第13話 ハプニング
今日は克洋と釣り。
先月一緒に行って以来だから、ほぼ一カ月ぶり。
昨日の夜、家飲みにて。
「要っちゃ。明日昼から釣り行ってみらん?釣れんけど。」
「うん。分っちょー。で、どこ行くん?」
「前の川でよかろーもん?どーせ遠いとこ行ったっちゃ釣れるかどーか分からんし。油賃勿体ねーし。」
「そやね。」
いつもこんな感じで釣行が決定する。
翌日。
陽は昼ご飯を食べ終えると近所の友達の家へ遊びに行ってしまった。
連れて行こうかと思っていたのに…。
お陰様で完全にオイサンツーショット。
よくあることだけど。
釣り場は家の近所のまあまあメジャーなゴロタ場(専門用語ではリップラップという)エリアに決定。
居着きの魚が多く、数年前はよく釣れていたのだが、今では人も多く、かなりスレてしまっている。
だから、食わないときはホント何をやっても食わない。
まあこれは、どのポイントでも同じようなことが言える。
土手の上からざっと見て、今人間のいないエリアを選んだらこうなった、というだけのハナシ。
互いが真横に投げて干渉しない程度に距離を取り、釣り開始。
ちなみに今回の釣行では二人とも普通のベイトタックルでノーシンカー。
しかも各々一本のみ。
ここまでプレッシャーが高まってしまっているのに、切り札としてのフィネスを持ってこないとか、結構無謀な釣行だったりする。
タックルは以下の通り。
【克洋】
サオ:バロウズ64H。
リール:ジリオン100H。
糸:フロロの16ポンド。
4インチシュリンプのグリーンパンプキンシード。
【要】
サオ:ラグゼエクスプラッシュB70H。
リール:リョウガ2020。
糸:フロロ20ポンド。
4.5インチドライブスティックファットのやはりグリーンパンプキンシード。
二人ともかなり強気の選択だ。
流石に叩かれまくったポイントなだけのコトはある。
ちょっとやそっとじゃ食ってくる気配がない。
でも、それは覚悟の上なので根気よく撃ち続ける。
釣りはじめてしばらく経った時のこと。
「要く~ん!」
土手の上から聞き間違えようのないハスキーボイス。
葉月だ。
振り返ると、ミニスカートを穿いた可愛らしいカッコでBMXに跨り、こちらに向かって手を振っている。
そういえば。
この辺で散々釣りをしているわけだが、一回も会ったことがなかった。
スーパー以外で会うのは初めてじゃないだろうか?
なんか新鮮だ。
それはよいとして。
少し前、大規模な草刈り(夏場2~3回行われる)があって、草丈は少し低い土手の斜面。
手をふり返すと、あろうことか、その斜面を斜め方向に緩い角度で、チャリに乗ったまま降りようとしている。
もう少し先まで行けばスロープがあるのに、である。
キョーレツに嫌な予感しかしない。
「ちょ!葉月ちゃん?何し…」
叫んだ時には遅かった。
彼女は期待?を裏切らない。
ほぼ100%の確率で応えてくれる。
草に隠れた大きめの石に前輪がヒットして急停止。
慣性の法則により、後輪が思いっきし持ち上がり、ジャックナイフ。
言おうとしていた言葉。
前部言い終わる前に
「うわ!」
小さな身体が宙を舞う。
掌から着地すると、チャリが背後から降ってくる。
「葉月ちゃん!」
サオを置いてダッシュ。
近寄ると…。
斜面の下に頭を向け、スライディングみたいなカッコからのエビ反りでチャリの下敷きになり、不思議なカタチで足が絡まっていた。
しかも、以前にも増してとんでもないことが起こっている。
葉月のパンチラ&パンモロは、もはや定番のハプニングなのだが…。
今回に限ってはそれだけに収まらず、ケツが半分以上出てしまっている。
エビ反っちょーんに、なんでケツが出る?
