“当たり前”と 小さな不安

短くも楽しかった新婚旅行が終わって数日後。



ユウのバンド`ALISON´のアルバム発売日が間近に迫ると、メディアへの出演が増え、ユウはまた多忙な日々を送っていた。


レナも雑誌のグラビア撮影や旅雑誌の写真撮影など、カメラマンとして多忙な毎日を過ごす。


その合間を縫って、友人たちに新婚旅行のお土産を手渡したり、挙式やパーティーに出席してくれた人たちへのお礼状を書いたり、何かと忙しい毎日が続いた。



そんなある日。


レナは仕事を早く終わらせ、久し振りに親友の麻由に会うために、マユと夫のシンヤの住む家へと向かった。


マユは小学校4年からのレナとユウの親友で、女性向けファッション情報誌の編集長をしている。


高2の時に同じクラスになった、作家の三浦慎也と4年前に結婚し、一時は訳あって別居婚をしていたが、今は再び二人で一緒に暮らしている。


レナは新婚旅行のお土産に、地ビールと梅干し、梅そうめんを持って二人の家を訪れた。




「えっ?!ホントに?!」


「うん、ホント…。」


レナは思いがけないマユの言葉に呆然としている。


「レナ?」


「あっ、うん…おめでとう、良かったね!!」


「うん…ありがと…。」


レナが嬉しそうにマユの手を握りしめると、マユは照れ臭そうに微笑んだ。


「そっか…マユ、お母さんになるんだ…。」


「うん…今度こそは、ね。」



マユはかつて妊娠したものの、流産によってその命を失ってしまったことで自分を責めるあまり、シンヤとの結婚生活がうまくいかなくなり別居していた。


ずっと言葉には出せないままで、そのことに苦しんで来たマユとシンヤは、相手を想うあまり離婚まで考えていたのだが、ユウとレナが結婚する少し前に、お互いの本当の気持ちを確かめ合い、再び夫婦として向き合い、一緒に暮らすことにしたのだ。


過去の流産の経験から、再びシンヤを悲しませるのが怖くてシンヤを拒み続けているとマユは言っていたのだが、あれから二人の関係が、夫婦としてあるべき形になり、再びマユに新しい命が宿ったのだと思うと、レナは自分のことのように嬉しかった。



「予定日はいつなの?」


「11月中旬頃かな。」


「そう…ホントに良かったね。マユはすぐに頑張り過ぎちゃうから、無理だけはしないで。」


「うん、今度は気を付ける。今度こそは、この子をシンヤに抱かせてあげたいし…。」


マユは愛しそうに目を細めて、優しくお腹を撫でた。


(マユ、優しい顔してる…。これって、お母さんの顔なのかな…。)


「三浦くんは?」


「今日は連載の打ち合わせに行ってる。」


「そっか。三浦くん喜んでるだろうね。ユウも喜ぶだろうな。」


「シンヤは熱心にマタニティー雑誌読んで勉強してるよ。妊婦の私より熱心かも…。」


「三浦くんらしいね。マユ、旦那様に大事にされてるんだ。」


マユは照れ臭そうに微笑んだ。


「それでね…大事な話なんだけど…。」


マユは1冊のマタニティー雑誌をテーブルに置いた。


「私、この雑誌の編集部に異動することになったの。この編集部のほとんどが妊婦とか、子育て中の出産経験者で、妊娠中の体調とか、産後の産休とか、その後の子育て中のいろんなことを優遇してくれるんだって。」


「へぇ…。女性に優しい編集部だね。」


「うん。だから、今の編集部で予定してる`ALISON´の密着取材なんだけど…私の代わりに、他の記者が同行することになったの。」


「そっか…。」



`ALISON´の密着取材には、レナもカメラマンとして同行することが決まっている。



彼らの記事が初めてこの雑誌に掲載された時、急病になったかつてのレナの婚約者でもある、カメラマンの須藤の代わりに写真撮影を担当してから、その後の`ALISON´の写真をレナが撮り続けている。


あの日、レナはユウと10年ぶりに再会し、お互いを想いながらも、一度は婚約者だった須藤の待つニューヨークへ渡ったのだが、幼い頃からレナの写真を撮り続け、レナを大切に見守って来た須藤に背中を押されて日本へ戻り、ユウとお互いの想いを確かめ合うことができた。


