第2話
内見は、有名過ぎる定説があって、三件回るとするならば、「悪→並→良」の順番で回る事である。少しでも、良物件を良く見せる言わば心理的トリックである。そして、後は良の物件をプッシュ、猛プッシュする。
大体若い入居者の場合は、駅から近いとか、コンビニから近いとか、ブロードバンドが充実している等の点に重きを向いている事が多い。
その点を考慮に入れて、丁寧に接客を心掛ける。大きな買い物だ、勿論即決なんて事はあまりないが、一応、他のお客様のお返事待ちの早い者勝ち物件なんです、何てフェイクを匂わすのは至極当然の技法でもある。
○○大の学生のお客様に一応仮抑えの了承迄得られた所で、会社に戻り、出口の扉の所でまた後日お待ちしておりますと、深々と頭を下げて御辞儀をして、お客様を送りだした。
ん?
会社のガラス張りの外壁に目玉の売りの物件が何枚か掲示してあるのだが、それを凝視するというか、舐め回すかの様にみている、青年がいた。
身なりは御世辞にも身綺麗とは言えないが、きちんと髪型を整えて、上等な背広でも着れば、栄える顔立ちをしている。
ゲイ独特の感とでもいおうか、ただ単に猛烈に彼がタイプだったからか、身なりの割に端正な容姿をしていると直ぐに見抜けた。
「お部屋をお捜しですか?」
俺はとびきりの営業スマイルを向けて話しかけていた。
「えっと、とにかく安い物件を捜しているんですけど」
彼は少し自身無さげに答えた。
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