悦に浸る




あの含んだ物言いが好き

あの学生帽を被った姿が好き

あの横顔が好き

あのしなる体が好き

あの浮き立つ背骨が好き

あの黒炭の目が好き


あの人でさえ手を持っていることが

あの人でさえ声があることが

あの人でさえ笑うところが

あの人でさえ洒落たものを着るところが

あの人でさえ電車に乗るとこが


どうせ来てくれないのでしょう

どうせ見ちゃくれないのでしょう

どうせわかってなどくれないのでしょう


ああお払い箱もいいとこよ

ああ悲しいもいいとこよ


返してなんて言わないのにさ





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