町田さんとの恋愛契約

杏仁豆腐

第1話 

この時期やっと繁忙期が過ぎ、社内も落ち着きを見せ始める今日この頃。


何せ3月は新社会人、新大学生がどっと押し寄せ物件捜しにやってくる。



そういうお客様は大抵匂いがする、新しい生活、新しい人生の始まりの匂い。そしてお客様は嬉々揚々として、余裕があるというか、部屋探しも楽しんでいる様子が垣間見えるのだ。



「春から○○大に通う事になったの、近くのいいお部屋空いてないかしら」



今日は朝イチで、十代位の女の子とそのお母さんであろう、そのお客様は来客用のディスクに着くなり、口を開いた。



「○○大ですか、お嬢様は、勉強が凄くお出来になるんですね」



これは○○大のお客さまが来た時の決まり文句である。決まり文句ではあるが、だか、けして惰性で言うのではない、新生活を迎えようとしている人のその出発のお手伝いをする、仕事と言えど、そういう人の人生に携わる事は気分がいいのだ。




早速、数件目ぼしい物件を絞り混み、内見に行く手配を整えた。



「じゃあ、お客様と内見行ってきます。」



上司にそう伝えると、僕はお客様と店を後に、物件へ向かった。






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