第4話 賑やかな昼

学校への通学路、いつも一人で歩いていた朝は今日から二人。


歩きながらお互い聞きたかった事を聞く


「そういえば九条さん好きな食べ物ってどんなの?」学校への通学路、いつも一人で歩いていた朝は今日から二人。


歩きながらお互い聞きたかった事を聞く


「そういえば九条さん好きな食べ物ってどんなの?」


「好きなのは卵焼きかなぁ、甘くないの!青街くんは?」


「甘くない卵焼きわかる。出汁とか入った卵焼き美味しいよね〜。僕はトマトが好きだよ」


「トマトなんだ!トマトって色んな料理に使われるよね。ミネストローネとか凄く好き」


「そうそう!トマトベースの料理ってとても多いから知れば知るほど奥が深くて」


「うんうん。今度おすすめのトマト料理教えてね!青街くんは普段休みの日とか家でどんな風に過ごしてるの?」


「休みの日?そうだね。絵を描いたりとか料理したりとか、あと屋上で陽に当たったりとか」


「絵や料理も気になるけど、陽に当たるってなんだか植物の光合成みたいだね」にっこりと奏が微笑む


「そう言われてみれば確かにそうかも、でも陽に当たってると凄く気分が落ち着くんだ」


「そうなんだ、じゃあ天気の良い日に真似してみようかな」


「是非是非、快晴の日がおすすめだよ」




そんなお互いの知らなかった部分の話をしつつ歩く、学校に到着しそれぞれのクラスへ、


椅子に座りそこで空は重大な事に気付きすぐさまスマホを開いて奏に連絡する。


「九条さん!ごめん伝え忘れた、授業のノート取るのとか大丈夫?もし駄目そうだったら僕は力になれないけど、頼りになるりっくんに話しとくから!」


文を打ち込み即送信。そしてすぐに陸人にも連絡する。


「りっくんエマージェンシー!とりあえず理由は聞かず今日の授業きっちりノート取って、訳は後で話すから!!」


授業が始まる前に送信せねば、...すると送った直後に返信が二件


「心配してくれてありがとう、私何故か文字だけは左右どっちも書けるから大丈夫!、それに大原くん優しくて今までの授業内容のノート見せてくれてるの!」


まず率直に器用だなぁと感じ、陸人は好感度メーターに抜かりないなぁと


「緊急事態の理由がわからんが、サーイエッサー!どっちみちノートは取ってるから平常運転だわ、ってかいつの間に九条さんの連絡先知ったんだよ空!後でそっちを説明求むぞ!」


