第14話
夕食、今日の食卓にはチキン南蛮が並んでいた。
時刻はきっかりPM7:00。
俺はすっかりパブロフの犬と化して定時に自宅に帰る生活が続いていた。
「美味しーい。」
サクサクの衣とタルタルソースが絡んで、中のキチンはとってもジューシーと来てる。
「安健、小説家よりコックさんの方が向いてるんじゃないの?」
「止めてください。料理褒められても全然嬉しくないですから…」
冗談のつもりだったのに、妙に神妙な面持ちだな、となにかあったのか?と尋ねて見た。
すると安健は覇気なく質問に答えた。
「編集に小説のリアリティーがないと言われまして…悩んでるんです。」
はぁ。リアリティーねぇ。
「俺は素人だから、わからないけど、そういうのって、実態験に基づいたりするんじゃないの?」
安健は気まずそうな顔をして答える。
「はぁ…お恥ずかしながら、学生の頃は本ばっかり読んでて、小説家になったらなったっで、引き込もって執筆ばかり、恋愛というレの字も経験してないんです。」
俺はふと不思議に思った。
「でも、安健彼女いなかったっけ?追い出されて部屋探しにうちの不動産来たんじゃなかった?」
「えっと…ですから、俺、淡白と言いますか…あんまり構ってあげられなくて、それで愛想尽かされたんです。」
そうだったのか…彼女も可愛そうに、これだけの美貌を持ち合わせた青年が横に居ながら、お手付きがないとは…
「あの!」
というなり、いきなり安健は椅子から立ち上がり、床に正座して頭を下げ、土下座の格好となった。
そして口を開いた。
「俺がまともな小説が書ける様になるまで、俺と付き合ってください。」
は?
えーと…今なんて?
俺はもう一度安健の言った事を心のなかで復唱し、そして困惑した。
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