1-8 勝利の宴・剣闘の宴 1
昼から宴だというのに、前日の馬鹿騒ぎでギリギリまで寝過ごしたリーン達。ようやく眼を覚ます。
[ラノベの定番、女主人公が下着 or 裸で、男主人公の横に寝込んでいて、男がドギマギする。なんて読者サービス無いのね、つまんないんな~。]
どこからか不可思議な声が聞こえた。
「馬鹿言わないでよ、硬派ファンタジーを目指しているのよ、作者は!!!」
「ちょっと、がっかりだけどな(笑)。」
ガラハドが冗談めかしてそう言う。
「何!!!」
グーパンチで殴られるガラハドだったが、お互いに緊張はある程度ほぐれているようである。
「あ、あの声、付き合っちゃいけないんだったわ、、、」
--- 宿場ゲル『ムジカ』のロビーにて ---
「揃いも揃って遅刻か?もうすぐ宴の刻、急ぐぞ!」
「そ、そうね。」
先日の装身具屋で買った装飾品をすべて身に付けて、シャナリシャナリしながらロビーに出てくるリーン。
「男根主義者にメカケにされかかっているというのに、おめかししてんじゃねーよ!」
リーンの意味不明な受けれようにマサムネが突っ込みを入れた。
「ジャムカを油断させるためよ、油断させるため、ふふふふふ。」
昨夜のちょっといい夢の影響であろうか、昨日のジャムカに対する激昂ぶりとは違って何やら嬉しそうである。
(、、、草原の国のボスに、オレなんかが勝てるんだろうか、何でこんな目に、、、ブツブツ)
ガラハドは一人、深刻な表情を浮かべブツクサ言っている。
「ほら、辛気臭い、そこ!昨日の夢で見た『英雄戦争』時の私の活躍を知らなかったとは言わせないわよ!?」
「お前も、あの時の夢見たのか?だいたい大根くんでどーにかなる相手か(笑)」
「冗談じゃないわよ、後に続くもっと劇的な土魔法を参考にしてよ!!!」
口論するリーン達をよそにガラハドはますますナーバスになっている。半ば引きずられるように『青のオルド』の王宮へ向かうのであった。
--- 『青のオルド』王宮 ---
橋渡し300mを超えるちょっとした催事場のような王宮の中では、戦勝の宴の準備が着々と進められている。各部族の長たちが輪になって酒を酌み交わす酒場、戦勝の論功行賞を滞り無く行うための論壇や目録書類、踊り娘の舞踏を鑑賞するステージ、戦勝に興を添える闘技場、武将達の快を彩る娼婦たち、山のようにうず高く積まれた羊や馬や猪の肉、巨大な甕に入った馬乳酒、どれをとっても非常な活気に包まれている。
これも『英雄戦争』終結の翌年、若干29歳の若さで風のように草原中を駆け回り、敵対勢力は鎮圧、協力勢力は同盟、と、瞬く間に部族達をまとめ上げクリルタイにてハンに推されたジャムカの手腕であろう。
「おぉ、お后か、それに共の者達、こちらへ参られよ。」
ジャムカの側近中の側近、大将軍ムカリがリーンをいざなう。屈強な草原の民達の中にあって、男装の麗人に見える程、風雅な容儀を備えた武将である。リーンは少しドキンとしてしまった。
(おい、オレたち共の者かよ、出世したな~、オメカケさん。)
グボッ。マサムネのミゾオチにリーンの拳がクリーンヒットする。
「まぁ、はい、そちらへ伺います。」
(みんな、手はずは良いわね、じゃ、私行ってくるから。)
と、側近のムカリに連れられ、ジャムカのいる王宮中央の謁見場へ静々と向かうリーンであった。
「首尾上々だな、オレたちはまずは男根王とオメカケさんの慣れ合いを見物するとしようぜ(笑)。」
(はぁ、リーンとマサムネに押し切られて来てしまったが、ホントにそんな大それた事やれるんだろうか、、、)
ますます悄然となるガラハドであった。
--- そして、準備は整い戦勝の宴が始まる ---
「皆の者、この度の戦はご苦労であった。これでオンギラト族も恭順するであろう。今日は、皆、長く続いた戦闘の労をねぎらってもらいたい。ここに、酒席と享楽の場を用意した。これから明日の朝まで飲み明かして勝利を祝おうぞ!」
「おぉー!!!」
「いつもながら豪勢ですな、この度の連戦連勝、祝着至極に存じ上げる。これからも若き草原の王に祝福を。」