まず平常運転な陸人は過去の経験から当てにならない時が偶にある。


そしてまぁそうなるよねと、説明責任を求める政治家並みに根掘り葉掘り聞かれるのが容易に想像出来る。


とりあえず最悪の事態は免れたので、深く一息ついていると、


「おはよう」


声のする方を振り向く、そこには雨霧八雲が立っていた。


「おはよう雨霧さん」


これまでお互い挨拶など無かった為いきなりの出来事に同様する空。雨霧は続けて喋る


「あなたの親戚に田島清一郎さんと言う方がいらっしゃると思うんだけど、ご存知?」


「清一叔父さんなら知ってるし、むしろ一緒に住んでいるよ」


「本当!?どうしても直接お話聞かせて欲しいんだけど、話取り持ってくれないかしら?」「?、よくわかんないけど、少なくとも今は無理だよ」食い気味に


「どうして!?」


「今日から一週間仕事で出張だから」


「な!?...なるほどね」


「どうしても聞きたいなら電話出来るけど」


「いえいいわ、直接聞かなければ駄目だから、一週間後にお会いしたいと話してくれないかしら?」


「うん。わかった、でも叔父さんの事どうして雨霧さんが知ってるの?」


「それは本人に聞けばわかる。私の名前では無く父の名前を出せば、必ず何らかの反応するはず、」


「雨霧さんのお父さん...」


「父の名は雨霧音也、とにかく伝えてみて、私は真相が知りたいの」


「わ、わかった」


「それじゃまた」言い終わると、斜め前自分の席に座る。


「叔父さんの過去...気になる」




同じタイミングで始業チャイムがなり一時間目が始まる。科目は世界史だった、教養に関する唐突な教師のクエスチョンに相変わらずの才色兼備振りを発揮する雨霧八雲。


彼女は何者なのか、空の頭はそればかり考えていた。一時間目が終わり、次の授業に使う教材の準備をしていると、聞き馴染みのある声が耳に入ってくる。



「空ー!言い訳を聞かせてもらおうか〜」


二年の教室に三年が来る。微妙にクラスの空気が変化、しかも予想外だったのは良く見ると陸人の後ろに九条さんがいたこと、驚愕である。


「昼休みじゃなくて今来るとは...ましてや九条さんと一緒だなんて」


「呼んだら来てくれた」


「呼ばれたから付いて来ちゃった」


「そんなあっさりと...」


「だって断る理由が無かったし」


三年の教室に二年が入るのも中々だが、その逆はクラスメートに少し緊張が走る様でざわつく、中でも雨霧八雲はとても驚いた表情をしていた。


「えっ...まさか、そんな、奏?奏だよね!?」


不意に出た雨霧八雲の今までとは違うリアクション。その反応に空と陸人は疑問符を浮かべていた、だが奏はびっくりした様子で言葉をかける


「...嘘、もしかして八雲ちゃんなの!?」


まさかの顔見知り


「二人知り合いなの?」空の問いに八雲が返す


「小学生の時に登校班が同じなのがきっかけで、よく一緒に遊んでたの...奏あの時と顔立ち変わってないからすぐわかった」


「懐かしいな...あの後八雲ちゃんが転校しちゃって、それ以来になっちゃったんだよね。」


思い出話が繰り広げられる中、陸人が空に小声で聞く


「こちらの美人さんはどなたなんだ、初対面だからさっぱりわからんのだが」


続けて小声で


「ああ、えっと、この方は雨霧八雲さん。クラスメートだよ」


「ほうほう、空〜こんな子いたなら紹介してくれよ」


「いや僕もちゃんと話したの昨日だし、それにりっくん確か年下興味無いじゃない」


「それとこれとは別!おほん。...えっと雨」


そこまで言いかけたタイミングで予鈴が鳴る。


