幕間(4)

王立ミルトンダフ神学校の全校生徒数は、700名弱。5歳~15歳の幼年期、16~18歳の高等部、19~20歳の院生。1学年辺りに約35名、男子2クラス、女子1クラス。欠員や、編入もあるため、きっちりではないが。

ほぼ、全員が高等部を卒業する事を選ぶが、院生を目指す者はそれほど多い訳でもないので編入制を使って、市井しせいの学生や、元卒業生がやって来る。

その結果、色々な『俗な』話題が校内を伝播でんぱする 事になった。

高等部までは全寮制(一分除く)の純粋な環境に、世俗にまみれた情報が混じると、もう元には戻れない。

純水の入ったグラスにインクを垂らせば、その効果と威力は一目瞭然というものである。


中でも男子の注目を浴びるのが、「賞金稼ぎ」

女子には当然というか「恋愛ゴシップ」

先ず「賞金稼ぎ」には、街の英雄伝説や、神学校出身のエリート部隊、果ては「何処かに潜んでいる」悪の秘密結社や魔王等。いずれも荒唐無稽なネジくれた妄想であっても、「ヤツらの陰謀論」とやらで論破されてきた。

確かに、一部分で合っていたりするのだが、その殆どが妄想で、儀式のように上級生から下級生へと歪みながら継承されていくのである。

そして女子には「王子が市井に紛れ込んだ」から、流浪の貴族、更には上級貴族のご落胤らくいんの生徒等、所謂いわゆる理想の(格好いい)男子(一部お姉様)と運命的出逢い、いつかは…な夢のあるお花畑トークが満開だったりする。勿論、貴族所縁その血筋の男子(女子)もいるのだが、王制が形骸化する中で大っぴらにその存在をアピールするメリットが無い目立ちたくない訳で、ひっそりと相槌でお茶を濁していた。


只、街には手に負えない犯罪者悪魔の使徒のようなヤツが夜な夜な、憐れな犠牲者を探して彷徨さまよっている、という都市伝説だけは何時になっても在り続けている。

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