灰色の死闘①



その後は『作業』と言えるもの。


かかって来る機械動物達を斬り払い続ける。


正直な所、ヒト型に比べて数は多いが戦闘力は低い。今の俺には、時間稼ぎにしかならないだろう。



……それだけ『増速駆動』の効果が高いという事。


早くけりを付けなければ。




「――っと……何だ」




違和感。


威勢良くかかって来た機械動物達が、徐々に勢いを失っていく。




まるで――『何か』に怯えているような。




「――――――」



気付く。


機械動物の目線が、俺の後ろにある事を。


振り返れば――今まで倒した機械兵が、立ち上がっている。




「……どういう成り行きだ」




俺が身構えたのも意味が無かった。


というのは、機械兵が機械動物の方へ向かっていったからだ。


分からない。が、俺に向かってくるものはいない。


そして――



機械兵は、機械動物に向けて攻撃を開始した。




「―――――!」




機械兵は数は少ない。


形を保っていたものは、俺が雷撃で倒したものだけだからだ。


しかし――それでも、機械動物達には歯が立たない。




「……何がどうなってんだか分からんが、助か――」




ふと、俺の中で『安心』が生まれた。


が。




「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」




消えていく。


機械兵、動物関係なく――紅い光が。




「……っ」




迫りくる機械動物も全てその光を消し、応戦してくれていた機械兵も、この場所全ての光が消える。

建物を照らす光も、何もかも。



全ての『光』が消え、そしてそれは、灰色の靄のようなモノとなり――『地面』へと潜っていく。

地面の奥深くに、吸い込まれていくように。



光だけではない。

俺の頭の上――空からも、その灰色は向かっていく。




まるで――




そして。




その靄が――『魔力』だという事に、俺は気付いた。






「――!?まずい!」





その時には、もう遅かった。


地面の亀裂。『何か』が、俺の下で起動している。


それは一体何かなんて分からない。ただ、俺の第六感が、けたたましく警戒音を鳴らしている。




「噴射!」




走っていては間に合わない。


俺は靴に炎を宿し、空に向かって跳ぶ。



離れていく地面。やがてその地面を壊すように、『それ』は現れる。




「これで終わるとは思ってなかったが――」




それは、『ヒト』でも『動物』でもない。





表すと言えば――それは、『兵器』と言えるモノだろう。






目を覆う程の紅い光に身を包み、見えたシルエット。


サイズは10m程。二足歩行の機械だ。


長い両足で歩きながら巨大な両腕で身体を支え、その腕にはおびただしい程の魔力が纏ってある。


背中には大量の『銃口』。


そして頭の部分には、更に大きな砲台のような『目』が一つついていた。






『破壊』の為だけに作られた――そんな印象。




「GAAAAAAAAAAAAAA!!」





壊した地面から現れると共に、耳を劈くような声を発する化け物。




『分かる』、その強さ。




膨大な魔力にその巨体。


全身が兵器じみたそれに、俺は圧倒された。





しかし――圧倒され続けている程、時間は余っていない。





「――――『噴射』っ!」




宙に浮いた体を、靴の炎によってその化け物へ移動させる。



ビリビリと震える俺の全身を前に。



近付けば近付くほどに、巨大な腕へ――





「――――――――」




そいつはその両腕から、ミサイルのようなものを発射した。



只のミサイルではない――その全てが、俺の方向へ向かっている。



宙に浮いたままでは流石に機動力が無さすぎる――しかし、逃げるにはもう手遅れ。




残った選択肢。


迎え撃つしかない!




「……」




深呼吸。目を瞑る。大剣と化した蒼炎を納め――俺は空中にて、剣の構えを。


イメージは、連なる刃の砲台。


こちらへと飛来するミサイルを――全て斬り落とす!





「――『連創』!」




詠唱と共に、俺は一、二、三と剣を振る。



飛んでいく炎の刃が三つ。



目を開ければ、ミサイル全ては爆散していた。






「……さて」




俺は地面に降り立った。


眼前――スチームを吹き出す、『兵器』が待つ。


ここからが、本番だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る