寂夢 八 『ひとつの選択』
第八章 その一
「お主の子は。」
そうつぶやいたのは薄暗い部屋の最も奥にいる老人。
「はい・・・双子です・・・」
答えたのは部屋の真ん中で正座をしている若い男性。両こぶしを床に押し付け、正面に座っている老人に対して頭を下げ、そして震えていた。
「畜生腹じゃな。まったく・・・なんということじゃ・・・」
奥の老人の左側に座る老婆が吐き捨てるように言った。
「忌み子は村にはおけぬ。忌み子を産んだ母も置いてはおけぬ。」
右隣の老人は冷たく言い放った。
「そういうことじゃな。忌み子とその母は処分せよ。特に忌み子は村に災いをもたらすもの。早々に処分するがよい・・・」
真ん中に座る老人が最終決定を下した。
「・・・はい・・・仰せのままに・・・」
若い男性は震えながらさらに深々と頭を下げた。
「では、去るが良い。」
老婆が謁見の打ち切りを宣言し、老人たちの付き人と思われる若者が若い男性を部屋から連れ出した。若い男性は肩をがっくりと落とし自宅へと歩いて行った・・・生まれたばかりの我が子の片割れを処分するために・・・
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