「タイミング悪!しゃーない続きは昼休みに詳しく話そう」


そう言うと陸人は奏に声かけ急いで自分たちのクラスに戻っていった、


「...タイミング悪いわね。」


「仕方ないよ、昼休みにまた話しするからその時続きすればいいんじゃない?」


「そうね。わかったわ」


二時間目の科目は英語、内容は英文で十年前に出会ったメアリーとマイケルの再開について、空は先ほどの出来事について考える。


幼少期に出会い仲良くなり別れて再び会う、世界は意外と狭い、


それと同時に思い出したくない気持ちに触れた、十年前に大好きだった両親を失ってしまった夜の事を、内心思う


「...あの時りっくんや凛ちゃん。清一叔父さんがいなかったら今の僕もこんなに前向けてなかったんだろうな、今度改めてありがとうって伝えよう」


空にとって側にいてくれる人、かけがえのない存在。大切で大好きな心の拠り所、次は自分が九条奏にとってそうでありたいと強く望む、


そんな事を考えていた空の斜め前の席に座る雨霧八雲も旧友との思わぬ再開に考え事をしていた、


「奏、外見昔と全然ちっとも変わってない...けどなんだろ、よくわからない違和感。あの頃より元気が無いというか...空元気というか」


八雲は勘が鋭い、そして頭の回転が速く切り替えが上手い、


「うだうだ考えてても仕方ないし、昼休みに色々聞けばいいわね。」



そして時刻は十二時昼休み、陸人と奏がまたクラスにやってきた。


「やっと昼休みだ〜、空!説明してもらおうか〜」


「あー、えーっと連絡先は僕から聞いたんだ、ほら昨日りっくん部活だったじゃん?帰り偶然会ったからその時に」


「!?そんな...空、お前が連絡先すぐ聞くそんな奴だったなんて...変わっちまったよ!」


陸人が少々大袈裟に驚く、おそらく本気で言ってる訳ではないテイストで、それに対して奏が発言する


「大原くん。違うの!その時青街くんに色々あって助けてもらって、それがきっかけで連絡先を交換しただけで」


必死に説明する奏、そこで八雲が三人に向けて言葉を挟む


「それよりも、先ほど自己紹介が出来なかったので、改めてしたいのだけど」


「ああ、そういえばそうだったね。俺は三年の大原陸人、空の幼馴染だよ。君は確か雨霧...さんだよね」


「はい、二年の雨霧八雲です。先ほども言ったけど奏とは昔一緒に遊んでいた仲です、よろしくお願いします。大原さん」


「よろしくね〜、あと堅苦しいから敬語は無くていいよ!」


「は、はぁわかりました」お互いに軽い自己紹介が終わり空が言う


「とりあえず昼食べながら話ししよっか」


そう言うと、隣の欠席で空いてるとこに奏が座り、昼休み必ず弁当を持ってどこかに行く生徒の席に陸人が座る。



鞄から弁当を取り出した、それを聞いて皆弁当を出す。


陸人は二段弁当、八雲は普通のサイズの弁当、奏は空と同じ形状の弁当で中身も一緒、朝ごはんの後に昼も合わせて準備していた様だ。


奏が八雲の弁当を見て反応する


「うわー!八雲ちゃんのお弁当箱、可愛いデザインだね〜」


そこにはゆるい絵柄の犬型キャラクターが描かれていた


「これ、あまかワンってキャラクターで、天川出市のゆるキャラなの」


若干嬉しそうに語る八雲


「あまかワン知ってる!妹が好きで家にグッズたくさんあるんだよな〜」


陸人の反応に八雲が食いつく


「本当!是非どんなのがあるのか詳しく伺いたいのだけど!!」かなり食い気味で陸人が圧倒される。


「う、うん。妹に聞いてどんなのあるか聞いておくよ...」


その返答に八雲は自分の勢いを正し


「失礼、いえごめんなさい。いきなり取り乱してしまって」


