第16話 少女の勇気と迷子の少女
「ふぅー、皆んなお待たせ」
「もう大丈夫りっくん?」
「ああ問題無い、冷たいの一気飲みは今後気をつけないとだな」
「そうなるのはわかりきってたでしょお兄ちゃん。これからは止めてよね。」
「さっき飲んだドリンクより冷たい妹だなぁ、それはさておき最初はここから一番近いラビットステイツから周るか!」
「賛成!早く行こうよみんな〜」
奏が左手を上げて同意を示す。
「雑貨店だったよね。場所はどっちかな」
空が入り口に置いてあったパンフレットを広げる。
「一階噴水広場の近くみたいね。行きましょう」
近くの案内板を確認し八雲が見つける。
雑貨店ラビットステイツ
「うわぁ!!凄い!可愛いアイテムがいっぱいある!あっ、あまかワンのキーホルダーやストラップだ〜。」
店内に入るや奏が感激する。
「取り揃え凄いわね。こんなに様々な種類のグッズ展開されてたなんて知らなかったわ」
八雲も驚きの声をあげる。
「缶バッジや筆箱、タオルに靴下、あ〜どれにしよう!悩む、悩むなぁ」
凛は既に品物を吟味していた。
「おっ、けん玉あるじゃん!ご自由にお試し下さいか...空!俺の秘技を刮目せよ」
そう言うとあまかワン仕様のけん玉で遊ぶ陸人。
「ってりっくん繊細なの苦手じゃん。あー!懐かしい、これ昔持ってたなぁ」
呆れた顔しながら見つけた物は風呂場で使う水鉄砲、例に漏れずあまかワンのデザイン。
「うーん。どれにしよう...どれも欲しくて悩むなぁ」
奏が眉を寄せて悩んでいると、凛が語りかけてきた。
「奏さん!八雲さん!これ一緒に買いませんか?」
「あっ、それ私も良いなって思っていたの」
凛が手に持っていたのはあまかワンストラップで、あまかワンの口に名前の書かれた板を咥える姿が描かれていた。
「これ名前がそれぞれ入っていて、奏さんや八雲さんの名前も入ってるんですよ〜」
「ほんとだ!凛ちゃんのもある。そしたら青街くんと大原くんのも探してみよう!」
「いや気持ちは嬉しいけど俺らはいいよ!あまかワンの熱狂的なファンでも無いし、若干恥ずかしいし...なぁ空?」
「そう...だね。可愛らしいデザインだから僕ら向けの商品ではないかも」
「ほら!そうだよな、だから3人で買ってきなよ!」
「お兄ちゃんはともかく、空兄ちゃんは別のでお揃い買おうよ!男性が持ってても違和感無い物で、例えば...ほらあのキーホルダーとか」
凛が指差した方向に大切な人との記念にいかがとでかでかと書かれた大きなポップが貼ってある。何やら友情を強く押し出したゾーンと恋愛を恋人を意識したゾーン。そして家族の温かさについて触れたゾーンと三つに分かれていた。
「へー関係性でどれ買うか変わるキーホルダーなんだ、」
空が近づいて手に取る。家族のキーホルダーは様々な個数がパッケージされていて大家族にも対応していた、
「うん。そうなの!これなら持ってても普通でしょー」
「これ文言凄いわね。マイフレンドに永遠フレンズ、トモダチに青春銀河に悪友まで.....」
友情のキーホルダーを手に取り八雲が驚きの声を漏らす。
「見て見て八雲ちゃん!これ友情の奴もペアだけじゃなく複数人用もあるよ!!」
「ほんとね。こっちはデザインも万人受けしそうな感じだし、出ている在庫を見ても人気みたい」
そんな四人が会話をする後ろで陸人が息を吐いた。
「ふぅ」
(凛。わかりやすく勝負してるな、本当は空と恋人用のが欲しいんだろうけど...ここは手助けしてやるかー)
「九条さん!雨霧さん!ちょっと選んで欲しい物があるんだけど見てもらえないかな?」
「うん。私で役に立てる事なら!行こう八雲ちゃん」
「...部活に気になる子でもいるの大原くん。」
