第2話
あれから四年が経った。
この四年間という長い長い月日に彼がわかった事はまず……
(俺、女になってる…)
最初は言語も日本語とは違う物でなにを話しているのかわからなかったが、ずっとマインと呼ばれ続けたら流石に名前だけはわかった。あとは今世のお母さんである人が毎日本を読んでくれたおかげで2歳の頃には喋られないが聞き取ったり読むことは可能になった。
閑話休題
話が戻るが女になっていた。
マインという女の子みたいな名前に不信感を持ち、チラッとあるべきはずの物がある場所を見たらなかった。男の象徴であり前世の苦楽を共に乗り越えてきた相棒がなくなっていた。だが本人はそんな事はある事に比べたらあまり衝撃的ではなかった。
(ここ……日本じゃないのか…?)
そうである。日本にはありそうな家電製品が一切見当たらないのである。
(テレビもエアコンも電気もないのか……、じゃあやっぱり)
ここで彼はある重大な事に気づく。
(まさか…飛行機も戦闘機も近くには飛んでいない…?)
性別が変わってしまったり、赤ん坊になってしまったことより、彼には今まで近くにあった憧れを失ってしまった事が一番のショックだった。
幸いな事に家族は優しいし、ご飯も日本と変わらず美味しいし、何よりお米がある事で彼は四歳になるまで頑張れた。
そして、母が提案した学園見学で彼にとって運命的な、衝撃的な出会いがあった。
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幼い少女と一緒に歩く若い女性が学園見学からの家路を歩いていた。
「でも、マイルは将来空騎士になるのね…」
「ん!なります!くーきし!」
「ふふ、ずいぶん元気になったわねぇ。そんなマイル久しぶりに見た気がするからお母さんも嬉しいわ」
若い女性、ルティアがそう言うとマイルはしょんぼりした顔になる。
「あっ……ごめんなさい…」
「いいのよ、マイルはもうこんな元気になったんだから。じゃあ、今日の晩御飯はマイルが将来の夢を見つけた記念日としていつもより豪華にしましょう!」
「うん!」
(やっぱり、心配させちゃったかな…?確かに暇すぎてぼーっとしてたかも)
そう思ったが、今から目標に向けて頑張ろう!とルティアと食材を買いに商店街に行った。
(てか、異世界だったんだなぁ。驚きだ)
そこに関しては空騎士を見たあとだとそんな感想しかでなかった。
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空騎士を初めてマイルが見てから三ヶ月が経つ。少し肌寒かった季節もすっかりポカポカになり、絶好の練習日和だ。
そんな日に庭で杖を持った黒髪の男性と銀髪の少女がいた。
「じゃあ、まずは魔法について教えないといけない事がある」
「はい!」
「おお、元気がいいなぁ?そんなに楽しみか?」
「はい!」
マイルはあれから三ヶ月の間待たされ、魔法の練習は今か今かと待っていたのだ。
何故時間がかかったのかと言うと杖の用意もあるが教師役である父のアラスが寒がりなので暖かくなるまで待っていたのだ。
だが、この三ヶ月間でマイルはだいぶ喋れるようにもなり無駄ではなかったのだが。
「うんうん、っで魔法なんだが、魔法には火法、水法、土法、風法、の初級魔法から始まるんだ。人にはそれぞれ不得意があるが、全部使えるなんて人もいる。因みに俺は全部上級まで使えるが、得意なのは火系統の魔法だ。今から見せるから見とけよ……っそりゃ」
アラスがそう言うと指先からチャッカマン程の小さな火がでる。
「暑くないんですかお父様?」
マイルは四歳にして他人や家族に対しても丁寧な言葉遣いになった。いつかは教えなければと思っていたアラスにとっては嬉しかったのだが母のルティアは「私のかわいい娘が遠くに行った気が…でも礼儀正しいのはいい事…?」などと複雑な気持ちになっていた。
「ん?あぁ、暑くないよ。体が自動的にレジストしてるらしいんだが……父さんも詳しくは知らないなぁ。まぁ、物は試しだ。火がでるって頭でイメージして…こう……ばっ!…としたらできるぞ」
「……わかりました」
これにはマイルも苦笑いになる程のものだった。あまりにも抽象的であやふやだ。
こういうのを感覚でやっている人たち、天才というのだろうか。
因みにアラスは昔、冒険者で有名だったとルティアから聞いたなとマイルは思う。そっからすごくフィルターがかかってそうな惚気話を延々と聞かされた。
さっそくマイルは頭で火をイメージする。
(んー、やっぱり教え方があやふやすぎて……こうか?)
「まぁな、俺だってこれできるまでに一週間かかったからな!でもなぁマイル、一週間って超速いんだ……ぞ…?」
「お父様、できました!」
見事にアラスの自慢話の最中に、マイルの指先から先ほどと同じくらいの火がでる。
「お、おう……。マイルは俺に似て火属性が得意なんだな!よーし次は……」
一時間後
「なんでだ……」
「やりました!"全部"できました!」
あれからアラスに言われるまま、同じ事をして見たが土法以外問題なくできた。
イメージが大事というので、火法はチャッカマン、水泡は水鉄砲、風法は扇風機とイメージしたらできたんだが、土法だけは思い浮かばず少し手間取った。最終的には泥団子をイメージした。
(やっぱりやればできるな俺、もしかして天才?……いや、それはないか。一週間でできても早いっていってもその時の父さんの周りの人基準かもしれないし……調子にのらずコツコツいこう!)
マイルはこう思っていたが実際一週間でできるのはすごい事で、一ヶ月かかってできるものや頑張ってもできない人もいる。それを知らないマイルは拳を握りより頑張ろうと決意した。
「お父様!次は何のま…ほうを……(あれぇ、力が入らない……)」
「!マイル!大丈夫か?」
そのままマイルは"魔力切れ"で倒れた。
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