第5話 噂の妹

放課後、空が帰ろうとしていると八雲が話しかけてきた


「あの、青街くん。」


「何?雨霧さん。」


「さっきの話しなんだけど...やっぱり心配だから私も行ってもいいかしら?」


「えっ、泊まりに来る話!?」

驚く空


「違う泊まらないけど、奏の様子を見たくて、あと田島清一郎さんについて、私の知りたい真実の記録が何か残ってるんじゃないかと思って気になってるの」


嘘をついている感じはない、その疑問を受け答える


「うち、来るのは全然大丈夫だけど、叔父さんの部屋は勝手に入るのは駄目かな、それこそ許可取ってないし」


「ええ、それはわかってるわ」


「そう、なら構わないよ、家の場所わからないだろうし住所書きだすから待ってて」


それを受け八雲が少し戸惑いながら言う


「わざわざ住所書き出さなくても...地図送ってくれれば大丈夫よ、だから、その、えっと、アドレス交換しましょ」

恥ずかしそうに言う八雲


「ぷっ、はははは」少し笑う空


「なっ、何が可笑しいのよ!」怒る八雲


「ごめんごめん。いやまさか、雨霧さんから聞かれるとは思わなかったからさ、ちょっとびっくりしちゃって」


「な、なんですって!奏の連絡先すぐ聞いたあなたには言われたくないわよ!ふん。もういい、住所書き出したの貰うから」


「ううん。交換しよアドレス、来週叔父さんとの話取り付ける時も連絡するだろうしさ」


「...それはそうだけど、なんか納得行かない」


そんなやり取りをして八雲は渋々スマホを取り出し連絡先を交換する。


「んじゃ、また後で、何かわからない事あったら連絡してね。」


「ええ、わかったわ」

そして空は教室を出て、三年のクラスへと向かう




クラスを覗くと奏と陸人が丁度帰ろうとしていて空が声をかける。


「二人共、帰ろー」


「空、今日は世話になる。あと今さっき連絡来たんだけど、凛も必ず行くってさ」


「そっか、凛ちゃんもう家にいるんだね。中学生は帰るの早いなぁ」


「妹さんがどんな子か楽しみ」


そんな会話をしながら校舎を後にする。帰り道の途中で空が口を開く


「あ、そう言えば今日雨霧さんも来る事になったから」


反応する奏

「本当!?じゃあ今日は賑やかになりそうだね!」


過剰に反応する陸人

「まさか空から誘ったのか!?...やっぱり変わっちまったんだな」


否定する空

「違う違う、向こうからやっぱり九条さんが心配だからって言ったんだ、それに泊まるとは言ってなかったよ」


安堵する陸人

「なんだ、向こうからかい、でもそれでこそ俺の知る友だ!」


カチンと来た空

「ちなみに雨霧さんが心配した主な理由はりっくんだからね」


いつもより若干強い口調で喋る。


「え、そうなの?」


鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする陸人


「うん。どうやらかなり警戒されてるみたいだよりっくん。」

皮肉入り混じる笑顔で


「えぇ...俺悪い印象になる様な事は何もしてない...よね?」


「うん。私にもどうして大原くんが警戒されてるのかわからない、八雲ちゃんはなんて言ってたの?」


「雨霧さん曰く狼に見えるんだってさ」


「なぬ、どうして狼なんだ...これは本人に直接理由聞かないと」


「そうだね。きっと八雲ちゃん大原くんの事誤解してるよ!」


空は陸人を少し凹ませようと放った言葉から謎の一体感が生まれてしまい望んだ展開とは違う消化不良な気持ちに


「じゃあまた後で!」


陸人はそう言うと分かれ道を走っていった、

奏が問いかけてくる


「大原くん。泊まりに良く来るの?」


「そうだね。最近は部活が忙しくて中々機会無いけど、小中と泊まったり泊まりに行ったりしてたよ」


「そうなんだ、二人は本当に仲が良いんだね。」


「最近はりっくんとは学校で会えるけど、凛ちゃんとは久しぶりだから凄く楽しみだな」


「そうなんだ、私も気になる。どんな子なの?」


「身長は九条さんよりちょっと低くて、可愛らしい子だよ」


「へ〜、益々早く会いたくなったな」


「とりあえず、今日は人数多いし夜ご飯の買い出し行こう」


「そうだね。わかった」


二人は近くのスーパーへ向かい一通り買い物を終わらせ、家に帰る。レジ袋には複数の野菜が予めカットされた野菜セット、牛肉、そしてカレー粉





「さてと、じゃあ調理取り掛かろうかな」


キッチンに入り冷蔵庫から生野菜やハムを取り出す。


すると奏も動きながら

「私も手伝う!お皿運んだりとかしか出来ないけど...」


「ありがとう九条さん。そしたらここにあるお盆を使って、コップを五つテーブルにお願い」


「うん。わかった!」


そんな感じで、来客を迎える準備を進めているとインターホンが鳴る。


「青街くん手離せないだろうから私出るね」


空はフライパンで肉と野菜を炒めていた、奏が玄関に移動しドアを開ける。そこには大原陸人がいた...あれ?妹さんがいない、そう奏は思った瞬間に陸人の後ろに誰かいる事に気付く、


「やっほー九条さん。後ろに隠れてるのが、妹の凛!」


その声と同時にひょこっと顔を出す少女、

髪は肩までのショートに小柄でブレザーの制服を着ている。その少女は奏を見て凄く驚いていた


「空...さんじゃない!?」


その反応に奏が戸惑っていると陸人が大笑いした


「あははははは、凛。その反応百点満点」


いまいち状況が飲み込めてない奏。すると中々家の中に入って来ないので調理を一時中断した空が玄関まで来る。


「みんなどうしたの?」

笑う陸人に戸惑う奏、極め付けにショックな顔した凛を見て困惑する。そして視界に飛び込む人影


「えっとこれはどういう状況?」

そのタイミングでまさかの雨霧八雲が到着する。


凛は八雲を見てさらに落ち込む


「空さん...ちょっと会わない間に、何があったんですか!」


叫ぶ凛。更に大笑いする陸人、事態が全く把握出来てない空と奏と八雲。そして陸人が笑いながら口にする


「あはは、凛ごめん。説明するの忘れてた、」


その一言に凛は怒りの表情を兄陸人に向けた


「説明って何!お兄ちゃんキチンと理由述べて!!」



凄い剣幕で詰め寄る凛。


「とりあえず家に入って話さない?」そう発すると



「空さんは黙ってて!」

ピシャリとその言葉と共に兄の胸ぐらを掴んでいた、奏や八雲は初対面なのにファーストインプレッションは最悪である。


「早く説明して!」


凛が陸人を揺らす。


「こんな状態じゃ説明出来ないよ凛〜」


揺らされながら答える陸人、八雲がやりとりを横目に見つつ奏と空に問う


「よくわからないけどお邪魔していいかしら?」


空が答える。

「どうぞどうぞ」


陸人が揺らされながら叫ぶ


「ちょ、置いてくな空〜」


「ちょっとお兄ちゃん早く説明して!!」

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