そして恋人同士になった二人は一緒に暮らし始め、週刊誌に心ない記事を書かれて一度は離れたものの、今は結婚して幸せに暮らしている。



「1年前、マユと一緒に密着取材に行ったね。あの取材の後、もうユウとは2度と会えないと思ってたのに…今はユウと結婚までして…人生ってわからないものだね。」


「ホントね。私も、またシンヤと一緒に暮らし始めて…また新しい命を授かって…。」


「幸せだね。」


「お互いにね。」




「えっ?!それマジで?!」


「うん。」


「そっか…良かったなぁ…。」


仕事から帰ったユウに、レナは今日聞いたばかりのマユの妊娠を知らせた。


「楽しみだな。」


「うん、すごく楽しみ。」


親友の二人の嬉しいニュースは、ユウとレナまで幸せな気持ちにしてくれた。


レナはユウの分の夕食をテーブルに並べながら話を続けた。


「それでね、マユ、マタニティー雑誌の編集部に異動が決まったんだって。`ALISON´の密着取材には同行できなくなったから、ユウにごめんねって。」


「それは仕方ないよ。佐伯の体の方が大事だもんな。」


「そうだね。私はカメラマンとして同行するけど…なんか、緊張する。」


ユウは、レナの用意した夕食を口に運びながら、不思議そうに尋ねた。


「なんで?」


「だって…別の記者と密着取材は初めてだし、ユウと結婚したし…。」


「したし?」


「他のみんなは、カメラマンがユウの奥さんの私だと、やりにくくないかなぁって。」


ユウは味噌汁を飲みながら考える。


「まぁ…大丈夫じゃない?逆に、よく知ってるレナの方が気心知れてラクだと思うけど。」


「そうかなぁ…。」


「オレは別のことが心配なんだけど…。」


「別のこと?」


「アイツら、すぐに冷やかすから。」


「そうだねぇ…ユウのお兄ちゃんたち、意地悪好きだもんねぇ…。」



若き日の`ALISON´のメンバーを日本で発掘して、ロンドンに連れて行ってからの10年間、自分のバックでミュージシャンとして育て上げた実力派人気ミュージシャンのヒロは、愛情を持ってメンバーを“うちのかわいい息子たち”と呼び、メンバーの最年少のユウを、“うちの末っ子”と呼ぶ。


そうすると、ユウより歳上のメンバーは、ユウの“お兄ちゃん”と言うことになる。


「レナ、その言い方恥ずかしいから。」


「そう?気に入ってるんだけどな。」


「ヒロさんもみんなも、白浜の地ビールすごく喜んでたよ。」


「良かった。」


レナはユウの向かいに座ってお茶を飲みながら嬉しそうに笑った。


「当分は忙しくなるから、あまりゆっくりはできないと思うけど…。また、時間ができたら、どこか行こうな。」


「うん。でも、私はユウが毎日私の元に帰って来てくれるだけで幸せだよ。」


「うん…。オレも、毎日レナがいてくれるだけで幸せ。安心する。」


二人はお互いに顔を見合わせると、幸せそうに微笑んだ。


「忙しい時は、無理しなくていいから。オレもできることはなんでも一緒にやるし。」


「ありがと。ユウはホントに優しいね。」


「そんな優しい旦那と、一緒に風呂にでも入りませんか?」


「……ダメです。」


「えーっ…。テレビの収録で疲れたから、レナに癒してもらおうと思ったのに…。」


「………やっぱりダメです。」


「なんで?」


「………余計に疲れるでしょ。」


「オレは疲れないよ?」


「私が疲れるから、ダメです。」


「はぁ…。それ聞くとどっと疲れが…。もうダメだ、明日仕事に行けそうにない…。」


「……ユウ、甘えんぼ。」


「レナにだけ、特別な。それでもダメ?」


「……意地悪。」


「じゃあ、いいの?」


「………。」


レナはため息をついて、イスから立ち上がる。


「……先に入ってる…。」


「やった。」


ユウは嬉しそうに夕食の残りをかきこむ。


「あの…そんなに急がなくてもいいから…。」


「いや、オレは早くレナと一緒に入りたい。」


「もう!!私がいいって言うまで、絶対に入って来ないで!!」


「ハーイ。おとなしく待ってます。」


レナは顔を真っ赤にしながら、慌てて脱衣所に駆け込んだ。


(もう…気が付くといつもユウのペース…。)



先にお風呂に入ったレナは、化粧を落とし、髪と体を洗って湯舟に浸かると、浴室の操作パネルの呼び出しボタンを押した。


ユウが浴室に入り、頭や体を洗っている間、レナはユウに背を向けて湯舟に浸かり続けた。


(先に入ったの、まずかったかな…のぼせちゃいそう…。)


そしてユウも湯舟に浸かり、後ろからレナを抱きしめる。


「はぁ、癒される…。」


ユウは嬉しそうにレナを抱きしめながら、レナの細い首筋にキスをする。


「やっ…くすぐったい…。」


「くすぐったい?」


「うん…。」


「じゃあ、こっち。」


ユウはレナの頬に手を添えて、唇を塞ぐ。


「んんっ…!!」


いつもより激しいユウのキス。


(ユウ…。)


レナはユウの背中に腕を回して抱きしめる。


「レナ、かわいい…。」


ユウは大きな手をレナの華奢な体に這わせた。


「やっ…ユウ…。」


「なんかもう…我慢できそうにない…。」


「えっ?!」


「レナ…いい?」


「えっ…。」


(ちょっと待って、こんなところで?!)


