やるならとことん果たし合え

 代替わりを終え大学祭の会計関係の仕事も終えたMBCCは、その実権が完全に2年生に移った。俺と高ピーもそれぞれの役職を解かれ、一般のサークルメンバーとして秋学期が終わるまでは顔を出していくことになる。

 みんなが集まっていつものようにサークル活動が始まって、最初にやるのは活動報告や連絡。定例会も新しいメンバーを連れていかなきゃいけないだとか、今後の活動についてがメインになるのかな。


「他に何か連絡がある人いますか」

「じゃ、ここで俺から」


 高ピーが手を上げて、連絡が始まる。あれっ、でも学祭の会計関係の連絡はこないだ終わってるし、何の連絡だろう。対策委員の話も高ピーには去年の事だし。何か連絡忘れがあったっけか。


「えー、今度向島と合同で交流会と銘打った飲み会をやることになりました。可能な限り参加してくれ」

「あ、忘れてた!」

「伊東、お前が忘れてんなよ。言い出しっぺみたいなモンだろ」

「ゴメンゴメン」

「でだ、飲みをやった後、向島で缶蹴り大会な。飲みの参加費は3000円」


 あー、そうだそうだ、交流会やるんだった。すっかり忘れてた。

 その昔、MBCCと向島MMPは合同で練習会を開くなどして技術を磨き、交流を深めていたらしい。最近ではご無沙汰だけど、両校の交流を深めておいて損はないということで飲み会でもやろうかという話になっていた。

 で、元々それを話してたのが俺と圭斗だったんだよな、定例会でさ。で、高ピーとなっちさんもやろうやろうって話になったから日程を組んでたんだけど、学祭のバタバタで本当にすっかり忘れてたっていうね。


「でも、缶蹴りって。マジで缶蹴りすか」

「マジで缶蹴りだ。何だL、怖気づいたか? やるからにはぶっ潰すぞ」

「大学生にもなって缶蹴りをやるとは思わなかったんすよ」

「向島じゃ結構な頻度でやってるそうだからな。連中のホームに乗り込んでどう戦うかだな」


 向島サイドでは、果たして俺たちMBCC勢が缶蹴りに乗って来てくれるかを心配していたそうだけど、全然問題じゃなかったですね。高ピーはやるからには勝つって静かに気合入ってるし。

 戦力図としては、運動神経とかは多分こっちの方が上。走るの速い子多いし。でも向島のホームだし何よりあっちには経験がある。五分ってトコかな。


「で、飲みの方は鍋な。飲んでからの缶蹴りだし、向島は山だ。防寒対策とかは各自でしっかりやってくれ。くれぐれも怪我はしないように」

「高ピー先輩、夜って言うか、宿はどうするんですか? 終電終わって帰れなくなったら」

「圭斗の部屋に行くらしい。向島2年は向島のPC自習室に籠れるとかで」

「圭斗先輩の部屋ってこの人数が入れるんですか? 7~8人いますよね?」

「ウチはチビばっかだから大丈夫じゃないかって結論に達した」

「ですよねー」


 チビばっかだから6畳くらいの圭斗の部屋でも入るんじゃないかっていうのは多少強引にしても、まあ、最悪俺は部屋じゃなくて台所とかでも雑魚寝出来るし何とでもなるかな。

 ただ、女の子も圭斗の部屋に突っ込むのかと。さすがにそれはちょっとなあと思う。男ばっかりの狭いところに女の子を突っ込むのはあまりよろしくないような気が。


「高ピー、さすがに女の子はなっちさんにお願いできないかな」

「あー、そうだな。つか圭斗の部屋が6畳なら菜月の部屋の方が広いしな」

「あ、そうなんだ」

「アイツの部屋って8畳だろ。ただ、アイツは頑なにベッドを客人に使わせないことで悪名高いんだ」

「ベッドのことを高ピーが言っちゃいけないんじゃないかなあ。特大ブーメランだよ」

「俺は部屋にすら入れねえから問題ねえ」

「ええー……」


 高ピーがなっちさんの部屋のことを知り尽くしている(?)のも何気にツッコミどころなんだけど、ツッコんじゃいけないところでもあるから際どいんだよなあ扱いが。


「とにかく、やるからには徹底的に潰すぞ」

「えーと、それはどっち? お酒? 缶蹴り?」

「缶蹴りだ。酒では潰すな。連中はめんどくせえ」

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