「八雲ちゃんはあまかワンが大好きなんだね。」


「好きなのが凄く伝わってきたよ」


奏と空がフォローを入れる。そして弁当を開けて陸人が気を取り直し珍しげに声を上げる


「おっ、空今日は手作りなんだ!いつもパンやおにぎりだったのに」


「ああうん。今日から清一叔父さんが一週間仕事でいないから、家の事きっちりやってみようって張り切ってみたんだ」


「なるほどねぇ...じゃあ独りで寂しいだろうから今日学校終わったら久しぶりに泊まりに行こうかな!」


その言葉を聞いた瞬間空が固まる。


「.....いやいやいやいや、えっとほら、りっくん部活あるし夏に向けて頑張ってる時期じゃん!泊まりに来るなんてそんなの大会終わってからでいいじゃない」


かなりテンパった口調で理由を羅列する。


「今日部活無いし、それに練習きっちりやってるから大丈夫だよ、独りで寂しいだろ?」


「いや全然寂しくないし、むしろそれなら凛ちゃんが寂しい思いするじゃんか、りっくんとこのお母さん帰り遅いんでしょ」


またまた焦りながら羅列する。


「それなら凛誘って二人で行くよ!懐かしいなぁ、昔はよくお互い泊まってたよな〜」


回避できない流れが組み上がって行く、眉間にしわを寄せ必死に拒否する言い訳を考えていると着信が入る。


ポケットから取り出しバイブレーションで震える画面には九条奏の文字が、ちらっと視線を向けると奏がアイコンタクトを送って来る。


「ごめん。電話来てるからちょっと出て来るね!」


そう言うと奏は立ち上がり教室の外へ、続けて空も


「りっくんごめん。僕も着信してるからひとまず出て来る」


奏を追い教室の外へ、取り残された陸人と八雲。


「なんか怪しいわね。あの二人」


鋭く指摘する


「そう?同じタイミングで偶然かかってきただけじゃない?」


「偶然だとしたら視線が変だった、何かはわからないけど隠してる気がする」


「なるほど...じゃあ戻って来たら探り入れてみよっか!」ニヤリと笑う陸人だった。




教室外、空が奏に言う


「助かったよ九条さん...ほんとありがとう」


「ううん全然。むしろ私のせいでゴメンね。今日は自分家に帰るからさっきのお泊まりの話し青街くん気にせず決めて!」


健気な笑顔に空はすぐ言葉を返す


「そんな、それは駄目だよ!だって九条さんを一人には出来ない...」


「私なら大丈夫、昨日も今日の朝もたくさん元気貰ったから、だから断らないで楽しんでよお泊まり!」


奏の精一杯の気遣いを受け、しばらく考える空、そしてゆっくりと口を開く


「.....九条さん。あのさ、ちょっといきなりで辛いかもだけど、一緒にいる事を正直に話してもいい?、その上で泊まりに招いてもいいかな」


「...どこまで話すの?私は出来ればまだ受け止める為の時間が欲しくて、触れたくないよ青街くん」


「うん。わかってる。だから最低限で伝える。一緒にいる経緯だけ、駄目かな」


「...うん。そう...だね。それだったら...青街くんお願い」


「任せて!ちょこっとだけお名前お借りするね。」


黙って頷き待機する奏、先に空が教室に戻る。すると陸人が訊いてくる


「おかえり空、今日の弁当さ、どうして中身が九条さんのと似てるんだ?偶然?」


「りっくん。それについて説明させて欲しい」


真面目な返答に陸人と八雲は顔を見合わせる。



「実は...僕の叔父さんと九条さんのご両親が仕事の繋がりがあって親しいんだけど、出張九条さんのご両親もだったんだ。それでいない間叔父さんが何かあったら一人じゃ危ないからって理由で、今僕たち二人で生活してるんだ」