「ボオルチュか、堅苦しい挨拶はよせ。戦勝品の配分はさておき、まずは飲もう。」
「そうですな、して横におわす美しい女性は、初めて見かけますな。戦利品ですか?」
「戦利品とは、お言葉を返すようですが失礼な物言いですわね。私は、ジャムカ様に求婚されているリーン・レイヴェルスと申します。」
「そうだ、帰宮の折に見染めたのよ。なんでも『レボルテ』の元魔道師範で、国に反旗を翻してオレの国に潜伏中とか、なかなか可愛い顔して気骨のある女よ。おい、リーン、いったい『レボルテ』で何が起こっているのか、お前が何をやったのか、包み隠さず教えてくれ。」
ボオルチュが、(またか)と言ったような、冷水を浴びせられたような表情を浮かべる。
この戦では草原の国の掟の常で、オンギラト族の族長以下一族郎党はすべて惨殺され、女は娼婦か召使、男は奴隷として草原の国へ組み込まれてしまっている。リーン達、貴族の非道を排除した民政の国『革命軍』から見ると非常に残虐に映るが、厳しい生存条件の上で生活している草原の民たちから言えば、敗北即生存基盤を失ってしまうのであるから当然の事であった。そんなハードな彼ら達から見れば、戦場で捉えた美しい女を戦利品と呼ぶのも当然の事なのかもしれない。
また、戦と略奪がすべてで、他国との情報戦など夢にも思わない草原の国の王にとっては、『レボルテ』から亡命してきた若く有能な女はめずらしい手土産であった。
「ええ、実は、、、」
リーンは、『レボルテ』での状況をゆっくりと噛んで含めるように語りだした。
--- 宴会場にて ---
ジャムカの乾杯の音頭に始まった勝利の宴は、戦士たちの饗宴に興を添える砂漠の国から来たキャラバンに付いて来た踊り娘の情熱的な舞踏、『ウェールズ』王国に伝わる剣術演舞、と多士済々で草原の国の隆盛を印象づける内容であった。
ジャムカやリーン達がいる王座から、踊り娘たちのステージや剣術演舞が見られる闘技場を挟んで宴会場の片隅に、マサムネとガラハド達は陣取っている。
「おい、あの砂漠の国の踊り娘達の踊り見ろよ。あんな際どい格好でいいんかね~。」
草原の北東に位置する広大な砂漠(と、言っても砂ばかりで出来た熱帯砂漠ではなく、大陸の内陸部に多い岩石砂漠である)にあるオアシス都市から交易に訪れたキャラバン付属の踊り娘達は、明白に身体の線が分かる、小さく要所のみを隠した衣装と、内陸で豊富に取れるサファイヤやアメジストといった鉱石類、色とりどりに幻惑的にひらめくシルクのケープに身を包まれ、宴にこれ以上はない興を添えていた。
踊り子たちは10人ほど、虹色のグラデーションの衣装が用意され、時に鶴翼に、特に円陣に艶めかしくも嫋やかな身体の動きと共に舞踊を披露している。手指の仕草は非常に繊細で、僧侶の祈祷時の洗練された手指の動きをも連想させる。彼女たちの色香もさる事ながらそのアクロバティックな演技に、部族武将はもちろん同席しているその婦人たちや、宴会場の女給達も喝采を送っていた。
「ひゃー、あの真ん中の赤いドレスでめっちゃきれいでそそる女の子がこっち見てウィンクしてきた!今回のキャラバンも大きな交易の話を持って来たみたいだし、やっぱりこういうキャラバン付きの一線級の踊り娘達って砂漠の国の下半身外交とかも受け持ってるんかな~!?」
「呑気だなお前は!これからお前らが仕掛けた大一番に乗るってのに、とても悠長に踊りを見てふしだらな幻想にひたる気になんてなれないよ!」
「まぁまぁ、オレも『フロッティ』を常に構えておくし、『英雄戦争』でのリーンの支援魔法の頼もしさはお前も十二分に知ってるだろ?」
「そうは言ってもだな、相手はあのジャムカだし何があるかわかんないだろ!」
「大丈夫だよ、決闘の掟はこの国の鉄則だ、悪いようにはならねぇって。まぁ、良いから飲めよ、オレにもいろいろ作戦があんだよ!」
「さ、酒! な、何を!当事者だぞ、オレは!!お前らは傍観してればいいんだろうが!」
「いいからいいから、あ、ジャムカがリーンに迫ってる!」
「え、、、ぐわっ!!」
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