うろたえるレナを強く抱き寄せ、ユウは性急にレナを求める。


「レナ…愛してる…。」


(なんか…ユウが…どんどん…激しく…エッチに…なってく…ような…。)


お湯の中でユウに激しく抱かれながら、レナはのぼせそうになる頭の中で、そんなことを考えていた。



やっとの思いでお風呂から上がってパジャマに着替えると、レナはソファーにぐったりと横たわった。


(やっぱり私が疲れちゃった…。)


ユウは冷蔵庫から取り出した冷たい水のボトルを、ソファーに横たわるレナに差し出した。


「なんか…ごめん、無理させちゃって。」


レナは少し身を起こしてユウから水を受け取ると、勢いよく水を飲んで大きく息をつく。


「もう、ユウとは一緒にお風呂に入らない。」


「えぇっ?!それは…。」


「もう、入らない。」


「ごめんって…。」


もう一度水を飲むと、レナはボトルをユウの手に押し付け、ソファーから立ち上がった。


「もう、寝ます。」


レナは少しふらつく足取りでベッドにたどり着くと、身を投げ出すように横になった。


(もう…ユウったら…。)


いくら新婚とは言え、最近のユウはあまりに頻繁に体を求め過ぎる、とレナは思う。


(ユウのことは大好きだけど…ユウと…そうするのも、キライなわけじゃないけど…。)


ベッドで横になり、ぼんやりと考えるレナのそばにユウが来て、そっとレナの頭を撫でる。


「レナ…ホントにごめん…。」


「……うん…。」


「こんなオレ、もうキライ?」


「……キライじゃないけど…。」


「…けど?」


「いつもこんなだと、ちょっと…困る…。」


「うん…ごめん…。」


「もう、いいよ…。おやすみ…。」


「おやすみ…。」


ユウはレナの隣に横になると、そっとレナの手を握る。


「レナ…愛してる…。」


「…うん…。」


なんとなく気まずくて、レナはいつものように“愛してる”と、ユウに言えないまま目を閉じた。



(急にあんなことして…レナ、怒ってんのかな…。ちょっと、調子に乗りすぎた…。)


“ユウ、愛してる”と、いつものように言ってはくれなかったレナの手を握りながら、ユウはレナに嫌われたかも…と不安になる。


(いくら好きだからって…レナの気持ちも考えないで…我慢できなくて、あんなにがっついて…オレ、勝手過ぎたかな…。)


よほど疲れたのか、レナはユウの隣で寝息をたて始めた。


ユウは少し身を起こしてレナの寝顔をそっと覗き込み、頬に優しく口付ける。


(ごめん、レナ…。レナがそばにいてくれたらそれだけでいいって思ってたはずなのに…レナがオレだけのレナだって、もっともっと感じたくて…レナにもっと、オレを感じて欲しくて…オレ、どんどん欲張りになってくよ…。)




翌朝。


ユウが目覚めた時には、レナはもう仕事に出掛けた後だった。


(レナ…もう出掛けたんだな…。)


レナが出掛けてからユウが目覚めることなんて珍しいことでもないのに、夕べのことを思い出すと、ユウはレナのいないベッドが、やけに寂しく不安に感じてしまう。


(レナ、まだ怒ってるかな…。)


ユウは起き上がってリビングへ行くと、テーブルに置かれた朝食を見つめる。


(朝食は…いつも通り作ってくれたんだ。)


ユウはコーヒーメーカーのデキャンタから、カップにコーヒーを注いで、イスに座り、タバコに火をつける。


(なんか…レナがいてくれるのが当たり前過ぎて…笑ってくれるのが当たり前過ぎて…オレが求めたら応えてくれるのも、当たり前だって思ってたかも…。)


ユウは煙を吐き出し、コーヒーを飲みながら、ぼんやりと考えた。


レナと一緒にいるのが当たり前になり過ぎて、長い時間をずっと過ごして来たような気がしていたけど、よく考えたら、付き合い出してまだ1年ほどしか経っていない。



付き合い出した頃は、レナはまったく恋愛の経験がなくてどうしていいかわからなかったし、ユウは長い間想い続けたレナと付き合えることになったと言うだけでも胸がいっぱいで、レナに嫌われるのが怖くて、お互いに触れ合うことさえためらっていた。


