決心

外は真っ暗に。


どうやら、夜になったようで。


しばらくすると、目が慣れてくる。


……何か、ベッドに人の頭がのっていて。


すー、すーと寝息も聞こえる。


これは……


デジャヴってやつ、ではないようだ。


「……樹か?」


俺が声をかけると、樹も目を覚ましたようで。


「……」


「……はは」


いつもの沈黙。だが、この無言の時間がやけに温かく感じてしまって、つい笑ってしまった。



――――同時に。


俺の無理に抑えてきたものが、涙となって出てきたようで。


「ご、ごめんな、これは、」


無意味な弁解。その声は涙声に。


そして、流れ始めた涙は止まることなく、頬から流れ落ちていく。


「……んっ」


ぎゅっ、と、樹が小さい体で抱きついてくる。


樹の体は暖かく、心まで暖かくなるようだった。



「ありがとな、樹。このままいてもいいか?」


この暖かさを離したくなくて、自然に声が出てしまった。



「……うん」


樹の声を聞き、俺は情けない男だと思いながらも、この涙が枯れるまで樹に体を預けた。


――――――――――――



どれぐらいたっただろう。


樹は……寝ているようだ。



そっと俺のベッドに、起こさないように寝かしておいてやる。


樹の寝顔を確認してから、立ち上がる。


……おかげで、気持ちを0にできたようだ。



――俺は。


俺は、この世界で生きていかなくてはならない。


コンティニューもなく、元の世界へ戻れる手段もない。紛れもなく現実だ。


ならどうするか?


当然、この世界で強くならなければ。


魔力がない?魔法が使えない?そんなの関係ない。


魔法が使えないなら剣術で。


剣が使えないならこの拳ででも。



樹のおかげで、目が覚めたよ。




そうだ、俺は、この『世界』で――――――












「『何が何でも、強くなってやる』」












決意を新たに。




……久々にトレーニングに行くか。

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