第15話 星海ショッピングモール
そして翌日、
田島宅
八時四十五分、空と奏は起床し朝食を済ませ出かける準備をしていた、
「九条さん。準備出来た?」
「うん。大丈夫!行こ、」
笑顔な奏を見てつられて笑顔になる。
家の鍵を閉め駅を目指し歩き出す二人
同時刻、大原宅
眠気まなこを擦り凛がリビングに降りてくると視界に入った異変に驚く、
「お兄ちゃん!?...起きてるなんて...一体どうしたの?」
「おはよ凛。今日はガイドの為に今のうちにルートやマップの情報見てるんだよ、」
「そこまできっちり計画練るなんて...あなた本当にお兄ちゃん?」
「朝から心外な事を言う奴だな!ほらモール初めて行く九条さんや雨霧さんに楽しんでもらいたいじゃんか。」
「嘘でしょ...なんか朝からびっくりして調子狂うよ」
「こっちも朝から失礼な言葉ぶつけられて調子狂うわ!とにかく、ほら凛。出かける準備して行こうぜ」
更に同時刻、雨霧宅
(結局あまり眠れなかったわ、お父さんにタイミング伺って上手く説明するのに時間かかってしまったし何より目が冴えて仕方がなかった...)
八雲にとってあまり無い経験。十年前の学校行事で奏と遠足に行った前日に似た感覚
所謂楽しみでワクワクした気持ち、自らにまだまだ子供だと嫌悪して、
ベッドから体を起こし服を着替え出かける準備をする。
そしてリビングで朝食を食べてた父に言葉をかけた、
「それじゃお父さん。行って来ます。」
「ああ行ってらっしゃい、きっちり感覚を研ぎ澄まして経験してくるんだよ。」
「...行って来ます。」
九条音也にした説明は星海モールの中にある大きな楽器店に知り合いと行くと言う事、
そしてそれだけでは許しを貰うには理由が弱いので、追加でモールにある自由解放されたピアノで他を圧倒する演奏をすると伝えた。
それを聞き一瞬眉をひそめ、そして少し間をおいた後に承諾したのだった
そして九時五十分。
天川出の隣駅星海に到着する面々、
「まだ皆んな来てないみたいだね。」
最初に到着したのは、空と奏だった。
「私たちが一番乗り、って凄い!ここからもう入り口見えるんだね!」
元気に辺りを見回す奏、爽やかな水色のワンピースが彼女の明るさを更に際立たせる。
「うん。ここらじゃ一番大きなショッピングモールだから駅からほら案内情報が凄いでしょ」
説明しながら空も辺りを見回す。白のシャツに下はネイビーで落ち着いたスタイル。
駅周辺にいたるところに貼られたモールへ促す広告ポップが目に入る。新たな視界に入る景色に気を取られていると後ろから声をかけられる。
「奏、青街くん。おはよう」
かけたのは八雲だった、着ている私服の効果も相俟っていつもより大人びた印象を見受ける。黒いスカートに白のブラウスに身を包んだ彼女はまるでモデルの様な麗人で、一目で同じ高校生とは誰もが思わないだろう
つい前日も私服は田島宅に集まった時に見たが、その時より一目で気合いが入ってるとわかるほどの見た目だった。
「あ、おはよう八雲ちゃん。」
「おはよう雨霧さん。今日は髪型も服装もなんだかいつもと雰囲気違うね。」
「...ちょっと個人的に訪れたい場所があって、それでよ」
「そうなんだ、じゃあみんな揃ったらそこに行こうね。」
「ううん。奏、その件は一通り回って皆んなが休憩してる時にでも行ってくるから気にしないで、」
「そんな気を使わなくても時間あるんだし大丈夫だよ雨霧さん。」
「気を使ってると言うか、単に一緒に来ても退屈なだけだと思うから...それよりあれ凛さんじゃない?」
そう八雲が向ける視線の先に大原凛の姿が見えた、
「ほんとだ凛ちゃんだ。凛ちゃーん!」
手を振る奏、だが何かがおかしい
「あれ?凛ちゃんと...りっくんいなくない?」
「ほんとだ、大原くんが見当たらない!」
こちらに気づき駆け足でやってくる凛。
「皆さんお待たせしました!集合時刻ぎりぎりですみません...」
赤の可愛い帽子に青のオーバーオールを着て、彼女の活発さや天真爛漫さが見た目からも放出している。
「う、うん。それは全然だよ、僕たちも今さっき到着したとこだから、それよりりっくんはどうしたの?まさか体調不良とか?」
「あ、えっとですね...兄は今全速力で向かってるはずで、もう間も無く着くとおもうんですが、」
そう喋っていると凛の後方から凄い勢いで改札を通った見覚えのある姿が目に映る。
「皆んなー!!...ハァハァハァ、ギッ、ギリギリセーフ?」
ロングシャツにデニム、そして腰に上着を巻いた汗だくな陸人が合流するや否や近くにあった設置時計を確認する。時刻はジャスト十時
「一体どうしたのりっくん!?バラバラに到着するなんて、しかも息切らすくらい走ったみたいだし」
「いやさ...時間に余裕を持って家を出たんだけど、駅向かう途中で財布が無い事に気付いてさ」
「そこからお兄ちゃんが猛ダッシュで取りに帰ったんです。それでその時に預けてた私の電子パスまで持ってっちゃったままで、」