我ながら心が痛む嘘である。

だが、筋は通っているはず、疑わしい要素はないだろう、唯一あるとすれば両親二人共出張な所か、しばらく間があり八雲が口を開く


「って事はつまり二人で同居してるって事?」


続けて陸人

「空、お前それ...何で先言わなかったんだよ!いいなー!超羨ましいじゃんか!何その展開」


苦笑いしながら答える空

「一週間だけだけどね。」


八雲が取り乱す

「正当な理由とはいえ一週間も高校生の男女が二人きりで生活なんて、それは倫理的にどうなのかしら!?」


陸人もその発言に加勢する

「そうだそうだ!しかも二人共知り合って間もないのに過程すっ飛ばし過ぎだろ!間違いだらけだぞ色々」


「いやだから家に一人は危ないって理由があるし」


「問答無用だバカ空!!決めた、今日絶対家泊まるかんな!駄目だって言われても泊まるかんな!」


陸人が宣言したのを受け空がボソッと

「泊まるのは全然構わないよ、さっきは説明してなかったから頷かなかっただけだし」


「へっ、いいの?」


「うん。構わないよ、説明したから弁当の疑問も解決したでしょ?」


「まぁ確かに、そりゃ同じ具材になるよな」


そこに八雲が割って入る

「ちょっと待って!そしたら更に倫理的に駄目じゃない、三人でしかも女の子一人なんて!」


「それなら妹の凛を連れてくから四人になるよ」


「妹さんが行くかどうかを勝手に決めるのはどうなのかしら!?...とにかく奏に了承取らなきゃ駄目でしょ!」


その発言を受け空が教室外にいる奏に連絡する。すると奏が教室に戻って来た、


「長電話ごめんね〜」


と言いながら席に座ると陸人が奏に問いかける。


「九条さん。空から住んでる理由聞いたよ、妹と一緒に泊まりに行って大丈夫?」


奏はそれを聞きけろっと答える。


「私は全然大丈夫だよ、むしろ大原くんの妹さんがどんな子か興味あるかな」


それを聞き八雲が絶句する


「奏!本当にいいの?無理してない?」


「うん。無理なんてしてないよ、それに泊まるの青街くん家な訳だし私に聞かなくてもいいくらいなんじゃないかな」


「よっしゃ!それじゃ学校終わったら準備して凛と空ん家向かうわ」


そこに空が釘を刺す。


「うん。大丈夫ならいいんだけど、一応無理やり凛ちゃん連れてくるのは止めてねりっくん。」


「わかってるって!それに多分それはもう答え出てるんで問題ない」


陸人の謎の自信に首をかしげる空。そんなこんなでだいぶ時間が経ち、昼休みが終わろうとしていた、


「ヤバ!早く食わなきゃ」


陸人の発言に皆それぞれ箸を進める。そして終了のチャイムがなり、


「んじゃまた後でな空、雨霧さん。さらば!」


「青街くん。八雲ちゃん。またね!」


二人は自分たちの教室に帰って行った、八雲が深い溜息をつく


「はぁ...信じられない、まさか許可するなんて」


「許可って...んな大袈裟な」


「大袈裟なんかじゃないわよ、高校生よ?言ってしまえばまだまだ子供なのに、有り得ない」


「そんなに変かなぁ」


「変って言うより危険」


「危険って...雨霧さんの目にはどんな風に写っているのさ」


「狼かしら、特に大原さんが」


酷い言われようである


「えぇぇ、それは中々ショックかも」


そこに教師がやってきて「よーし授業始めるぞー」生徒たちが席に座る。五時間目の授業が始まった。



「好きなのは卵焼きかなぁ、甘くないの!青街くんは?」


「甘くない卵焼きわかる。出汁とか入った卵焼き美味しいよね〜。僕はトマトが好きだよ」


「トマトなんだ!トマトって色んな料理に使われるよね。ミネストローネとか凄く好き」


「そうそう!トマトベースの料理ってとても多いから知れば知るほど奥が深くて」


「うんうん。今度おすすめのトマト料理教えてね!青街くんは普段休みの日とか家でどんな風に過ごしてるの?」


「休みの日?そうだね。絵を描いたりとか料理したりとか、あと屋上で陽に当たったりとか」


「絵や料理も気になるけど、陽に当たるってなんだか植物の光合成みたいだね」にっこりと奏が微笑む


「そう言われてみれば確かにそうかも、でも陽に当たってると凄く気分が落ち着くんだ」


「そうなんだ、じゃあ天気の良い日に真似してみようかな」


「是非是非、快晴の日がおすすめだよ」




そんなお互いの知らなかった部分の話をしつつ歩く、学校に到着しそれぞれのクラスへ、


椅子に座りそこで空は重大な事に気付きすぐさまスマホを開いて奏に連絡する。


「九条さん!ごめん伝え忘れた、授業のノート取るのとか大丈夫?もし駄目そうだったら僕は力になれないけど、頼りになるりっくんに話しとくから!」


文を打ち込み即送信。そしてすぐに陸人にも連絡する。


「りっくんエマージェンシー!とりあえず理由は聞かず今日の授業きっちりノート取って、訳は後で話すから!!」


授業が始まる前に送信せねば、...すると送った直後に返信が二件


「心配してくれてありがとう、私何故か文字だけは左右どっちも書けるから大丈夫!、それに大原くん優しくて今までの授業内容のノート見せてくれてるの!」


まず率直に器用だなぁと感じ、陸人は好感度メーターに抜かりないなぁと


「緊急事態の理由がわからんが、サーイエッサー!どっちみちノートは取ってるから平常運転だわ、ってかいつの間に九条さんの連絡先知ったんだよ空!後でそっちを説明求むぞ!」


