しみったれた〈〉




水辺に浮かぶしかなかった金魚

腹が上だけれど

カーテンの向こうとこちらの間にあるあの

日向より

そこの方がまだマシだろう

御破算なさったあの狭間よりマシだろう

もう波を作ることは叶わず

もう水草を掻き分けられず

もう水下から望めず

それでも

カーテンの間を泳ぐよっかマシだろう?

茹だるだろう

眩しくて見ていられない

透明すぎて色を取り込んでしまう水を泳ぐ

しかし浮かぶだけとなった今

ああなんて楽

ああなんて格好



目だけがこちらを向く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る