第27話
経験...そんなに大切なものだろうか。自分を養護する訳ではない。幾つもの恋愛を乗り越えて、傷作って、青あざ作って、絆創膏貼って、それでも涙も流さず、何事もなかった様に次の日会社に行く。嫌な上司、愛想の無い部外が待ってる。それは生活、人生をこなすという事。
きっと皆最初からこなせた訳じゃない、何人も、幾重の出会い、別れがあって少しずつ慣れて、耐えれる鈍感力を身につけて言ったんだと思う。
でも僕は、本当に町田さんみたいな人は初めてで、僕にとって町田さんは...きっと本当に初めて好きになった人で、とても大切な人と。元カノの事を思い出せば出すほど、あれはただのママゴトだったんだと気づく。だって元カノの事を考えても町田さんの時みたいに、毛穴から町田さんが出てこない。いや、もとい、町田さんを好きって気持ちが自分のありとあらゆる毛穴から溢れでそうになる感覚に襲われたりしないのだ。
そしてやっぱり心臓もドクドクうるさい。側に誰か来ようものならたちまちこの低音を聞き分けられて、この切ない一定のリズムでしっかりと音叉するこの振動は、町田さんへの思いが現存する証だと、白日の元にさらされてしまうんじゃないか、なんて行きすぎた妄想に駆られてしまうのだ。
僕は、こなれたくなんかない。町田さんに対するこの思いは。5年後、10年後、埃に被ったアルバムを捲るようには、彼を懐かしく思い出したくないんだ。初めてだから、上手く出来ないかも知れないけど、初めてだから、怖いけど、泣いちゃうかもしれないけど、この気持ちを大切に1000%好きって言おう。もうすぐ小説が書き追える、その時に。
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