一緒に暮らすうちに、相手への愛情を言葉にして伝え、自然に抱きしめ、キスを交わし、お互いを求め抱き合うようになった。


レナと10年間も音沙汰も無しに離ればなれになっていたのが、自分でも信じられないとユウは思う。


今、レナと10年間離れて暮らせと言われたら、間違いなく耐えられないだろう。


(寂しくて、会いたくて、恋しくて、おかしくなって、死んじゃうかも…。)


タバコを灰皿の上で揉み消すと、カウンターの上のトースターでパンを焼き、レナが作ってくれた朝食を食べ始める。


レナが作ってから時間が経ってしまった料理は冷めきっている。


「温めようかな…。」


冷めきってしまった料理をレンジで温めると、ユウは再び朝食を食べ始めた。


(冷めきった料理を一人で食べるのって、味気ないんだよな…。)


スクランブルエッグを口に運びながら、ユウはいつもレナが座っている場所に、穏やかに笑うレナを思い浮かべる。


ユウが仕事で遅く帰っても、食事を用意して、ユウが食べている間は向かいに座って他愛もない話をしたり、ただ食事をするユウを見つめて穏やかに笑っているレナ。


当たり前になっているレナとの日常を改めて思い浮かべるだけで、ユウの胸はキュッと音をたてる。


(なんだこれ…。)


途端に切なげに音をたてる胸の痛みに、ユウは戸惑った。


(コドモじゃあるまいし…。)


レナを秘かに想い、ずっとそばにいるのにその気持ちを伝えることもできず、切なさに胸を焦がし続けた高校生の頃の自分を思い出す。


(オレの片想いかよ…。)


ユウは静かに苦笑いを浮かべ、ため息をついて、レナの作ってくれた料理を口に運んだ。


(お互いに愛し合って、結婚までしたのに…何がそんなに不安なんだろう?)




マユが編集長を務める女性向けファッション情報誌の写真撮影の休憩時間、レナはぼんやりと缶コーヒーを飲みながら考えていた。



今日の仕事は午後からだと言っていたユウを起こさずに、いつものように朝食だけは用意して仕事に出掛けたレナだったが、夕べ気まずいまま眠ってしまったことが気になっていた。


(ユウに悪気がないのはわかるんだけど…。)


付き合い出してからのユウは、本当にレナを大事にしてくれて、誰よりも愛してくれている、とレナは思う。


(そうなんだけど…なんて言うか…。)



一緒に暮らし始めて1年近く経つ。


最初の頃は、当たり前のように別々の部屋で寝起きしていた。


恋愛経験もなくて、何をどうしていいのかわからず、自分に自信がなくて、ユウにガッカリされるのが怖かった。


初めてユウに抱かれた時は、ものすごく緊張したけれど、大好きなユウに触れられることが温かくて、幸せで、本当にユウが好きだと心から思ったのを覚えている。


ユウの少し速い鼓動も、優しくレナに口付ける唇も、大事そうに触れる大きな手も、“愛してる”と言った甘く掠れた声も、あの夜のことは今でも大切にレナの胸に刻まれている。


ユウがレナを大事にしてくれることや、優しいキスも、レナを抱くユウの長い腕も、温かい胸も何一つ変わらないけど…。


(でも、最近…なんて言うか…。)


うまく答えを見つけ出せない。


レナを誰よりも愛してくれるユウに対して、不満と言うほどでもないけど、なんとなく心に引っ掛かる、小さなしこり。


(こんなにユウが愛してくれてるのに…私、贅沢…?これって…単なる、私のわがまま?)



結婚したからと言って、いきなりなんでもわかり合える夫婦にはなれない、と思う。


そうなるにはどうすればいいのだろう?


一緒に時を重ねて行くしかないのだろうか?


思ったことをなんでも話せば、夫婦としての絆は強くなるのだろうか?



(でも…こんなこと、言いづらい…。)


夕べはユウに尋ねられて“いつもこんなだと少し困る”と答えたものの、レナはそのことが少し気になっていた。


レナに嫌われることや、レナが離れて行くことを、ユウは何よりも怖がる。


レナを想うあまりに、ちょっとしたことで不安になり、悩み込んでしまうユウ。


生後間もない頃に母親に置き去りにされた自分の生い立ちを知っているユウは、いつかレナも自分を捨てて別の誰かの元へ行くのではないかと不安がっていた。


(あんまりユウを不安にさせちゃ、ダメだよね…。今日は帰ったら、いつも通りに笑って話したり…いつもみたいに“ユウ愛してる”って、ちゃんと言おう。)




撮影の仕事があと少しで終わる頃に、マユがスタジオに現れた。


マユは撮影が終わるのを待って、レナに近付いてくる。


「レナ、お疲れ様。」


レナが振り返ると、マユと見慣れない男性が立っていた。


マユには珍しいパンツスーツと、ヒールのないパンプス姿に、レナは、あぁ、と納得する。


(そっか…妊婦さん…。)


