スカイズマイル

銀狼丸

第1話

日曜日


それは学校や会社などで働き続ける物たちのなくてはならない一週間で一回ないと困る日。

ほとんどの人がこの日を娯楽や趣味に費やすだろう、例えば家でゲームをする人、外へ食べに行ったり遊びに行く人、リア充であれば彼女とデートなどするだろう。

兵庫の大学に通う、蒼井 巧もリア充ではないが娯楽に走る中のその一人だった。


彼はこの前バイトで貯めたお金で買ったデジタルカメラを手に持ち走り出す。


目的地はとある飛行場だ。

今日はそこで戦闘機が飛ぶそうなのだ。

彼の趣味は戦闘機や飛行機、飛行船などの空を飛ぶものだ。

小さい頃に気球に乗って以来、空に憧れ続けているのである。


ゴォーっという音と共に五機の戦闘機が空を、線を描き飛ぶ。

すかさず彼はその光景をデジタルカメラにおさめた。








「いやぁ、綺麗だったなー!」


辺りはすっかり暗くなり人通りも少なってきた時間、だからこそ道で少し大きな独り言を言っても大丈夫なのだ。


「やっぱり、あの真ん中の乗ってる人の操縦ははすごかったなぁ…うんうん。…あぁ、早く家に帰って今日とったやつ印刷して部屋に貼りたい……!」


そういいながらデジカメを掲げ、月をバックに空を見上げながら余韻に浸る。


(帰ったらまだ作りかけの模型もあるし!やる事がたくさんだ!)


その時だった。









--ッドン!








「わっ、すっすいません!よそ見し…て……て?」


突然、衝撃を感じる。

空を見上げているうちに誰かに当たってしまったのかと思い謝ろうとすると--


「あっ……あぁ、なん…だ?腹が…!」


腹部に激痛が走る。しかもさらに続けて、複数の強い衝撃。

その衝撃に立っていられず、その場に倒れこむと共に誰かが走り去って行く音がする。


「ぐぅぅ…!っはぁはぁ……これって……、血か?」


最初に衝撃を受けたところを抑えた手を見ると真っ赤に染まっていた。下を見ると道のアスファルトもどんどん真っ赤に染まり、血だまりができているのが見える。

そこで彼は激しい痛みと薄れゆく意識の中でこの状況を理解する。


(まじか……、まさか通り魔に会うなんてな……あぁ、なんか寒くなってきた…これって死ぬって事だよな…。まだやりたい事が……あったのにな…」


彼はもしかしてまだ…と思い目で辺りを見回すが独り言を言っても怪しまれない程誰も周りにはいなかった。

大声で助けを求めようとしても既にそんな力も残っていないのかかすれ声しかでない。


辺りを見回した時に見つけた家族から大学祝いに貰ったデジカメを取ろうとしたとこで彼の意識は途切れた。






----------


通り魔に刺されてから長い…長い時間が経った気がする。

ふわふわとした、夢のようななんの疑問も抱かない。寂しいような悲しいようなそんな世界。

そんな世界で感じるのは自分が本当にふわふわと上に行ったり、下に行ったりする感覚。けれどなぜか安心できる優しい揺れだった。


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地球ではないどこか遠い世界。

王都エルディアの南東に位置するルディン地方。


フロリア大森林に接し、時にそこから生まれる魔獣達との最前線の地方。

いつしか、魔物たちと対抗しうるためのギルドや騎士団を設立したため世界のツワモノたちが集まる場所を人々はこう呼んでいた"前線都市ガルディア"と。


そこからやや安全区域まで下がったところには魔物に対抗する戦力を鍛える王都エルダ学園がある。そこでは空を飛ぶ魔物に対抗する空騎士が世界で唯一養成される事で有名だった。

空を自由自在に飛び回り、敵を錯乱したり撃墜したりと冒険者や騎士と並ぶ非常に人気の職業だった。


その学園の敷地の空に今、二人の見習い空騎士が向かい合っていた。

一人が間合いを詰めようとするともう一人が間合いを保とうと少し離れる。と思わせてから離れた一人が逆に一気に詰め寄る。

そんな一進一退の攻防に目を輝かせる銀髪の少女がいた。


「おかーさん!そらとんでる!ひとがひこーきもないのにとんでる!」


まだうまく喋られないのか発音がちゃんとしてないがかわいい我が子にルティアは顔を綻ばせながら答える。


「ふふ、マイルったらこんなにはしゃいじゃって。あれはねー、空騎士っていうのよ」


「くーきし?」


「そうよ、空騎士はね、お空の悪い魔物達をやっつける人の事よ」


「まじゅー?くーきし!あれに……くーきしになる!」


「あらあら、この子空騎士に興味持っちゃったわ」


ルティアは横にいるマイルの父、アラスにいう。


「まぁ、いいんじゃないか?でもなぁマイル、魔法がある程度できないと空騎士になれないぞー」


「なる!まほーも頑張る!おとーさんおしえて!」


「まぁ、こんなに元気なマイルは久しぶりに見たわぁ」


「あぁ、そうだな……。よーし!マイル、練習するためにも用意がいるからな。それまで我慢できるかー?」


「わかった!がまんできる!まほー♪くーきし♪まほー♪くーきし♪」


そして、再び空を舞う空騎士を鼻歌まじりに聞く少女。


「ほんとに……久しぶりにみたわ…あの子のこんな顔。まるで、大事な物を取り上げられた顔だったのに……よかったわ…!」


「あぁ、そうだな」


その後ろで目に少し涙を浮かべ喜んでいる親を気にせず銀髪の少女、マイルは空を見上げる。


(うおぉぉ!人が空飛んでる!あれってどうやって飛んでるんだ?魔法もあるくらいだから風の魔法とかか?早く気づけば良かったなー)


心の中も大騒ぎのテンションだった。



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ふわふわした世界から目覚めたと思ったら銀髪の綺麗な女性の顔があった。


(!?えっ、ええ!俺さっき死んだよな?!そうだ!通り魔に刺されて死んだはずなのになぜに女性に抱えられて……女性に抱えられてる?)


そこで彼は考え、周りを見渡す。

一瞬まだギリギリ助かって病院に搬送されたのかと思ったが違う。

周りは白ではなく木造でいかにもここで生活してますってぐらい家具がある。

日本でわざわざしにかけの男を民間人のベッドで治療する病院なんてあったら即訴える。


しかも何故か女性に抱えられている。確か身長は平均ぐらいはあったはずそんな成人なりかけの男性を女性が抱えるのはおかしい。


そこである言葉が頭をよぎる。




輪廻転生




死んで体を失った魂が再利用されて違う体に入れられる。日本人なら誰もが知っている言葉。


(そうか、俺死んだんだな……)


そこで自分の手をみて確信した。そこに写ったのは今まで見慣れた手ではなく、ぷにぷにしてそうな小さな手だったからだ。


改めて周りを見渡すとまだ音は聞こえないがなにやら不安がっている人たち。


(ん?なんか変な事でもしたか?……っあ、いや…あれをしろっていうのか!?……ええい!)


「おぎゃー!おぎゃー!」


前の人生でも味わった事がないくらい恥ずかしかったが頑張った。


そのかいあってか、周りの人たちは先ほどの不安がっていた顔が一転してハッピームードになった。


(まぁ、前世も悔いだらけだったけど、この人生もその分楽しむか)


そう思い、色んな人がいる中で嘘泣きを頑張った。(あっ、本当に涙が)


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