癒しの衝撃
「おはよーございまー、ぁす!?」
「やァー、はよーごぜーやース」
「わ、わーっ!」
「んー?」
今日はB番に入る日だー、と考えながら情報センターに出勤すると、すると…!? 女の人が着替えをしていて、隠す様子もなく堂々と、って言うか何が何やら。何て言うか、ただの着替えじゃなくて、廊下からも見えてるよね? えっ? ええーっ!?
「ウワサの新入りスか? 自分は2年の土田冴スわ」
「あ、えっと、理工建築1年の川北碧ですー、ってそうじゃなくてっ! 服っ、ムネっ」
「ん? 何がおかしーンすかね」
「な、何がって……」
両手で顔を覆って、露わになっている上半身を見ないように。とは言え顔を見ずに挨拶をするのも失礼だから、指の隙間からチラリと……わーっ、ダメだ見えるーっ! 顔があっつい。何だろ、恥ずかしいなあ!
別に、女の人の胸とか裸を見たことがないわけじゃないし、触ったこともあるしするコトだって、うん。でも時と状況、それとこういう状況に鉢合わせた相手との関係も重要な要素じゃないですかーっ!
て言うかすっごいおっきい。G、H、もっとある? それにハリがすごい。……って違う違う! 着替え中なんだから早く着替えてもらって、って言うか俺のスタッフジャンパー! ロッカーの中! 俺のロッカーは鉄壁の防御に阻まれてる! ムリだー!
「おい、土田! さっさと着替えんか! 外から丸見えではないか!」
「やァー、サーセン。新入りとの挨拶を優先してャーしたわ」
その怒鳴り声に、冴さんはいそいそと着替え始めた。何て言うか、俺の中で救世主が現れたとか、そんな感じ。一気に救われたって言うか。
「は、林原さぁーん! 怖かったですー! わーってなって、ひゃーって」
「ったく。土田の着替えに出くわしても怯むなと言っただろう」
「ううー、初回じゃムリですー!」
「今は利用者もないから、自習室に行くぞ。ジャンパーを取ってこい」
「はいー」
スタッフジャンパーを羽織って自習室へ。今は利用者のない、静かな空間だ。ここで始まるのはB番研修。自習室の中ではどんな仕事があって、どう進めていけばいいのかというようなことを教えてもらえる予定だ。
ただ、B番研修の前にロックのかかる自習室だからこそ出来る男の話を、ということらしい。誰かが来れば、ロックが解除される音がピーッと鳴るから話はそこでやめられるということで。
「まあ、見ての通り土田は露出に抵抗がなくてな」
「でもいきなりはびっくりしますー」
「肌が弱いらしく、夏などは頻繁にベビーパウダーを塗り直したり着替えたりとさらにああいう機会が増える」
「さらに増えるんですかー!?」
「挙げ句春山さんは土田の乳房を揉み倒すのを癒しと称していてだな、オレの尻をも狙う痴女……いや、性的に倒錯した変態だ。お前もどこを狙われるかわからん。自分の身は自分で守れ」
「うう、怖いですー」
「感度を徹底的に落とせ。慣れろ。物理的接触に関しては性感を封じ勃起さえさせなければ問題なかろう」
「そ、そういう次元の話になるんですか…!?」
「春山さんは隙あらば狙ってくる。用心しろ」
――と、ここまで話が行ったところでピーッと音がする。ウワサをすれば、春山さんだ。今までの話が話だけに、体が強ばる。
「どーした川北、そんな身構えて。ははーん、さてはリンにイジメられたな。おいリン、あんまり川北をイジメるなよ」
「イジメてなどいませんが。これからB番研修です」
「そーかそーか。ま、頑張れ!」
「わ、わーっ!」
春山さんの手が頭にのびる。少々荒っぽくわしゃわしゃと撫でられての激励。うう、よかった、この程度で済んで。
「ん? 川北、もう1回。わーしゃわしゃわしゃー」
「あははっ」
「……癒しだ! 川北の頭をわしゃわしゃするのは癒しだ! お前はかわいいな! よーしよしよし、わしゃわしゃーっ」
「あはははっ、春山さん髪がぼさぼさになっちゃいますよーっ!」
「元々ぼさぼさだろ、気にすんな!」
「……まさか、この程度で癒し認定だと…!?」
「おいリン、ケツ出せや」
「断る」
……うん、何て言うか、髪がぼさぼさでよかった! あとは冴さんの着替えに慣れるだけ! 俺は何も感じないー、何も驚かないー。
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