「お疲れ様。今日の撮影、終わったけど…どうかしたの?」


「今度の密着取材に同行する記者を紹介しようと思って。」


マユがそう言うと、マユの少し後ろにいた男性が、にこやかに笑ってレナを見た。


「こんにちは。相川達朗です。」


「はじめまして…。片桐怜奈です…。」


レナが挨拶すると、その記者はおかしそうに声を上げて笑い出した。


「はじめましてじゃないよ、久し振りだろ。」


「えっ?」


レナは驚いて目をパチパチさせる。


「あ…。」


「思い出したか?」


「相川くん…。」


隣でその様子を見ていたマユが、不思議そうにレナに尋ねる。


「あれ?知り合い?」


「うん…大学時代、バイト先が一緒だった。」


「どんなバイト?」


「タウン情報誌の編集部。」


「へぇ…。初耳。」


「懐かしいな。レナが写真撮ったり書類整理したり雑用みたいなことして、オレは取材のアシストしたり投稿コーナーの記事を作ったりしてたんだよな。」


「うん。」


「そうなんだ。じゃあ、レナの人見知りの心配はなくなったってわけだ。」


「相変わらず人見知りしてんのか。」


「まぁ…。」


「じゃあ、早速だけど、今度の密着取材の打ち合わせしようか。そこのカフェでも行こう。」


「あ…仕事、もう少しで片付くから。」


レナはカメラをバッグにしまい、機材の片付けを始める。


「先輩、ここは私たちで片付けますから、どうぞ行って下さい。」


「そう?じゃあ、お願いします。」


後輩のルミに促され、レナはカメラのバッグを肩に提げてスタジオを後にした。



レナはマユと相川とともに近くのカフェに入ると、レナと相川はコーヒー、マユはオレンジジュースをオーダーして、3人で`ALISON´の密着取材の打ち合わせを始める。


今回はライブの本数が多いので、ツアー初日と中盤、最終日の4ヶ所に絞って取材することになった。


前回の密着取材の記事を相川に見せながら、マユは相川に取材するポイントやメンバーたちの情報などを伝える。



打ち合わせをしていると、マユのスマホが鳴った。


「ごめん、ちょっと席外すね。」


「うん。」


マユはスマホを手に、店の外に出た。


「そう言えば…レナ、`ALISON´のギタリストと結婚したんだって?」


「あ…うん…。」


「おめでとう。なんか世間で騒がれてた時にはビックリしたけど、うまくいってるのか?」


「うん、まぁ。」


「なんだ、相変わらず素っ気ないな。」


「そう?」


「そうだよ。レナは昔から無口だった。」


「そうかな…。」


「あの頃は今よりもっと…なんて言うか、美人なのに色気もなくて、取っつきにくい感じだったけどな。青いって言うか。」


「何それ…。」


(色気もなくて、は余計でしょ。)


「でもオマエ、キレイになったな。」


「えっ?!」


「なんか色っぽくなったし。旦那に愛されてんだ。」


「………。」


(何この会話?!)


レナは途端に恥ずかしくなって、うつむいてしまう。


「そういうの…セクハラ発言って言うんじゃないの…。」


「あっ、そうか?悪い。」


レナは居心地悪そうにコーヒーを飲む。


「相川くんは、あの出版社に勤めてるの?」


レナは話題を変えようと相川に尋ねた。


「いや、フリーのライターやってる。」


「そうなんだ。」


「レナは須藤透の事務所に勤めてるのか?」


「うん、大学出てからずっと。」


「そうか。大学出てから何年になる?」


「8年。」


「8年か…。まさか8年も経ってレナにまた会うとは、思ってもみなかったな。」


「うん。」


「あの時さ…。」


「ん?」


相川が何かを言おうとした時、マユが席に戻って来て、その話はそのままになった。


(あの時…なんだろ?)



打ち合わせを終えたレナは、スーパーで食料品の買い物を済ませて帰宅した。


冷蔵庫にさっき買った食材をしまいながら、キレイに洗って水切りかごに置かれた食器に目を留める。


仕事で忙しいレナを少しでも煩わせないようにと、ユウはいつも、朝食を食べた後に自分の使った食器を洗ってから出掛ける。


(いい旦那様…。)


レナは、当たり前のようにそうしてくれるユウのちょっとした気遣いが嬉しいと思う。


(今日はユウの好きな物、たくさん作ろう。)


昨日の気まずさを少しでも消してしまおうと、レナはキッチンに立って、ハンバーグや野菜たっぷりのトマトのスープ、ポテトサラダを作った。


どれもユウの好きな物ばかりだ。


(ユウ、喜んでくれるかな?)