「いや違う違う、夏の大会に向けて部員に渡す。士気が上がる物探しててさ、同性に渡すのはいくつか思い浮かぶんだけど、女子部員にどれ渡したら無難か女子目線で選んで欲しいんだよ」
「なるほどね。でも皆んなにって、そんなに買うと結構な額にならないかしら」
「あっ、それは大丈夫、その為に部費貰ってるからさ」
「話はわかったよ大原くん。それで渡す物何だけど...」
「うん。何か良い案ある九条さん?」
(時間稼ぐから進展しろよ我が妹よ)
置いてあるキーホルダーを見渡しながら空がテンション高く喋りだす。
「最近のキーホルダーは良く出来てるなぁ、ほら凛ちゃんこれ見て、中にパネルが入っていて文字が浮き出して見える!!」
「わぁほんとだ!でもこれ熟年夫婦って書いてあるから空兄ちゃんが買うには若すぎるよ〜」
凛が微笑む、それを見て空も笑みを浮かべる。
「ほんとだ、全然気づかなかった」
笑った後、一瞬呼吸を整え凛が紡ぐ
「...あの!その空兄ちゃんは...、今気になる人とかっていたりするの?」
「どしたの凛ちゃん?いきなり」
「いやほらクラスの男子や女子がさ!誰々が好きとか、誰々と付き合ってるとか言ってて...それで私の身近な人はどうなのかなーって気になって、」
凛の顔が真っ赤になる。
「ああ、そうなんだね。中学三年にもなればそんな話もしたりするよね。」
「そうそう、そうなんだ!だから問題無ければ知りたいなーって」
「うーん。気になる人かぁ、いないかな...」
「ほんと!?」
「そもそもあんまり喋らないから、クラスの子ってよく知らないんだよね。」
苦笑を浮かべる空。
「そう...なんだね。」
「凛ちゃんは、逆にクラスに気になる子いるの?」
「クラスにはいない、...でも好きなひ」
そこまで言いかけて凛と空の後ろを歩いていた小さな女の子が泣き出した、
「ママ...パパ...うっ、ひっぐ、うぇぇぇぇぇん。うぅひっぐ」
すかさずそれに気づいた空が駆け寄る。
「どうしたの?もしかしてお父さんお母さんとはぐれたのかな」
「うぅ、ひっぐ、ママいない、パパもいない...うぁぁぁぁぁぁん。ひっぐうぁぁぁぁぁぁん」
先ほどより更に強く泣く、そこに凛が割って入る。
「私が被っているこの帽子は、被ると不思議な力が湧いてくる帽子、泣いている子もたちまち笑顔に変わる奇妙な赤帽子!さぁ君もこれを被って泣き虫を吹っ飛ばそう!」
声を変え特徴的な動きを交えて、赤帽子を
小さな女の子に差し出す。女の子はキョトンとした後帽子を手に取り、そのまま被った。さっきまで泣いていた顔は笑顔になり凛と笑いあっていた。
空はそれを見ながら今後を考える。
(助かった凛ちゃん!けど、どうしたら...)
「そうだ、りっくん!館内マップ貸して!」
向こうで会話をして会計に並んでいた陸人に呼びかける。奏と八雲も気づいて凛に駆け寄る。
「なんだなんだ、どうしたんだ空」
「この子迷子みたいなんだ!館内にアナウンスして貰える場所あるんじゃないかと思って!」
「そういうことか!確かあったはずだ迷子センター、一階じゃなくて...二階でも無かったはず...確か三階だ!」
マップを開き館内施設に目を通す。
「あった、あったよりっくん!ここだ、三階のエレベーター近くだ」
「よし!凛。その子に名前と年とか聞けそうか?」
「大丈夫だよお兄ちゃん!小鳥遊ひなこちゃん。五歳だって!」
「そしたら迷子センターに急ごう!きっとひなこちゃんの両親が心配してるはずだから」
「ええ!」
「うん!」
「がってん!」
「はい!」
五人は迷子の女の子を連れ、三階迷子センターへと向かった。
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