「途中で連絡来たからとりあえず今は切符買って向かってくれって言ったんだ。そしたら、私電子パスしか普段使わないから切符の買い方どうやるかわからないとか言い出して」
「仕方ないじゃん!生まれてから切符なんて使わなくてずっとパスなんだから!」
「経験無くても買い方くらい券売機で他の人見てたらわかるじゃんか!なのに、電話越しで買い方レクチャーさせやがって!」
「元はと言えばお兄ちゃんが、財布忘れたからいけないんでしょ!折角早く起きたのに意味ないじゃない!」
「それは仕方ないだろ!それ以外の持ち物に気を取られてたんだから!」
「じゃあ先にそれも踏まえてパスだけでも渡してくれれば良かったじゃない!」
「それ言ったら最初から預けないで自分で管理しとけば良かっただろうよ!」
兄妹のヒートアップする口論。奏と八雲は初めて見る光景に少したじろぐ、そこをとりあえず空が仲裁に入る。
「ふ・た・り・と・も!!...とりあえずこれ飲んで落ち着こ、あと遅れてないんだし、皆んな集合したんだからモール向かおうよ」
差し出したのは五百ミリのペットボトルを二本。事前に買っていたそのスポーツドリンクとお茶を陸人と凛に手渡す。
「空...悪い、あとありがとう。めっちゃ喉乾いてたからマジ助かるよ」
「空兄ちゃんごめんなさい...飲み物ありがとう、代金いくらだったの?」
「二人とも気にしないでいいよ、ただ謝るのは僕にじゃ無くて、九条さんと雨霧さんに、あとお互いに、だよ」
手にしたスポーツドリンクを一気に飲み干し陸人が喋る。
「ぷはぁ、...そうだな、すまなかった九条さん雨霧さん。あと凛、大人気なかった、悪かったよ」
「私も...奏さん八雲さんごめんなさい、あとお兄ちゃん。私も少しだけ悪かったと思ってる。」
当事者以外の三人は内心、双方素直に謝れない似た兄妹...と同じ感想を抱いていた。
「じゃあひとまず、皆んな揃った訳だし目的の星海モールに向かおー!」
左手をモールに指差し奏が元気良く歩き出す。
「ええ」
「はい!」
「がってん!」
「うん。行こう」
目と鼻の先にある超大型ショッピングモール、星海モールへと歩き出す面々。
十時から営業開始したモールへ向かう人の流れに混ざって行く、
「凄いわ、この周辺にいる方たちは全員ショッピングモールを目指してる。私が想像してたよりずっと人数が多いのね。」
「そうそう!まぁ土曜日だから平日に比べたら多いのは当たり前っちゃ当たり前なんだけど、今日はそれだけじゃないんだ、実はモールの中央でイベントがあるみたいで、あまかワンがやってくるんだってさ!」
「!?」
言葉と共に九条奏の足取りが若干早くなる。横を歩いていると思っていた凛もいつの間にか奏の横に進んでいた、
「凛ちゃん...」
「奏さん...」
二人はそれだけ口にすると黙ってお互い頷く、
「待て待てそこのお二人さん。イベントは十二時からだからまだ行っても何も無いぞーって...聞いてないし!、あれ?雨霧さんはそこまで興味無さげ?」
正直一番食いつくかと思っていた彼女が、冷めていたのは意外であった。
「私は着ぐるみはちょっとね...」
「あれテレビで見た事あるけど、結構大きいからグッズやイラストとはちょっとズレてるよね。」
「それはしゃーない、中に人が入らなきゃいけない訳だし」
「そもそも、二足歩行してるあまかワンは何か違うのよ、仕方ないのかもしれないけど」
「意外と見たら愛らしいかもよ?」
「まぁ時間あるし、あの二人は間違いなく見たいだろうから」
「そうね。一応見るだけ見ましょ」
会話をしながら店内に入っていく、
星海ショッピングモール内には映画館や家電量販店や巨大フードコート、様々な衣服店にアミューズメント施設、更にはロマン溢れるプラネタリウムまで備えていて、休みの日は街の老若男女で賑わう。
「さてと!まずはどこ周る?」
「とりあえず行きたいお店とかあるなら先に周ってくとか」
「あそこに行きたい!雑貨や小物にキャラグッズまで扱ってるラビットステイツ!」
「私が周りたいのも凛さんと同じだわ、あまかワングッズ豊富らしいし」
「八雲ちゃん凛ちゃんと一緒!あとは...洋服も少し見たいかも」
「それじゃ、まずはそこからだな!空は行きたいとこは?」
「僕は新しい寝具と洗濯グッズが見たいかな、りっくんは?」
「俺は映画館と和菓子の名店斑鳩!あとさっきからずっと我慢してたんだけど...トイレ...かな」
「はぁ、じゃあひとまずトイレ行ってから再度合流して、周ろっか」
「わかったわ」
「全く...一気飲みするからだよお兄ちゃん。」
「うん!」
「皆んなすまねぇ...トイレの場所案内するぜ」
お腹を摩りながら陸人を先頭に一行は、WCへと向かう。
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