レナが夕飯の用意を終えた頃、レナのスマホにユウからのメールが届いた。



“今日はメンバーと飲みに行くことになった。

遅くなるから先に寝てて。”



レナはメールを見て、ガックリ肩を落とす。


(なんだ…。晩御飯、いらないんだ…。)



“わかりました。

あまり飲みすぎないで、

気を付けて帰って来てね。”



メールを返信すると、レナは一人分の夕飯をテーブルに並べ、一人で食べ始めた。


(一人だと、あんまりおいしくないな…。)


料理の味に問題はないはずなのに、一人で食べる夕飯は味気ない。


モソモソと口を動かしながら、レナはぼんやりと考える。


(ユウがいないだけで、夕飯の味まで変わっちゃうんだな…。)


食欲がなくなって、レナは残した夕飯にラップをかけ、冷蔵庫にしまいこんだ。


ユウの分の夕飯にもラップをかけて、同じように冷蔵庫にしまいこむ。


(ユウ忙しいし、これからもっと、こういうことは増えるんだろうな…。)


寂しいとは思うけれど、それは仕方がないとも思う。


ユウのような仕事は、多少忙しくなくては成り立たないだろうし、仲間との付き合いも大事だと思う。


(お風呂に入って寝よう…。)



入浴を済ませていつものように缶ビールを取り出し、ソファーに座って飲んでみたものの、やはり一人では味気ない。


レナはソファーに寝そべって天井を見上げる。


住み慣れたはずの部屋なのに、ユウがいないとやけに広くて静かだ。


(ユウ、早く帰って来ないかな…。)


レナはぼんやりとユウのことを考えながら、眠りの淵に落ちていった。




すっかり夜が更けた頃、ユウが帰宅した。


(あれ?リビング、電気ついてる…。)


随分遅い時間なのに、リビングが明るいことを不思議に思いながら、ユウはリビングのドアを開けた。


(レナ、こんなとこで寝て…風邪引くぞ…。)


飲みかけの缶ビールをテーブルに置いたままでソファーに横になり、うずくまるようにして眠るレナの頭を、ユウはそっと撫でる。


「ただいま…。」


小さな声で呟くと、ユウは子供のように眠るレナの頬にそっと口付けた。


(かわいいな…。)


愛しいレナの寝顔を見つめ、ユウはそっとレナを抱き上げ、ベッドに運んだ。


レナをベッドに寝かせ、布団をかけてやると、ユウはもう一度レナの頭を優しく撫でる。


「おやすみ…。」


レナの頬にそっと口付けると、ユウは静かに部屋のドアを閉めた。


入浴を済ませて、水を飲もうと冷蔵庫を開けたユウは、レナがしまいこんだたくさんのお皿に目を留める。


(これ、今日の夕飯…。)


コンロの上の鍋の蓋を開けると、野菜たっぷりのトマトのスープが入っていた。


(ハンバーグにポテトサラダにトマトのスープ…オレの好きな物ばっかりだ…。)


ユウの帰宅を待ちながら、レナが愛情を込めて一生懸命料理をしている姿が目に浮かぶ。


レナの食べ掛けた料理がしまってあることに気付くと、ユウはレナが一人で食べる夕飯に食欲をなくして残したのだろうと思う。


(悪いことしたな…。)



夕べのことが気まずくて、ユウはメンバーの誘いに応じた。


レナが何を思っているかと気になりながらも、今日はレナの顔を見るのが怖かった。


(ダメだな…オレ…。)


レナはレナでユウのことを考えてくれているのだと思うと、ユウは自分の気の小ささが情けなくも思えた。


(夫婦なんだから…オレはレナの夫なんだから…もっとちゃんとしないとな…。)


ユウはレナの隣に横になると、ぐっすりと眠るレナを優しく抱きしめた。


(寂しい思いさせてごめんな…。)


レナの温もりを感じながら、ユウは眠りについた。




翌朝、仕事が休みだったレナは、大きな手の温もりを感じながら、いつもよりゆっくり目覚めた。


「ん…。」


ゆっくりとまぶたを開くと、ユウがレナの頭を撫でながら、優しい目でレナの顔を見つめていた。


「おはよ。」


「おはよ…。」


「寝顔…ずっと見てたの…?」


レナは少し恥ずかしそうに尋ねる。


「うん。オレの奥さん、世界一かわいいなーって。」


「…恥ずかしいよ…。」


照れ臭そうにうつむくレナを愛しそうに見つめて、ユウは優しく笑った。


「夕べ…ごめんな。」


「ん?」


「夕飯…オレの好きな物、いろいろ作って待っててくれたんだよな。」


「…うん。」


「ごめん、断って早く帰れば良かった。」


「気にしないで。付き合いも大事でしょ。」


「…うん…でも…。」


ユウはレナの額にそっと口付けた。


「オレは、レナが一番大事。」


「ユウ…。」


(ユウ、やっぱり優しい…。)


