練習

部屋に着いた。




さて、やりますか。魔力の変形だが……想像しやすいものがよさそうだ。




この前は適当にやってたが、今回は形を決めてやってみよう。




最初は……四角だ。頭の中でイメージして、魔力を放出していく。




四角い箱に水をつめていくイメージ。




どうだ?




……うん、やっぱりまだまだ出来ないな。








一時間ぐらい経った頃。魔力も尽きてきたが、少しだけ分かったような気がする。




さて、素振りといきたいが……




今はまだ騎士団の方にはクラスメイトは行ってないはずだし、アルゴンさんがいたらちょっと頼んでみようか。




相棒のスタッフも持って、いざ訓練所!








――――――――――――――――――





アルゴンさんは、いたにはいたが訓練中でした。騎士団員と手合わせ?している。


さすがに声はかけられないな。すごい気迫だ……



気のせいか、ちらほら筋トレのようなものを行っている人がいる。




……あの腕立てのやり方はあんまり筋肉つかないんだよな……腰が反ってしまっている。あの人もスクワットはちゃんと腰を落とさないと……あー気になる!








「あの……ちょっといいですか?」






とりあえず腕立てしていた団員さんに声をかける。




「ふっ……ふっ……おお、勇者様ではないですか。何でしょうか?」




「その、訓練?なんですけど、こうしたらいいですよ」




腕立てを実際にやって見せた、テレビで見たやり方だから合っているはずだ。





「な、なるほど……こ、こうかな?」




「えっと、そうですね、体は一直線のイメージで。あと腰をもう少し上げて、そうです!」




「おお、さっきより負担がかかっている気がするな……ありがとう」






熱中し始めた団員さんを尻目に、今度はまた別の団員さんに声をかける。




その次はあの人だ。次はあの人にも……






あれ?俺なんでここに……



「君!さっきから見てたよ。あちこちに教えて貰って悪いな!」




自分がなぜここに居るのか真剣に考え始めてきた時、アルゴンさんが声をかけてきた。




「はは、いえいえ!どうしてもむずむずしちゃって」




「大変ありがたい……それでここへ来たのは用事でもあったのだろう。なんだ?」




「ああ、それなんですが、素振りを教えて欲しいんです。これを十分武器として扱えるぐらいには鍛えておきたくて」








そういい、スタッフに視線をやる。




「ふむ・・・また珍しいものを武器にしたな。いいだろう!魔物が近くに来た時には、杖も近接武器として扱うことがある。後衛にもいずれ教えようと思っていたことだ。」




「ありがとうございます!それじゃ……」




「うむ、いつもの素振りの型を見せてくれ。」




いつものように、素振りをしていく。




アルゴンさんは、ものすごく的確で、分かりやすく改善点を教えてくれた。




……おお、なんか形になっている気がするぞ。




「ありがとうございました!それじゃ……忙しいところすいませんでした。」




「ははは、お礼を言うのはこっちの方さ。また何かあったら声を掛けてくれ。色々大変だろうが、頑張れよ!」




アルゴンさんからのありがたい言葉を聞いてから、訓練場を離れた。




うん……来てよかった。






――――――――――――――――




もう一度部屋へ。魔力も回復したし、やりますか。




さて、魔力の変形だが、一番近いと思ったのがホログラムのように構成していくイメージだ。




集中集中……。よし、イメージは四角。上から精巧に。焦るんじゃない、ゆっくりと。




時間はまだまだかける。ゆっくりゆっくり、魔力を放出しては、形作っていく。




……どうだ?






手の上には、もやもやとしたものではなく、はっきりとした白の四角いモノが出来ている。




同時。



「やっ……っぐああああああああああ!」






俺は体中に激痛が走るのを感じ、完成した魔力の塊が無くなっていくのを目にしながら、意識を失った。



―――――――――――――


―――――――


――――




「……!」



起きた時、既に窓の景色は真っ暗だった。


確か魔力変形の練習してて……


どんぐらい寝てたんだろうか。あれ?そういやなんで俺は上品にベッドで寝てるんだ?


たしか練習は椅子に座ってやってたはずなんだが。


ん?なにかベッドに人の頭が乗っかって……


「うひっ!」


「はう!」


へ、変な声でた……というかこの声は雫?


お互い顔を見つめる。……暗くてもわかる。

うん、雫だ。


「は、はは、おはよう。」


「お、おはよ…って違う!大丈夫なの祐介!そこに倒れてたんだよ!」


「はは、大丈夫だよ。そんなことより眼鏡外れてるぞ?」


眼鏡を着けてない雫は暴力的だ。魔王だって虜に出来るね。


「眼鏡なんていいの!大丈夫ならいいけど……」


「いやいやよくない。眼鏡のない雫は綺麗すぎるんだよ。俺が話できないって。ほら。」


そう言って、落ちていた眼鏡を拾ってかけてやる。


「きき、きれいってそんな」


あの、ちょっと褒めたぐらいで取り乱しすぎじゃないか?もっと自信を持てばいいものを。


「そういや、なんで俺の部屋に?もしかしてベッドに運んでくれたの雫か?」


「……」


ん?


「そ、それはそのいつも訓練場にいるのに今日は居なくて何かあったのかなと見に行ってみたら佑介が部屋で倒れててそれで心配でずっと看病してたらいつの間にか私も寝ちゃってて」


雫さんが一拍おいて凄い勢いでブツブツ言ってるんですが……ま、まああんまり細かいことは気にしちゃだめだ!


「はは、まあ助かったよ。ありがとうな」


出せるだけの笑顔で、雫にそう言う。


感謝してるんだぞ?多分あのまま寝てたら腰とか痛くなってたし。


「っ……うん……はは、来てよかった」


雫は小声で何か呟く。


「え?」


「なんでもない!って一番重要な事話すの忘れてた!」


「え?え?」


「明日、王女さんが私たちの魔法を見に来るから、朝訓練場集合ね!」


「え……?」


うん、明日俺はどうすればいいんだろうか?

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