第7話 蜂蜜とコーヒー

五人で遊んだ、一ゲーム目が終わり時刻は十八時を過ぎていた、


「いやー楽しかったな!まさか最後に得点が並ぶとは思わなかった、ハラハラしたよ」陸人175点


「僅差だったね。やっぱりっくん運動神経と集中力凄い」空172点。


接戦の白熱したスコア争い


「久しぶりに遊んだけど楽しいね。次はお兄ちゃんに負けないから!」凛168点


「家にいながら本当のボウリングしてるみたいで、しかも皆んなで遊べて不思議な体験。またやろう!」

奏120点


「ええ、またやりましょう、次こそ必ず真っ直ぐ投げてみせるわ」八雲137点


「後半は真っ直ぐ投げれてたじゃん。初めてで130オーバーは凄いと思うよ」


「さて、ゲームも終わったし御飯にしよっか」




一旦ゲームの電源を消してテーブルに移動し椅子に腰掛ける面々。


「私はそろそろ御暇しようかしら」


八雲が帰る準備をしながら発する。


「雨霧さんもう帰っちゃうの?」


陸人が声かけた、


「ええ、あまり遅くなっても悪いし、それに両親が夜作ってくれてると思うから」


「そっか、残念だけど、仕方ないね。また遊びに来てよ雨霧さん。これ運動して喉乾いたでしょ?」



空が冷蔵庫から緑茶のペットボトルを出し、八雲に伝えながら渡す。


「青街くん大原さん今日はありがとう、とても楽しかった、例の話はまた次の機会に詳しく聞かせて貰うわね。お茶ありがたく頂くわ」


僅かに普段あまり見せない笑顔を見せ、玄関に向かう、奏と凛も後を追い家の前で言葉を交わす。



「八雲さんまた一緒に遊んだりあまかワンについてお話したりしたいです。ありがとうございました。」


「ええ、また話しましょう、凛さん。初対面で仲良くしてくれてありがとう、」


「八雲ちゃん。今日は楽しかった!ありがとう、また遊ぼうね。」


「こちらこそ楽しかったわ、

奏.....やっぱり何でもないわ、また学校でね。」


四人に見送られながら、八雲は曲がり角を左折し帰っていった。





そして四人は再び家の中へ、


「空今日の夜は匂いからしてカレーか?」


「うん。カレーとサラダで食後にホットケーキ焼くよ」


「動いて腹減ったからボリュームある食事は有難い!」


「お兄ちゃん。少しは遠慮って言葉を覚えてよ、妹として恥ずかしいから」


「赤の他人ならわかるが、空とは家族同然なんだからいいじゃん。」


「親しき仲にも礼儀あり、だよ?ごめんね空兄ちゃん。兄が不躾で」


「ううん。全然構わないよ、それより凛ちゃん難しい言葉を知ってるんだね。」


「それ私も思った、不躾なんて普段使わないし、まだ中学三年なのに賢いんだね凛ちゃん。」


「そんな事ないですよ、空兄ちゃん物知りだし奏さんも知的に見えて私尊敬です。」


「凛、凛!俺は?」


「陸兄ちゃんは...運動神経は凄いと思うよ、

運動神経は」


二回目は一回目より強く発音する。


「な、なんか棘がある言い方だな」


「ほらりっくん。そんな事より御飯食べよ?サラダとカレー持ってって」


「空まで冷たい!差別反対!」


「凛ちゃんも九条さんも言わなくても取りに来てくれてるんだから、差別じゃないし当然だよ」


各々自分のお皿を運び、手を合わせる。


「それじゃ、いただきます!」


陸人の掛け声に合わせてそれぞれ挨拶する。カレーを一口食べて、


「空兄ちゃん!カレー凄く美味しい!」


「それは良かった」


「私も驚いた!青街くん。これ隠し味とか入れてるの?」


「少しだけコーヒーと蜂蜜をね。コクが出るって聞いたから試してみたんだ」


「このカレー美味いよ、家庭で食べる味より店に近い感じ」


「珍しくお兄ちゃんに同意かも、サラダもドレッシング好きな味でたまらない!」


「りっくん凛ちゃんありがとう、おかわり分もあるから遠慮せず食べてね。あ、デザート食べれる様に調節はしといて」


二人共頷きながらカレーをどんどん食べ進める。

奏も美味しそうにスプーンを口元に運ぶ、ある程度食べてから空が席を立ちリビングへ、


あらかじめ混ぜ合わせていたホットケーキのタネを油をひき熱したフライパンに入れる。音と共に甘い香りが部屋に広がり鼻腔を刺激する。


焼けたホットケーキを裏返し固まったのを確認してから皿に移す。そこに冷蔵庫から蜂蜜とバニラアイスを取り出して飾り付けする。


「はい、みんなお待たせ、大皿でごめんね。完成したよ」


「匂いで、わかるぞ...これは間違い無く美味いって!」


「ホットケーキだ!しかもアイスまで乗ってる!空兄ちゃんありがとう」


「見た目がお店の商品みたい...凄いよ青街くん!」


「市販なミックスだから作るの難しくないし、簡単だよ、お口に合うと良いんだけど」



