第12話 オームの法則

 「サッちん、次は何処へ行きたい?・・・」

 「うーんそうね、ディズニーランドなんか良いかしら」


 (うっ、ディズニーランド。入場料がかなり掛かるな・・・)

 「ちょっとここで待っててね」

 僕は急いでATMへ行ってお金を下ろしてくる。


 「お待たせーっ」

 「それから高瀬君、そのサッちんて言うの、人前でやめてくれる。私は奥村幸子、できれば奥村さんって呼んでほしいわ」

 「ああ・・・」

 (何だよサッちん、僕の気持ちも知らないで・・・)


 

 「やっぱりディズニーランドって楽しいわあ、ねえ、高瀬君!」

 「そうだね、奥村さん・・・」

 (やっぱり笑顔の彼女は可愛いな・・・)


 「ねえ高瀬君、私あれ食べたいな」

 見るとそこには、ポップコーンの屋台が。キャラメル味のそれである。


 「どうせなら、BB-8のポップコーンバケットが良いなあ~」

 (えっ、それって倍の値段もするんだよ・・・)

 僕は心の中で泣きつつも、笑顔でそれを彼女の首に掛けてやる。

 「高瀬君、ありがとう・・・」

 (君が喜ぶなら、それで良いんだ)


 僕は白雪姫城を見つめている彼女の手を、そっと握ろうと手を伸ばした。僕の指が彼女の指差に触れる。

 「ちょっと高瀬君、あたし達って、まだそう言う関係じゃないでしょ!・・・」

 「ご、ごめん・・・」

 (まだそう言う関係じゃないって?・・・)


 「奥村君、お土産買いに行こ!」

 「う、うん・・・」


 (まさか・・・)

 彼女はぬいぐるみバッジの前を通り過ぎると、迷わず「ダッフィー」のぬいぐるみの前へと向かう。

 そのひとつを手に取ると、すでに自分の物のようにと抱きかかえているのだ。

 「これ、前から欲しかったのよね~」

 「へえ、可愛いね・・・」

 言いながら、僕は商品の値札を裏返す。

 (げっ、こんなにするの?・・・)


 ディズニーランドを出るときに、そのぬいぐるみを胸に抱えた彼女が一言僕につぶやく。

 「高瀬君、本当に今日は楽しかったわ。次回は富士急ハイランドに行きましょ!」


 僕はそれには答えず、彼女の目を見つめる。おあつらえ向きに、辺りはすっかり日も暮れている。それにここは、ランドの中に比べると人もまばらである。

 僕は真剣な顔を向けると、彼女に告白をした。


 「奥村さん、僕は君のことが好きな・・・」

 「ちょっと高瀬君、やめてよね。あたしそういうのタイプじゃないんだ、もっと楽しく行きましょ、パーッと楽しくね!」


 (どうすれば、僕の気持ちが分かってもらえるんだろうか?・・・)


 僕は笑顔ではしゃぐ君の横顔を、うらめしく見つめていた・・・



【オームの法則】

(電気)回路を流れる電流(A)の大きさは、電圧(V)の比例し、電気抵抗(Ω)に反比例するという法則。  電圧(V)=電流(A)×電気抵抗(Ω) という式が成り立つ。

彼女の気持ちは、お金に比例するようにと大きくなるが、男の子の気持ちは反比例するかのように伝わらないと言うこと。

 

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