We long for love life!

「今日のピー子ちゃん動画ですッ!」


 さあ、今日も始まるぞ。そう身構えた瞬間のことだった。何かに気付いたらしいヒロが、違う話題を振る。ピー子ちゃん動画が始まると長い。ここにいる全員が心でヒロに賛辞を送ったことだろう。


「奈々の待ち受け、今一瞬しか見えんかったけどそれ相合い傘?」

「あッ、そうなんですーッ」

「相合い傘を待ち受けにするなんて、奈々は可愛いね」

「そんなー圭斗先輩照れちゃいますーきゃっきゃっ」

「――といういつもの件を済ませたところで、相合い傘だなんてまた大胆な」

「あッ、一応恋愛のお守りになるかなと思って設定はしてるんですけど、厳密にはうちのじゃないんですよ」


 そう言って奈々はその待ち受け画像を見せてくれた。……しかしまあ、これは。まるでこれを使って火を起こしてくれと言わんばかりのネタじゃないか。姉妹仲がいいのは知っているけど、まさか待ち受け画像がお姉さんの相合い傘だとは。


「ミーちゃんがこないだロケに行ったところに恋愛成就の相合い傘の絵馬っていうのがあったみたくてーッ!」

「それで、“みすず”と“ゆうへい”を傘の中に入れてあるんだね」

「はいッ! そうみたいっす! 夏になると雄平さんはタンクトップの上に白衣を着るので外科的でカッコ良すぎて死んじゃうって今から楽しみにしてるみたいですッ!」

「ん、それは確かにカッコいいね。僕の貧相な白衣とはまた違って見えるだろうね」

「圭斗先輩の白衣ダッテー!? そんなの、格好良すぎて死んでしまうじゃないか! ああ、罪深い……圭斗先輩の白衣だなんてそんな贅沢な……」

「やァー、野坂も通常運転スわァー」

「各白衣を紗希ちゃんに判定してもらおう」


 越谷さんに女性の影があることをムラマリさんに報告したらそれはもう悪いお顔をしていらっしゃったので、今回の件にしても恰好のネタになるだろう。すでに越谷さんを召集して尋問大会を開催する予定が組まれている。僕も参加の予定だ。

 奈々が言うには、水鈴さんのロケの様子はこの相合い傘も込み込みで後日情報番組で放送されるそうだ。もちろんその放送スケジュールももらったので、しっかりとムラマリさんに報告しておこう。


「あと、雄平さん最近バイト先の後輩の子の写真のモデルになってるそうなんですッ! 肉体美ですっごいカッコいいんです!」

「へえ、興味深いね。僕は肉体美とは無縁だから、憧れでしかないけど」

「ミーちゃんがその子からこっそり1枚もらったっていう画像をうちももらったんですけど、これですッ」


 奈々が見せてくれたその写真は、紛うことなき肉体美。カメラのアングルの関係か、限りなくヌードにも見えるそれだ。あくまでも芸術だから厭らしくないのだ、とは言うけれども、僕が水鈴さんの立場ならこれで興奮してしまうだろう。

 ピー子ちゃん動画の話から一転、越谷さん話もそこそこ長くなっている。けれども越谷さんと水鈴さんの話はとても興味深いし、僕には生きた情報を収集するという役割がある。いやあ、自分が標的でないととても楽しいね!


「菜月、ところで菜月も細いよりは筋肉のついた体つきの方が好みだったように思うけど、菜月的に越谷さんはどうかな?」

「タンクトップかノースリーブの隙間からちらりと見えるとうまーなヤツ。あからさま過ぎない方が好きだ。大石の恥じらいはいいぞ。プールと銭湯以外で脱ぐのは恥ずかしいからNGらしい」

「菜月、普通じゃないかな?」

「それもそうか」

「しかし、菜月は大石君が結構ハマってるみたいだね。恋愛対象なのかな?」

「いや、マスコット的な感じだ」

「わかるかもしれない。奈々、ところでその画像を僕にももらえるかな? 憧れとして心に置いておきたいんだ」

「そういうことならわかりましたッ!」


 恋愛成就の相合い傘にはMMPでも何人かお世話になりたそうな男がいるだろうし、なかなか興味深そうな顔をしているね。僕? 僕は愛の伝道師と呼ばれた男だよ。神に頼らずとも、狙った女性は自力で落とすのがいいんじゃないか。

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