まず平常運転な陸人は過去の経験から当てにならない時が偶にある。


そしてまぁそうなるよねと、説明責任を求める政治家並みに根掘り葉掘り聞かれるのが容易に想像出来る。


とりあえず最悪の事態は免れたので、深く一息ついていると、


「おはよう」


声のする方を振り向く、そこには雨霧八雲が立っていた。


「おはよう雨霧さん」


これまでお互い挨拶など無かった為いきなりの出来事に同様する空。雨霧は続けて喋る


「あなたの親戚に田島清一郎さんと言うギタリストの方がいらっしゃると思うんだけど、ご存知?」


「清一叔父さんなら知ってるし、むしろ一緒に住んでいるよ」


「本当!?どうしても直接お話聞かせて欲しいんだけど、話取り持ってくれないかしら?」「?、よくわかんないけど、少なくとも今は無理だよ」食い気味に


「どうして!?」


「今日から一週間仕事で出張だから」


「な!?...なるほどね」


「どうしても聞きたいなら電話出来るけど」


「いえいいわ、直接聞かなければ駄目だから、一週間後にお会いしたいと話してくれないかしら?」


「うん。わかった、でも叔父さんの事どうして雨霧さんが知ってるの?」


「それは本人に聞けばわかる。私の名前では無く父の名前を出せば、必ず何らかの反応するはず、」


「雨霧さんのお父さん...」


「父の名は雨霧音也、とにかく伝えてみて、私は真相が知りたいの」


「わ、わかった」


「それじゃまた」言い終わると、斜め前自分の席に座る。


「叔父さんの過去...気になる」




同じタイミングで始業チャイムがなり一時間目が始まる。科目は世界史だった、教養に関する唐突な教師のクエスチョンに相変わらずの才色兼備振りを発揮する雨霧八雲。


彼女は何者なのか、空の頭はそればかり考えていた。一時間目が終わり、次の授業に使う教材の準備をしていると、聞き馴染みのある声が耳に入ってくる。



「空ー!言い訳を聞かせてもらおうか〜」


二年の教室に三年が来る。微妙にクラスの空気が変化、しかも予想外だったのは良く見ると陸人の後ろに九条さんがいたこと、驚愕である。


「昼休みじゃなくて今来るとは...ましてや九条さんと一緒だなんて」


「呼んだら来てくれた」


「呼ばれたから付いて来ちゃった」


「そんなあっさりと...」


「だって断る理由が無かったし」


三年の教室に二年が入るのも中々だが、その逆はクラスメートに少し緊張が走る様でざわつく、中でも雨霧八雲はとても驚いた表情をしていた。


「えっ...まさか、そんな、奏?奏だよね!?」


不意に出た雨霧八雲の今までとは違うリアクション。その反応に空と陸人は疑問符を浮かべていた、だが奏はびっくりした様子で言葉をかける


「...嘘、もしかして八雲ちゃんなの!?」


まさかの顔見知り


「二人知り合いなの?」空の問いに八雲が返す


「小学生の時に登校班が同じなのがきっかけで、よく一緒に遊んでたの...奏あの時と顔立ち変わってないからすぐわかった」


「懐かしいな...あの後八雲ちゃんが転校しちゃって、それ以来になっちゃったんだよね。」


思い出話が繰り広げられる中、陸人が空に小声で聞く


「こちらの美人さんはどなたなんだ、初対面だからさっぱりわからんのだが」


続けて小声で


「ああ、えっと、この方は雨霧八雲さん。クラスメートだよ」


「ほうほう、空〜こんな子いたなら紹介してくれよ」


「いや僕もちゃんと話したの昨日だし、それにりっくん確か年下興味無いじゃない」


「それとこれとは別!おほん。...えっと雨」


そこまで言いかけたタイミングで予鈴が鳴る。


「タイミング悪!しゃーない続きは昼休みに詳しく話そう」


そう言うと陸人は奏に声かけ急いで自分たちのクラスに戻っていった、


「...タイミング悪いわね。」


「仕方ないよ、昼休みにまた話しするからその時続きすればいいんじゃない?」


「そうね。わかったわ」


二時間目の科目は英語、内容は英文で十年前に出会ったメアリーとマイケルの再開について、空は先ほどの出来事について考える。


幼少期に出会い仲良くなり別れて再び会う、世界は意外と狭い、


それと同時に思い出したくない気持ちに触れた、十年前に大好きだった両親を失ってしまった夜の事を、内心思う


「...あの時りっくんや凛ちゃん。清一叔父さんがいなかったら今の僕もこんなに前向けてなかったんだろうな、今度改めてありがとうって伝えよう」


空にとって側にいてくれる人、かけがえのない存在。大切で大好きな心の拠り所、次は自分が九条奏にとってそうでありたいと強く望む、


そんな事を考えていた空の斜め前の席に座る雨霧八雲も旧友との思わぬ再開に考え事をしていた、


「奏、外見昔と全然ちっとも変わってない...けどなんだろ、よくわからない違和感。あの頃より元気が無いというか...空元気というか」


