振り返らず




俯く前に

少しだけ

ほんの一ミリほど

顔を上げてみようではないか

雨に濡れたマンホールも

コンクリート

波に攫われる砂浜も

流木

誰かの足元も

ハイヒール

少しだけ

まともに見えないか

くだらないものに見えないか

世の中世界

たったそんなものでできているんだよ

電車で何処かに行くには

少し遅いね

バスで行くには

少し遠いね

だったら

少しだけ立ち止まって上を

フードが取れてしまうくらい見上げてみようではないか

そうして夜空を確認できたなら

鍵を握りしめて歩こうではないか

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