レナは手を伸ばしてユウにギュッと抱きつき、広い胸に頬をうずめた。


「ユウ…大好き…。」


(レナ、かわいいな…。)


「オレも、レナが大好き。」


ユウもレナの背中に腕をまわして抱きしめる。


「ユウにこうしてもらうと、あったかくて安心する…。」


「うん、オレも安心する。」


「ユウも安心するの?」


「うん。」


(レナがオレの腕の中にいると、レナがオレだけのレナだって、実感するって言うか…。)


ユウはレナを抱きしめる腕に力を込めた。


「今日もレナがいてくれて、幸せだなって。」


「私は毎日、ユウのそばにいるよ?」


「うん…毎日、幸せ。」


「ふふ…。私も。」


二人は額をくってけて見つめ合い、そっと唇を重ね、触れるだけの短いキスを何度も繰り返した。


「ずっと…レナと、こうしてたい…。」


ユウは切なげに呟いてレナを抱きしめる。


「ん…ずっと?」


「うん…。」


レナはユウの胸に抱かれながら、なんとなくいつもと違うユウの様子が気になった。


(もしかしてユウ、一昨日の夜のこと、ものすごく気にしてる…?)


お風呂上がりのレナが素っ気なかったことや、もうユウとはお風呂に入らないと言ったこと、ユウに“愛してる”と言わなかったこと。


ユウの様子がいつもと違うことに、思い当たる節はあっても、それをどう言えばいいのかと、レナは考える。


(“もう怒ってないから”とか?それともやっぱり“ユウ愛してる”?)


黙り込んだレナの顔を、ユウは不思議そうに覗き込んだ。


「…レナ?」


「えっ?!」


「オレとこうしてるの…嫌?」


ユウは少し不安そうにレナに尋ねた。


(あっ、いけない…。)


「嫌なわけないよ。」


レナはユウの首に腕をまわして、キスをした。


「私、きっとユウが思ってるより、ユウのこと好きだよ。」


「そうかな…。」


「えっ、どういう意味?」


「…冗談。」


ユウは少し笑って、レナの頬に優しく触れる。


「レナ、愛してる。」


「私も…愛してる…。」


二人は抱き合って、何度も何度も甘いキスを交わした。




昼食を昨日の夕飯にレナが作った料理で済ませると、レナはキッチンでたくさんのプリンを作った。


今日はスタジオで練習した後、テレビ局へ収録の仕事に向かうユウたちへの差し入れを持ってレナも一緒に行くことになったのだ。


「みんな、プリン好きかな?」


「うん。好きだと思うけど…レナの手作りプリン、みんなに食べさせるのは惜しいな…。」


「ユウったら…。」


レナはできあがったプリンをひとつ手に取り、スプーンを持って、ソファーに座るユウの隣に静かに座ると、スプーンでプリンをすくう。


「ユウに一番最初に食べさせてあげる。ハイ、あーん。」


レナが微笑みながら、プリンをユウの口元に運ぶと、ユウは少し照れながら口を開く。


「おいしい?」


「うん、うまい。」


「良かった。ハイ、もう一口。あーん。」


「子供みたい…。」


そう言いながらも、ユウはまた口を開いて、素直にレナの差し出したプリンを食べる。


「レナにも食べさせてあげる。」


ユウはレナの手からスプーンを取り上げ、レナの口元にプリンを運んだ。


「ハイ、あーん。」


レナも照れ臭そうに口を開きプリンを食べる。


「うまいだろ?」


「私が作ったんだけど…。」


二人は照れ笑いをしながら、ひとつのプリンを食べさせ合った。




ユウのマネージャーの運転する迎えの車に乗って、二人はスタジオに向かった。


「おっ、新婚さん。」


「いらっしゃーい。」


二人そろってスタジオを訪れると、メンバーたちはここぞとばかりに冷やかした。


「オマエらなぁ…。」


ユウは照れ臭そうに頭をかく。


「これ、差し入れです。良かったらどうぞ。」


レナがテーブルの上にプリンの入った紙袋を置くと、みんなはわらわらと集まって来て、早速紙袋を開けた。


「うおー、プリンだ!!」


「新妻の手作りだ!!」


「食べよう、今すぐ食べよう!!」


「悔しいからユウの分はオレが食う!!」


「なんでだよ!!」


(みんな喜んでくれてるみたいだけど…なんか恥ずかしいな…。)


レナは少し離れた場所で、大騒ぎしているメンバーたちを見守った。


「いただきまーす。」


メンバーたちは、早速レナの手作りプリンを食べ始める。


「うっ、うまー!!」


「めっちゃうまい!!」


「ユウ、オレはオマエが羨ましい!!」


「あーちゃん、これすごくうまいよ!!」


「あ…ありがと…。」


(こんなに盛大に喜んでくれるとは…。)