八雲は勘が鋭い、そして頭の回転が速く切り替えが上手い、


「うだうだ考えてても仕方ないし、昼休みに色々聞けばいいわね。」



そして時刻は十二時昼休み、陸人と奏がまたクラスにやってきた。


「やっと昼休みだ〜、空!説明してもらおうか〜」


「あー、えーっと連絡先は僕から聞いたんだ、ほら昨日りっくん部活だったじゃん?帰り偶然会ったからその時に」


「!?そんな...空、お前が連絡先すぐ聞くそんな奴だったなんて...変わっちまったよ!」


陸人が少々大袈裟に驚く、おそらく本気で言ってる訳ではないテイストで、それに対して奏が発言する


「大原くん。違うの!その時青街くんに色々あって助けてもらって、それがきっかけで連絡先を交換しただけで」


必死に説明する奏、そこで八雲が三人に向けて言葉を挟む


「それよりも、先ほど自己紹介が出来なかったので、改めてしたいのだけど」


「ああ、そういえばそうだったね。俺は三年の大原陸人、空の幼馴染だよ。君は確か雨霧...さんだよね」


「はい、二年の雨霧八雲です。先ほども言ったけど奏とは昔一緒に遊んでいた仲です、よろしくお願いします。大原さん」


「よろしくね〜、あと堅苦しいから敬語は無くていいよ!」


「は、はぁわかりました」お互いに軽い自己紹介が終わり空が言う


「とりあえず昼食べながら話ししよっか」


そう言うと、隣の欠席で空いてるとこに奏が座り、昼休み必ず弁当を持ってどこかに行く生徒の席に陸人が座る。



鞄から弁当を取り出した、それを聞いて皆弁当を出す。


陸人は二段弁当、八雲は普通のサイズの弁当、奏は空と同じ形状の弁当で中身も一緒、朝ごはんの後に昼も合わせて準備していた様だ。


奏が八雲の弁当を見て反応する


「うわー!八雲ちゃんのお弁当箱、可愛いデザインだね〜」


そこにはゆるい絵柄の犬型キャラクターが描かれていた


「これ、あまかワンってキャラクターで、天川出市のゆるキャラなの」


若干嬉しそうに語る八雲


「あまかワン知ってる!妹が好きで家にグッズたくさんあるんだよな〜」


陸人の反応に八雲が食いつく


「本当!是非どんなのがあるのか詳しく伺いたいのだけど!!」かなり食い気味で陸人が圧倒される。


「う、うん。妹に聞いてどんなのあるか聞いておくよ...」


その返答に八雲は自分の勢いを正し


「失礼、いえごめんなさい。いきなり取り乱してしまって」


「八雲ちゃんはあまかワンが大好きなんだね。」


「好きなのが凄く伝わってきたよ」


奏と空がフォローを入れる。そして弁当を開けて陸人が気を取り直し珍しげに声を上げる


「おっ、空今日は手作りなんだ!いつもパンやおにぎりだったのに」


「ああうん。今日から清一叔父さんが一週間仕事でいないから、家の事きっちりやってみようって張り切ってみたんだ」


「なるほどねぇ...じゃあ独りで寂しいだろうから今日学校終わったら久しぶりに泊まりに行こうかな!」


その言葉を聞いた瞬間空が固まる。


「.....いやいやいやいや、えっとほら、りっくん部活あるし夏に向けて頑張ってる時期じゃん!泊まりに来るなんてそんなの大会終わってからでいいじゃない」


かなりテンパった口調で理由を羅列する。


「今日部活無いし、それに練習きっちりやってるから大丈夫だよ、独りで寂しいだろ?」


「いや全然寂しくないし、むしろそれなら凛ちゃんが寂しい思いするじゃんか、りっくんとこのお母さん帰り遅いんでしょ」


またまた焦りながら羅列する。


「それなら凛誘って二人で行くよ!懐かしいなぁ、昔はよくお互い泊まってたよな〜」


回避できない流れが組み上がって行く、眉間にしわを寄せ必死に拒否する言い訳を考えていると着信が入る。


ポケットから取り出しバイブレーションで震える画面には九条奏の文字が、ちらっと視線を向けると奏がアイコンタクトを送って来る。


「ごめん。電話来てるからちょっと出て来るね!」


そう言うと奏は立ち上がり教室の外へ、続けて空も


「りっくんごめん。僕も着信してるからひとまず出て来る」


奏を追い教室の外へ、取り残された陸人と八雲。


「なんか怪しいわね。あの二人」


鋭く指摘する


「そう?同じタイミングで偶然かかってきただけじゃない?」


「偶然だとしたら視線が変だった、何かはわからないけど隠してる気がする」


「なるほど...じゃあ戻って来たら探り入れてみよっか!」ニヤリと笑う陸人だった。




教室外、空が奏に言う


「助かったよ九条さん...ほんとありがとう」


「ううん全然。むしろ私のせいでゴメンね。今日は自分家に帰るからさっきのお泊まりの話し青街くん気にせず決めて!」


健気な笑顔に空はすぐ言葉を返す