かなり謎である。
前回の大気測定に引き続き、激しいミラクル。
その姿を見て、葉月には悪いが笑いそうになってしまう。
ここで、パンツが脱げたメカニズムについて説明しよう。
フローシートで表すと、以下のようになる。
前輪停止
↓
ケツが前方へと滑る。
↓
サドルにパンツが引っ掛かる
↓
後輪が浮く
↓
チャリから身体が放り出されはじめる
↓
その際パンツがズリ下がり、一旦ケツが完全に丸出しの状態になる
↓
パンツがサドルから離れる
↓
ケツ丸出しのまま前に飛ぶ
↓
着地
↓
チャリが降ってくる
↓
足がチャリに絡まると同時にエビ反りになる
↓
パンツが半ケツの状態まで戻る。
一度完全に丸出しになり、戻ったから半ケツだったのだ。
こんなおバカな葉月でも、一応は乙女である。
大好きな人にナマでお尻を見られてしまうなんてハプニング、あっていいはずがない。
ケツの涼しさから、自分がどんな状況かが分ってしまっているらしく、
「あ!ちょ!見らんで!」
必死に叫ぶのだが…。
「じゃ、どうしろと?」
複雑に絡まっており、見ないことには救出不可能。
ただ、今は彼女のためを思い、あっち向いてあげているが。
尋ねると、
「目ぇつぶって助けて?」
情けな~い声で、無茶な注文いただきました。
「それは無理。」
「ちょ…苦しい。はよ助けて?」
ついに、無茶なカッコにも限界が来たようだ。
切羽詰まった声でお願いしてくる。
自分としても葉月はお気に入りなので、苦しむ姿は見たくない。
だから。
「はい。足。力抜いて?」
ガッツリ見ながら救出活動に入る。
改めて。
思わず笑ってしまいそうになる光景だ。
「もーっ!見らんでっちゆったのに!」
視線をケツに感じたのか、大騒ぎである。
もがきながら叫びまくっているけど、こればかりはしょーがない。
「こらこら。暴れんと。ほら。この足抜いて。次はここ。」
言う事に従うと、絡まった足が徐々にほぐれてくる。
なんとかチャリから解放。
有り得ないカッコになっていた割に、ケガはしてなかった。
チェーンの油が付いて所々黒くなっているだけだ。
よかった。
立ち上がると、あっち向き、
「もぉ!要くんのスケベ!」
パンツを上げながら、真っ赤な顔してご立腹である。
「ごめんごめん。」
全然悪くないのだが、とりあえず謝った。
「…ありがと。」
あまりの恥かしさに、あっち向いたまんま礼を言う。
「もー。気ぃつけんといかんやん。ケガは?」
「ん?大丈夫っぽい…と思ったけど、切れちょった。」
着地の際、掌からイったため、枯れ草の茎で切ったようだ。
掌を差し出してくる。
この感じ…。
大気測定の時に起こった乳首見せハプニングが頭をよぎる。が、今回はTシャツの下にタンクトップを着て、なおかつブラもしていた。
暑がりの彼女にしてはかなりの重武装である。
目線を追われ、
「スケベ!今日はちゃんとしちょーもーん。」
先手を打たれた。
実に自信満々だ。
こんな態度をとるから、からかいたくなってくる。
「ケツ見えたけどね。色白でプリッとしてなかなか可愛かったよ。」
意地悪く笑うとソッコー真っ赤になって、
「バカ!エロ!」
プーッと膨れ叩いてくる。
そのリアクションが可愛くておかしくて、思わず笑ってしまう。
赤面が収まってないまま、
「どぉ。手ぇ出して。」
処置を始める。
仕事柄、小さなケガがつきものなので、普段から財布やスマホケースの中に絆創膏を何枚か入れている。陽と遊んでいる時ケガすることもあるので意外と役に立つ。
取り出して貼ってあげると、恥ずかしそうに、嬉しそうに、
「ありがと。」
礼を言う。
「もぉ絶対無茶したらダメ。約束して。あっこにスロープあるっちゃき、遠回りしてでも安全な方選ばんと。女ん子なんやき顔にケガでもしたら大変やろ?」
優しく注意すると、
「はーい。」
素直に返事する。
「しかし、チャリ乗るのになんでこんなに短いスカート?見えていいパンツやなかったよね?」
「うん。だって短い方が可愛いし。」
制服の時と同じ理由だ。
「ここまで来るのに立ち漕ぎやらしてない?」
「ううん。風あってキツかったき、ずっと立ち漕ぎできた。要くん見えたき急いできた。」
この子は…。
「あ~あ。それ絶対信号待ちの人たちにパンツ見せまくっちょーよ?」
「!!!」
しまった!の表情に変わってゆく。
こんな軽い生地の超短いスカートで風もあるのに立ち漕ぎって…。
ホント、ガードが甘すぎる。
「もう高校生なんやき気をつけんと。」
「わかった。ちゃんと座って乗る。」
真っ赤な顔して反省中。
立ち直るのに少しだけ時間がかかった。
でも。
葉月からすると、また大好きな要に優しくしてもらえたので、トータルとしてはプラスなのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます