逃避

クラスメイト達は、部屋へと戻っていった。


「はは、なんでこうなったんだろうな……」


誰もいない中、俺は一人で呟く。


「何が固有能力だ……何が勇者様だよ」


ひょっとしたら、俺はこのゲームのような世界で、勝手に何とかなると思っていたのかもしれない。


「はは……俺、どうなっちまうんだか」


―――――――――


部屋へと戻り、ベッドに倒れる。


この状態で寝れるわけもなく。しかし、早くこの現実から逃避をしたいわけで。


その中、ある考えを思い付いた。


「はは、魔力を放出するのだけは上手くなったもんだ――」


悲しく笑う。


同時に俺の手から、魔力がどんどん出ていく。


「魔力少ないって便利だな、あ、ああ……っ――――」


まもなく俺は激痛に襲われ、気を失った。


―――――――――――


目が覚めると、外は大分明るくなっていた。


昼から今までずっと気を失っていたらしい。


「……腹減ったな」


ご飯がある場所は……そうだな、食堂行くか。


俺は本能のまま、力なく歩いていく。


恐らく時間もそれ位だろうから。


――――――――――――



「――っ」




食堂で俺を出迎えたのは、クラスメイト達の視線だった。


軽蔑、同情、嘲笑。


どれもが、忘れようとした現実に引き戻してくれる。


食欲は消え去り、吐き気が俺を襲う。


俺、こんなに脆かったか?……



「っ、はあ、はあ……」


部屋へ帰り嘔吐。ただでさえ空の胃が、もっと空になってしまった。


それなのに……食欲は湧いてくることはない、嫌な感覚。


「はあ……」



これからのことは、考えたくない。見たくない。


魔力を放出していく。


またしても、俺は現実から逃げるのだった。

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