真剣な顔をして私を見ていた。そして歩み寄ってきて優しく抱きしめてくる。


「あ……ぅ……」


 そんなの信じたくない……。


 勝手に涙が溢れ、頬を伝ってアゴから落ちる。意思とは関係なくどんどん湧き上がってポタポタ落ちる。鼻も詰まって何度もすする。

 洗ったばかりの私の顔は、あっという間にぐちゃぐちゃになった。

 

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