第19話

 その時だった。

 空の加護精霊ラファールの化身が現れ、くるくると風を操りシリウスの動きを封じた。


「精霊……?」


 ガルーたちが上がってきた螺旋階段への入り口が開いていた。


「助太刀を……と思ったけど、先にフェニーチェ様がやってくれたみたいだね」


 その封印は、先程まで秘密の広場にいた近衛兵の放った加護魔法だった。言われて気付いた。精霊の加護の力が普段通りに戻っていることに。


「王女とペトラさんの熱意に負けたんだ。あの部屋に居たメンバーで城の皆を守ろうって。俺だって、近衛兵という仕事に誇りを持ってる。国を守れずに何が近衛だって思ったんだ」


 ばつが悪そうに言う近衛兵。その声に、かぶるように。


「国民の皆さん、聞いてください――」


 空から、ガルーの好きな音色の声が降ってきた。


「フェンテ?」

「奥……だね」


 近衛兵に言われ、フェンテの行った玉座の間の奥へと進む。

 宰相は生きていた。フェンテも宰相もけがをしていないところを見て、ガルーはほっと胸をなで下ろした。


 女王の葬儀の時に見た炎の精霊クラテールが再び姿を見せていた。大きな鳥はその翼をはためかせ、風向きを変えている。宰相が拡声の魔法を使い、フェニーチェ王女の呼びかけを国中に届けている。

 クラテールの大きな翼から飛び散る火の粉がまるで花弁のように風に舞っている。


「今ここに、緋色の国ロッソは王政を取りやめ、議会制民主主義へ移行することを宣言します! いいですよね、クラテール様?」


 承認したとばかりにクラテールが鳴く。


「しばらくは宰相様を筆頭とした王議会のメンバーで政治を行いますが、議会メンバーは誰でもなれるように制度を作り直します!」


 フェニーチェ王女――いや、フェンテの顔は輝いていた。きっと、フェンテは宰相から同じ話を聞いたのだろう。そしてこれが、フェンテの出した答えなのだ。

 女王の資格がないだけで――赤毛を持った第一王女でないだけで、差別され人権を認められない今の国の制度を、変えたい。


「皆さんの力を貸してください! この国がもっと良い国になるように! お願いします!」


 頭を下げるフェンテ。

 国中から、歓声が上がった。

 戦いが止まった。それ以上の犠牲を出すことなく、内紛が集結したのだ。

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