第22話予期しない結末
19-22
清水は変質者、自分はその様な事は一度も考えた事も無いから、異なると自分勝手に決める徹だ。
和田刑事達が朝の七時半に坂手港から一キロ余りの警察署に到着「女に刺されたと聞きましたが」
「向こうの部屋に居ますが、何も喋りません」
「そうですか?」と言うと女が居る部屋に入って三人の目が驚きの表情に変わった。
「貴女は、南田さん!」
「何故?」と驚きの声を上げた。
「あの、あの男は死にましたか?」と急に騒ぎ出した麻子に「お母さんが何故?」と驚く和田刑事。
「あの男が、娘の幸せを奪ったと思うと、許せませんでした」
「何故?知ったのですか?」
「昨日警察の方が麻由子のマンションに来られて、犯人が見つかったと聞いたので」
「でも麻由子さんから、聞かれたのですか?」
「偶然、マンションに麻由子の様子を見に寄った時、警察の方が外で話されているのを聞いてしまって」
「えー、そんな偶然で?」晶子が偶然の恐ろしさを痛感した。
娘麻由子の様子を見に行って、警察の話を聞いて、狙って犯人を刺す、誘拐された孫の為?娘の為?
殺人者を作ってしまったのか?と不安に成る和田刑事。
病院からの電話を聞いた警官が「清水は命を取り留めたそうです」と和田刑事にその時連絡が届いた。
「助かったの?」と悔しがる母麻子に「良かった、殺人に成らずに、どんなに憎い相手でも殺しはいけませんよ」と諭す和田刑事。
次の報告で署内が驚きの渦に成ってしまった。
「誘拐の少女の名前は小泉佳奈ちゃん、五歳です」
「えー、小泉佳奈?」
「届けは出ている女の子か?」
「いえ、今の処該当の少女は居ません」
和田はその話を聞いて再び麻子の元に行くと「お母さん、あの男は何の関係も無い男ですよ、麻由子さんにも凜ちゃんにも」
「えー、警察の方が嘘を?」
「そうでは有りません、間違いだったのです、殺してなくて良かった」と和田は胸を撫で下ろしたが、これでまた捜査が振り出しに戻って、誤認逮捕が今度は傷害事件を引き起こしたと悔やんだ。
翌日清水はベッドの上で「誰ですか?私を刺したのは?」
「お前の知らない女だ、あの小泉佳奈は何処で?何処の子だ」
「大阪城で可愛いので、連れて来た」
「大阪から連れて来たのか?」
「お前の病気は治らないな、刺し殺されたら良かったのにな!」和田刑事が清水に話すと「女児は可愛い」と思い出した様に笑う。
全治二週間程度の怪我に安心したのか、弁舌が滑らかなのに驚く和田刑事達だった。
驚いたのは麻由子と坂田の家の人々だった。
麻子が麻由子のマンションの外で偶然刑事達の話を聞いて、この様な行動に出た事に衝撃を受けた。
これも一瞬の偶然が巻き起こした麻由子には、驚きの事件だった。
しかし、この事件は南田の家に聞こえて、真三と麻由子の離婚は決定的な事実と成ってしまった。
南田の家では長男の親権を要求して、行方不明の凜は麻由子に押しつける条件を提示してきた。
まだ誘拐されている子供を押しつけて、麻由子が育てる真を要求してきたのだ。
真三の母真由から言わせたら、自分がデリヘルと云う売春行為をしていて世間に暴露されて、被害を被ったのは自分達の家庭だ。
店の売り上げにも、子供真三の職場も閑職に追い遣られて、将来の出世の見込みも無くなってしまったと連絡してきて、早急に長男を南田家に置いて、身一つで出て行く様に要求した。
警察事件を起こしてしまった母麻子は、一言の弁解も出来ない状況に成っていた。
だが数日後、意外な事が起こった。
清水宗平が示談を言いだして、慰謝料を貰えばこの事件は無しにすると、そうなれば傷害事件は大きく事件性が低くなる。
それは誘拐した女児小泉佳奈の母親が、子育てを拒否していたのが原因だ。
元々、大阪城で行方不明に成っても、届けを出さず放置していた位で、何処かに消えてくれて喜んでいた位なのだ。
そんなに、子供が好きならお爺さんに差し上げますよ、お金を下さいと言いだしたのだ。
佳奈自身も母親とは仲が悪く、宗平の方が一緒に居て楽しいと言いだしたのだ。
偶然人間違いで刺されて、入院する事に成った清水に幸運が舞い込んだ状況に成った。
入院費用から慰謝料を要求された坂田家では、母親が罪に問われても軽微で終わるから、この要求に応じる事にした。
警察も自分達が話をして、誤解を生んだので麻子を強く責められない。
麻子には孫の誘拐で娘の生活が破壊されて、警察の誤認逮捕で世間に娘の過去が暴露されて、致し方ない行為に及んだと結論づけた。
意味不明の事件とは別に、兵庫県警は度重なる不祥事に面目丸つぶれ状態に成っていた。
和歌山県警も同じで、異なる事件の犯人は逮捕したが、変な人間同士が示談で和解をしてしまって、誘拐事件が養子縁組と云う伝代未聞の結末で解決してしまった。
結局本当の誘拐犯は全く何処に潜んで居るのか判らない状況に成ってしまった。
東京の長谷川昌子が警察から二度も、相続した土地の事で問い合わせが有って、不思議に思い関西にやって来たのは六月半ばに成っていた。
久々に関西に来たので、墓参りと弟の家に立ち寄ろうと考えていたのだ。
弟の徹が働いていた会社を、早期退職をしている事も全く知らない昌子。
和歌山に着くと、先ず自分の相続した土地を見て「草が一杯ね、こんな田舎では駐車場も無理だし、何も使い道無いわ」と独り言を言いながら、近くの不動産屋を探して相談しようかと考えていた。
その後、両親の墓の有る寺に赴く。
丁度住職が居て「弟さんは、墓の掃除もされていませんよ」と話した。
「すみません、弟に話しておきます」と詫びる昌子。
想像はしていたが、予想通りの結果かと半ば納得をして徹の自宅に向かった
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