1月
煩悩の犬は追えども去らず
「いよっ! ロイド君バンちゃんあけおめ!」
「おめでとうございます」
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
今日も今日とて愉快なメンツで集まっている。地元に帰って来てからはこんなことばっかりやっていて、シンとバンデンとは毎日会ってんじゃないかって気さえする。さて、今日は初詣だ。
一応家族で初詣にも行ったんだけど、友達とも改めて行っておく。別に1回しか行っちゃいけないっていう決まりもないだろう。神社や神様ごとに得意分野だって違うワケだし、と心の中で言い訳を。
山羽市内にも結構大きな神社があって、当時の技術を結集して作られた建築様相なんだそうだ。建築の分野は詳しくないけど、好きな人にはたまらないのだろう。たまにはこういうところに来るのもいいかなあと。
「ひー、階段つれー」
「俺らインドア派だし100段でもしんどいねー」
「でも最初は1000段上るかっつってただろ」
「無謀だった。身の丈に合ってねー。あっ、おみくじ! ロイド君バンちゃんおみくじ!」
「逸るなシン。おみくじはお参り済んでからだろ」
「うん、先にお参りしようよ」
100段ある神社の階段を上って既に全員へとへと。インドア派と言えども大学生男子なのにここまで体力がなくてよろしい物か。とりあえず、健康や無病息災はお願いしておかなくてはならないだろう。
って言うか人畜無害な文化系の俺とバンデンはともかく、シンなんかインドアはインドアでも大学祭実行委員なんか体力勝負みたいなところがあるんだから階段くらい余裕で上れるかと思ったら、今はオフシーズンとのこと。何じゃそりゃ。
「ロイド君バンちゃん、俺たちは大学生であって、学生の本分と言えば」
「部活」
「それはロイド君だろ! そもそも俺部活やってねーし」
「じゃあ、バイトか」
「わざとやってんだろ。勉強だ勉強!」
「いや、シンと勉強っていう単語は正直結びつかない」
「ごめんしんちゃん、俺もそれは否定できないや」
「とにかく、学問成就! 学問の神様がいるっつーならその人のところに最初に行くべきだ!」
この神社にはいくつかの建物があって、そこにはそれぞれ違う神様がいるとかいないとか。学問の神様もいるらしいということで、卒業がヤバいらしいシンは真っ先にそこへ行きたいのだと熱弁。
確かに、学生の本分は一応勉学であるから、俺とバンデンがそれを断る理由もない。バンデンはともかく俺も学業の方はちょっと不安が拭えない面があると言えばある。現時点で安産祈願と子宝の神様には用事がないワケだし。
「ロイド君、お辞儀何回?」
「二礼二拍手一礼」
「ぺこーっ」
それぞれお賽銭をカランと箱に入れ、参拝。3人横並びでお参りを。
「はー、とりあえずこれで学業はオッケー! 目的は達成したしおみくじやろうぜ!」
「俺まだ無病息災とか商売繁盛とか、人との縁に恵まれますようにとか、その他諸々まだお願いしてないんだけど」
「強欲だなロイド君! お賽銭いくら入れたんだよ」
「50円」
「費用対効果!」
「あ、俺もみんな仲良く過ごせますようにーってお願いしたいな。学問のことしかお願いしてないから」
「バンちゃんは慎ましい! 見習えロイド君」
「単位に対して強欲なお前に言われたくない」
おみくじをやりたいとシンがうるさいので、俺が用事のある技芸上達知恵の神様、それからバンデンが用事のある人の幸せを招く神様にお参りをしたらさっそくおみくじを。
「うおーっ! 学問! 努力せよ!」
「バンデン、何て書いてある」
「貸したお金は返ってこないから貸さない方がいい、みたいなことかな。うーん、心当たりが」
「ロイド君は?」
「待ち人がもう近くにいて、ひと山越えればより深い結びつきになる的なことと、恋愛で何か動きがあるとかって。恋愛は別にいいけど待ち人って誰だろ」
おみくじはどうあれ、今年をどう過ごすのかが重要だ。引いたおみくじがどうだったのか、それが分かるのは来年の今頃だろう。とりあえず、目先の山は期末テスト。それが終われば就活が始まる。人生をどう切り開くのかが問われる1年になりそうだ。
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