「そんな、それは駄目だよ!だって九条さんを一人には出来ない...」


「私なら大丈夫、昨日も今日の朝もたくさん元気貰ったから、だから断らないで楽しんでよお泊まり!」


奏の精一杯の気遣いを受け、しばらく考える空、そしてゆっくりと口を開く


「.....九条さん。あのさ、ちょっといきなりで辛いかもだけど、一緒にいる事を正直に話してもいい?、その上で泊まりに招いてもいいかな」


「...どこまで話すの?私は出来ればまだ受け止める為の時間が欲しくて、触れたくないよ青街くん」


「うん。わかってる。だから最低限で伝える。一緒にいる経緯だけ、駄目かな」


「...うん。そう...だね。それだったら...青街くんお願い」


「任せて!ちょこっとだけお名前お借りするね。」


黙って頷き待機する奏、先に空が教室に戻る。すると陸人が訊いてくる


「おかえり空、今日の弁当さ、どうして中身が九条さんのと似てるんだ?偶然?」


「りっくん。それについて説明させて欲しい」


真面目な返答に陸人と八雲は顔を見合わせる。



「実は...僕の叔父さんと九条さんのご両親が仕事の繋がりがあって親しいんだけど、出張九条さんのご両親もだったんだ。それでいない間叔父さんが何かあったら一人じゃ危ないからって理由で、今僕たち二人で生活してるんだ」


我ながら心が痛む嘘である。

だが、筋は通っているはず、疑わしい要素はないだろう、唯一あるとすれば両親二人共出張な所か、しばらく間があり八雲が口を開く


「って事はつまり二人で同居してるって事?」


続けて陸人

「空、お前それ...何で先言わなかったんだよ!いいなー!超羨ましいじゃんか!何その展開」


苦笑いしながら答える空

「一週間だけだけどね。」


八雲が取り乱す

「正当な理由とはいえ一週間も高校生の男女が二人きりで生活なんて、それは倫理的にどうなのかしら!?」


陸人もその発言に加勢する

「そうだそうだ!しかも二人共知り合って間もないのに過程すっ飛ばし過ぎだろ!間違いだらけだぞ色々」


「いやだから家に一人は危ないって理由があるし」


「問答無用だバカ空!!決めた、今日絶対家泊まるかんな!駄目だって言われても泊まるかんな!」


陸人が宣言したのを受け空がボソッと

「泊まるのは全然構わないよ、さっきは説明してなかったから頷かなかっただけだし」


「へっ、いいの?」


「うん。構わないよ、説明したから弁当の疑問も解決したでしょ?」


「まぁ確かに、そりゃ同じ具材になるよな」


そこに八雲が割って入る

「ちょっと待って!そしたら更に倫理的に駄目じゃない、三人でしかも女の子一人なんて!」


「それなら妹の凛を連れてくから四人になるよ」


「妹さんが行くかどうかを勝手に決めるのはどうなのかしら!?...とにかく奏に了承取らなきゃ駄目でしょ!」


その発言を受け空が教室外にいる奏に連絡する。すると奏が教室に戻って来た、


「長電話ごめんね〜」


と言いながら席に座ると陸人が奏に問いかける。


「九条さん。空から住んでる理由聞いたよ、妹と一緒に泊まりに行って大丈夫?」


奏はそれを聞きけろっと答える。


「私は全然大丈夫だよ、むしろ大原くんの妹さんがどんな子か興味あるかな」


それを聞き八雲が絶句する


「奏!本当にいいの?無理してない?」


「うん。無理なんてしてないよ、それに泊まるの青街くん家な訳だし私に聞かなくてもいいくらいなんじゃないかな」


「よっしゃ!それじゃ学校終わったら準備して凛と空ん家向かうわ」


そこに空が釘を刺す。


「うん。大丈夫ならいいんだけど、一応無理やり凛ちゃん連れてくるのは止めてねりっくん。」


「わかってるって!それに多分それはもう答え出てるんで問題ない」


陸人の謎の自信に首をかしげる空。そんなこんなでだいぶ時間が経ち、昼休みが終わろうとしていた、


「ヤバ!早く食わなきゃ」


陸人の発言に皆それぞれ箸を進める。そして終了のチャイムがなり、


「んじゃまた後でな空、雨霧さん。さらば!」


「青街くん。八雲ちゃん。またね!」


二人は自分たちの教室に帰って行った、八雲が深い溜息をつく


「はぁ...信じられない、まさか許可するなんて」


「許可って...んな大袈裟な」


「大袈裟なんかじゃないわよ、高校生よ?言ってしまえばまだまだ子供なのに、有り得ない」


「そんなに変かなぁ」


「変って言うより危険」


「危険って...雨霧さんの目にはどんな風に写っているのさ」


「狼かしら、特に大原さんが」


酷い言われようである


「えぇぇ、それは中々ショックかも」


そこに教師がやってきて「よーし授業始めるぞー」生徒たちが席に座る。五時間目の授業が始まった。

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