みんなが大騒ぎしている中、ユウは黙ってスタジオを出ると、缶コーヒーを手に戻って来て、レナに手渡した。


「なんか…騒がしくてごめんな…。」


「ううん、喜んでもらえて良かった。」


「レナがスタジオに来るの初めてだから、みんなはしゃいでるな。」


「そうなの?」


「うん。オレも嬉しい。」


二人が話していると、またメンバーたちが騒ぎ出す。


「そこ!!二人の世界禁止!!」


「ユウ、見せつけんな!」


「オレも高梨さんと結婚したい!!」


「あーちゃん、そろそろユウの顔は見飽きたでしょ?オレんとこにお嫁においでよ。」


「いや、あの…。」


「オマエらなぁ!!」


ユウはレナをメンバーから隠すようにして、レナの前に立った。


「オマエらが何言っても、レナはオレの妻だ、嫁だ、奥さんだ!!オマエらにはやらん!!」


(ユウったら…。)


ユウの後ろで、レナは顔を真っ赤にしてうつむいた。


「もういいから、早く始めようぜ。」


ユウは振り返って、レナの頭を撫でながら優しく笑う。


「行って来る。そこでゆっくりしてて。」


「うん、頑張って。」


ユウはレナから離れると、黙々とチューニングを始めた。


「やれやれだな。」


「ユウは奥さんには激甘だな…。」


トモとリュウが、ニヤニヤしながらユウを見ている。


「高梨さん、プリンめちゃくちゃうまかったです。ご馳走さまでした。」


ハヤテが軽く頭を下げる。


「どういたしまして…。」


レナも笑って軽く頭を下げる。


「もう高梨さんじゃなくね?」


トモが言うと、ハヤテとリュウも顔を見合わせてうなずいた。


「確かに…。」


「じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」


「レナさん?」


「アリシアさん?」


「ユウの奥さん?」


「ユウのお嫁さん?」


「ユウのカミさん?」


「ユウのハニー?」


「思いきってレナ?」


「いや…あの…高梨でいいです…。」


レナが恥ずかしそうに言うと、ずっと黙っていたユウがポツリと呟く。


「片桐さん、でいいんじゃないのか?」


「あー…。なるほどね。」


「じゃあ高梨さん改め片桐さん、プリンご馳走さま。ゆっくりしてってね。」


「ハイ…。」


「よっしゃあ、いっちょやるかぁ。片桐さん、ユウじゃなくてオレを見ててね。」


「トモーっ!!」


ユウの大声に笑いながら、トモはスタンバイを始めた。


(なんか…どっと疲れが…。)


軽い気持ちで付いてきたものの、こんな調子で密着取材は大丈夫なのかと、レナは少し不安になる。


(今日はプライベートだからいいとしても…仕事は仕事でちゃんとしたいんだけどな…。)



スタンバイを終えた`ALISON´のみんなは、新しいアルバムの曲の練習を始めた。


さっきまでふざけていたのが嘘のように真剣なメンバーたちを見て、レナはホッと胸を撫で下ろした。


(うん…大丈夫だよね…。)


レナはイスに座り、演奏に耳を傾ける。


ギターを弾くユウの姿を見つめながら、レナは嬉しそうに笑みを浮かべた。


(ギター弾いてるユウって、やっぱりカッコいいな…。)




スタジオでの練習を終えたメンバーたちが、テレビ局へと向かう時間になった。


(私は帰ろうかな…。)


レナが荷物を持って立ち上がると、タクミがレナのそばに近付いて来る。


「あーちゃんも一緒に行こ。マネージャーに、関係者のパスもらえばいいよ。」


「えっ…でも…。」


「大丈夫だよ。テレビ局、初めて?」


「うん…。」


「今日は生放送だから早く終わるし。目立つの嫌なら、変装でもする?帽子くらいなら貸せるけど。」


「あ、うん…。」


レナはバッグから眼鏡を取り出してかけると、髪を上げてタクミに借りた帽子に押し込んだ。


(レナ、首…!!色っぽ過ぎるから!!)


ユウは慌ててレナの被った帽子を取り上げ、髪を下ろした。


「髪は上げなくていいから。」


「えっ?!そう…?」


ユウの不可解な行動を不思議に思いつつも、レナはユウに言われた通りに髪を下ろしたままで帽子を被る。


「これでいい?」


「うん、かわいい。」


そんな二人の様子を、またもやメンバーたちはニヤニヤしながら見ていた。


「ユウって意外と亭主関白?」


「いや…あれは首フェチだな。」


(首フェチ?!)


ユウの言っていた言葉をふと思い出して、レナは真っ赤になった。


(確かに…ユウ、私の首筋が色っぽいって言ってた…。なんか…急に、恥ずかしい…。)





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