第六章 その六

 唯は目覚めた。見えるのは病室の天井。

 どうやら知っている場所のようだ。 


 なんてひどい夢なんだろう。今までの夢とは全く違う。

 未来ではなく過去の映像。いや、見たというよりも体験した。

 そう表現するのが最も適しているように思えた。


「今も夢・・・なのかしら・・・」


 そう言ってから全身に痛みを感じることで現実だと理解する。


「そう・・・今は現実なのね。」


 痛む体に鞭を打つかのように上半身を起こし、体験・・・と言っていい過去の事柄を頭の中で整理していく。誰かに話したいが、こんな話を分かってくれる人なんて・・・


「一哉・・・」


 様々なことが頭に浮かんでは消えていった。彼女は一人病室で泣いた。声も出さずに泣いた。


 一輝は何も知らず、すやすやと眠っていた。

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