三人はカレーとサラダを食べ終え、テーブル中央に置かれたホットケーキに手を伸ばす。パクり、それぞれ同じタイミングで


「美味しい!」


「それは良かった」


笑顔で囲まれる食卓はとても賑やかで楽しげな感情に包まれていた。






食事が終わって、どの順番でシャワーを浴びるか決める事に、じゃんけんにしようとの提案が陸人からあり行なった結果、

凛、奏、空、陸人の順に、


「空兄ちゃんそれじゃ先にシャワー借りるね。」


「うん。行ってらっしゃい、タオルはすぐわかるとこに置いてあるからそれ使ってね。」


思春期な女の子は頷きながら若干頬を紅潮させ浴室に移動、空は後片付けに取り掛かる。

陸人と奏は食器を運んでから、空に促され授業内容を記載したノートを広げた、


「これまでの進行具合、見せてあげてりっくん。」


「おー、そうだそうだ、九条さんこれどうぞ!」


「大原くんありがとう、写させてもらうね。」


内容を模写していく奏、陸人も付きっ切りで補足を入れながら説明する。

やはり彼は面倒見がいい、ふと洗い物をしながら思った空、

自分は同じ学年では無いのでそう言ったサポートは出来ない為に陸人の存在は心強かった。



暫くしてから浴室からシャンプーの匂いを纏って凛が部屋へ


「お待たせしました〜、次奏さんどうぞ」


その音の方向に視線を向けると、何やら可愛らしいフードを被り尻尾と耳が付いていた、奏の音が一オクターブ上がる。


「わぁぁ!凛ちゃん。そのお洋服可愛いね!」


今にも飛びつきそうなくらい近くまで寄り興奮気味に


「えへへ、これ実はあまかワンパジャマなんです。恥ずかしくて家じゃあんまり着ないんですけどね。」


「すっごく似合ってる!ちょっとだけギュッてしても良いかな?」


「はい、勿論です!」


「ありがとう!」抱きつく奏、


「可愛いし良い匂いするし、凛ちゃん礼儀正しいし可愛いし」 可愛いを二回言っている。


こんなテンションの奏を初めて見る空と陸人は顔を見合わせていた、


「奏さんこそ、優しいし美人だし、私からしたら理想のお姉ちゃんって感じです。」


それを聞き更に奏は抱きしめる。


「凛ちゃん...可愛い理想の妹過ぎるよ...」


...

そこで我に返ったみたいで、振り返り二人の男子を見た後に深々とお辞儀して一言


「シャワーお借りします。」


そして浴室にすぐさま姿を消した、恥ずかしそうに頬を赤らめていたのが印象深かった、


「新しい一面を見たな、空」


「そうだね。あんなにテンション上がるなんて知らなかったよ」


「奏さんほんとに可愛いくて優しい、ギュッてされた時凄く良い匂いしたし」


「でも確かにわかるかも、そのパジャマ凄く可愛いし」


「そうかぁ?動きづらそうだし何より暑そう」


「可愛い?ほんと!?空兄ちゃん」


「うん可愛いよ、なんだろう。垂れた耳とか尻尾とか触りたくなるね。」


「触って触って!触り心地良いよ〜」


陸人を無視して盛り上がる二人、


「しっかし凛は分かり易いなぁ」小さく呟く、


空と喋る凛は終始笑顔な事が多い、それにしても立ち振る舞いが本当の犬に見えてきた陸人であった。


奏が出てきたので、入れ替わりで空が浴室に、その後に陸人が入り、皆パジャマやTシャツにジャージなど様々な服装。


「明日も学校あるしそろそろ寝ようか」


「そうだな、じゃあどこで寝るか決めようぜ、仁義なきグループ分けをしよう」


陸人はそう言うと拳を突き出しぐーとぱーの形を繰り返す。


「え〜運任せにするの〜?」凛が不服な声を出す。


「その方がスリルあるだろ?ほら皆んな、わっかれましょ!」


掛け声に合わせた結果ぱーが空、奏、凛。ぐーが陸人だった、


「やった!空兄ちゃんに奏さん。それじゃバイバイお兄ちゃん」


「あれ、二人ずつに別れる訳じゃ無かったんだ」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!この結果は予想外だし、それに三対一なんてバランス悪いから二人ずつにしようぜ」


「今更変更は受け付けませんよーだ」


「流石に一人は可哀想だから僕そっち行くよ、そうすれば寝るスペースも狭くならないだろうし」


「えー空兄ちゃんそっち行っちゃうの?」


「一応雨霧さんに釘刺されてるし、同性同士でおとなしくしとこ凛ちゃん」


「空〜、ありがとな〜、危うく一人で寂しくなるとこだった」


「九条さん凛ちゃん明日朝ご飯出来たら起こすね。それじゃお休みなさい」


「うん。ありがとう、青街くん。大原くん。お休みなさい」


「お休み〜」


「おやすみなさい」


二階の部屋に二人ずつ入室して、就寝するかと思われたが...

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