啄み




女の口が怖い

俺の腕を走る真っ赤な唇は

愛を紡ぐその唇も

拐かしを呟く唇と同じ

ゆっくりとくねらせる肢体のように

シャンソンのようなまとわりの唇と口

縋る姿は枝垂れかかる柳

動かされる果実は果たして林檎なのか

目を離せないのだから仕方がない

怖いが

それを美しいと思ってしまったのだから

這い上がる何かが零れようとも

繋いでしまう指は離れない

重ねた唇は音を立てたまま



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