ビーバー船を作る
けものフレンズ大好き
ビーバー船を作る
同じヒトのフレンズを探しに海にこぎ出したかばんちゃん。
この時乗っていた改造バスはみんなからのプレゼントですが、一体誰がいつ作ったのでしょう?
ちょっとその時の様子を見てみましょう。
黒セルリアン討伐直後、そそくさと帰ろうとしたビーバーちゃんは、上空から音もなく飛翔する博士に捕ま――呼び止められました。
「逃げるな、です」
「我々から逃げられるなどとは思わない方がいいのです」
「うう、捕まってしまったっす……」
『我々の言いたいことは分かっていますね?』
「ジャパリまんの事っすよね……」
ビーバーちゃんはガックリ肩を落としました。
そうです、ビーバーちゃんはかつて家を建てるため、ジャパリまん三ヶ月分を担保に博士から建材をもらったのです。
「いくら我々が力強く飛べるとはいえ、上流から丸太を運んでくるのは、死ぬほど大変だったのです。おかげで博士がさらに小さくなってしまったのです」
「そもそも近くに木があるんだから、お前が用意すれば良かったのです」
「返す言葉も無いっす………」
ビーバーちゃんはさらに小さくなります。
「それでジャパリまんはどこですか?」
「それが、実はプレーリーさんが埋めておいたジャパリパンがどこにあるのか忘れてて、変わりにあげたからもう蓄えがないっす……」
「申し訳ないであります!」
ビーバーちゃんの異常に気付き、慌てて駆けつけたプレーリーちゃんが、一緒に博士達に謝ります。
「そんなことだろうと思ったのです。我々は賢いので」
「賢いので」
「そして我々は寛大でもあるのです。これから我々の頼みを受けるならチャラにしてやっても良いのです」
「それぐらい私と博士にすれば、へっちゃらちゃらです」
「ホントっすか!?」
「やったでありますなビーバー殿!」
2人は博士達の提案に喜びます。
「かかりましたね」
「我々に出来ないことが、すぐにできるとは思わないことです」
「なんか怖いっすね……。それで、何をすれば良いんすか?」
「それはずばり」
「ずばり」
『船を作るのです』
「ええ!?」
ビーバーちゃんはびっくりしました。
今まで家は建てても、船どころかボートさえ作ったこともありません。
現物を見てみないと、流石のビーバーちゃんも作れる自信はありませんでした。
「今回のセルリアン討伐は、かばんが大活躍しました」
「しかしそのせいで、本来かばんが使うはずだった船を海に沈めてしまいました」
「そこでかわりの船を作ってやることにしたのです」
「それはいいことっすね!」
ビーバーちゃんも博士達の素敵なアイディアには大賛成でした。
プレーリーちゃんも「かばん殿は命の恩人であります!」と手伝う気満々です。
でも……。
「俺っちに船が作れるか自信ないっすよ……。船も見る前に沈んじゃったし……」
「そこはぬかりないのです。正確には船ではなく水に浮くようにすればいいだけなのです」
「どういうことっすか?」
「これを見るのです!」
博士はビーバーちゃん達に今まで背後で布で隠していたモノを見せます。
「これは……バスっすね。かばんさん達が乗ってたっす」
「そうです。実はこのバスは元々陸も水の中も走れるように作られていたらしいのですが、浮くための物がどこかへ行ってしまったのです」
「博士はその変わりになる物を作れ、と言っているのです」
「変わりっすか……」
ビーバーちゃんは頭をひねって考えました。
「えっと、あれがあれであれだから……」
「おお、ビーバー殿考えているでありますな! とりあえず自分は突撃するであります!」
『やめるのです!』
特に考えもなくバスを海に落とそうとしたプレーリーちゃんを、博士と助手は2人がかりで止めます。
幸いにも前輪は壊れいてたので、止めるまでもなく動きませんでしたが。
「本当にお前はどうしようもない奴なのです!」
「次にやったらお前を海に落としてやるのです!」
「気をつけるであります……」
プレーリーちゃんも流石に反省したみたいです。
「うーん、こういうのはどうっすかね……」
そうこうしている間に、ビーバーちゃんに思いついたことがあるようです。
「周りを水に浮きやすい木で囲うんすよ。それなら簡単ですぐに作れるはずっす。でも失敗したら……」
「今度こそ、突撃でありまーす!」
プレーリーちゃんは言うが早いか、周りにある木を囓り始めました。
危うくバスが倒木の下敷きになるところでしたが、残りの3人のおかげでなんとか事なきを得ました。
「本当にお前は……」
「海に沈む準備をしておくと良いのです」
「たすけてー! たすけてー!」
「ああ、プレーリーさん!」
哀れ、プレーリーちゃんは空に持ち上げられてしまいました。
そんな4人の様子に他のフレンズ達も気付いて集まってきます。
「このまま海に落としたら、我々が悪者になってしまうのです」
「運の良い奴なのです」
「あー!」
「ぐえっす!」
プレーリーちゃんは乱暴に掴んでいた身体を離され、そのまま下にいたビーバーちゃんが下敷きになりました。
「しかしここまでフレンズが集まったら、もう隠しきれないのです」
「博士、もう我々が密かに用意し、皆の前でプレゼントしてさらに尊敬される計画は難しそうなのです」
「仕方ありませんね……」
それから博士は皆に船の話を打ち明けました。
みんなその話に感心し、全員が手伝いたいと言いかばんちゃんに隠れてそれぞれができることをしていきました。
なおアライさんに関しては逆に壊しそうな上、かばんちゃんにばらしそうな気がしたので、壊れたタイヤを探すように言いつけました。
こうして水に浮くバスは完成したのですが……。
「ふう、これで借ジャパリまんはチャラっすね」
「甘いのです」
「あまあまなのです」
「ええ、どういうことでありますか!?」
疲労困憊のビーバーちゃんとプレーリーちゃんに、博士と助手は追い打ちをかけます。
「これは借ジャパリまんの元の分だけなのです」
「借ジャパリまんはすぐに返済しないと、どんどん利息が増えていくのです」
「そんなあ……っす」
「さあ次はもしもの時のために、フレンズの力だけで動く船を作るのです」
「作るのです」
ビーバーちゃんとプレーリーちゃんの苦労はまだまだ続きそうです。
おしまい
ビーバー船を作る けものフレンズ大好き @zvonimir1968
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