cosmic zombie candy
「うーん、班編成はどうにかならなかったのかなあ」
そう嘆くイタリア系の長身はMMPの3年アナ、三井裕。
よく言えばポジティブ、悪く言えば空気の読めない自己中心的なナルシストで自分が一番で他人を自分を引き立てるアクセサリーのように思い非常に惚れっぽくその結果人様に迷惑をかけまくったりして周りが見えないなどなど数え上げればキリがない。
「班編成はいつだって戦争だ。定例会の考え得る最良の編成がこうだったんだから文句言うな」
「うーん、でもさあ菜月、ファンフェスってダブルトークでしょ? ダブルをやるからにはそれ相応の実力がなきゃ僕に殺されちゃうじゃない。ヒビキってどうなの。それに青女ってことは下品なんだよ。もっと清楚な子が良かった」
「今のヒビキに言っとくからな」
「違うんだよ菜月! 決してヒビキが面の皮が厚いとかチャラいとかそんなことは言ってない!」
「はーっ……一生女に夢見てろ」
ご覧の通り、三井は放送に関わるとかなりイタイ男だ。放送に関わらなければ、叩けば叩くだけご飯を奢ってくれたりするし、出なかった授業のプリントなんかを勝手に持ってきてくれたりと便利な存在ではある。
ただ、同じ班でやる子をこれでもかとコケにした発言には呆れるしかない。三井の要望を聞いていたらいつまで経っても班編成が終わらないし、そもそも三井の欲求を満たすためにファンフェスをやるワケでもない。
ファンフェスというのは5月に花栄であるイベントで、インターフェイスではそこにDJブースを出すことになっている。他校の人と3~4人の班を組んで各班1時間の番組をやるんだ。
「じゃあ、具体的に清楚な子ってどんなだ?」
「えっと、まず性格はおっとりしてるといいな」
「インターフェイスなら紗希ちゃんとか?」
「あの子は力が強いからダメ。僕の出る幕がなくなっちゃう」
「じゃあ、星大の加奈とかか」
「あの子はダメ。清楚とは程遠いよ。夜な夜な男を食ってるね」
「彼氏持ちなのが気に入らないだけだろ。あと、おっとりと言えば青女の沙都子とか」
「ああ、あの子は男の臭いもしないしいいんじゃない? 家庭的だし一歩引いて僕を立てることも出来ると思うよ。だけど地味すぎるし青女って言うのがネックだよね」
「お前は青女にどんな恨みがあるんだ」
こうまで女子を上から目線で品評する男というのも引くぞ。品評会と言えば、新歓の季節にビラを配りながらうちとノサカもあの子はかわいいとかあの男はイケメンだみたいなことをわーわー言ってたけど、さすがにここまではしていない。
三井の惚れっぽさは今に始まったことじゃない。目があったり優しくされただけで好きになって、告って爆死して。それで逆恨みや負け惜しみを繰り返すこと数知れず。対IFに限っても7連敗中だから、IFに関係ない人も含めればもっとになるだろう。
三井の勘違い発言に口を挟むのはまるで組み手をやっている気分だ。ただ、どれだけ切り倒してもゾンビのように蘇ってくる。切っても切っても同じ顔。金太郎飴か。三井の顔をした飴だなんて絶対不味い。
「結局のところ、アナウンサーにしてもミキサーにしても僕が育ててあげないといけないんだよね。今のインターフェイスのレベルなんて高が知れてるし。いやー、求められるのも辛いなあ」
ノサカのヤツを借りることにしよう。意味が分からない。
三井の思考回路が全くもって意味不明だし、宇宙ばりに無限に広がってるし、うちに限らず他者からの忠告だって全部ブラックホールで吸ってるんじゃないかって。もちろん、ここではゴミ箱という意味だ。
「あっ、星ヶ丘の子たちも出てくるんじゃん。きっと観光気分なんだろうなあ。僕がインターフェイスの厳しさを教えてあげないと」
「あんま余計なことはしない方がいいぞ」
「えっ、どうして? 少しでもプロに近付けるように、レベルは高い方がいいじゃない」
ナチュラルにそういうことを言うし、悪意や悪気がちっともないところがめんどくさいんだ。自分に都合の悪いことが起きると反省もせずに人の所為にして負け惜しむ男が何を出来るっていうんだ。
「はいはい、MMPの名に泥を塗らないように精々頑張って」
「ありがとう! 頑張るよ!」
いや、変な方向に頑張ると泥でべったべたになるんだけどな。
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