幕間(3)

最初の授業は自己紹介だった。


王立ミルトンダフ神学校の学舎は、大きく別けて3つ。幼年、高等、学院。それにミサを行うために聖拝堂。さらに学生寮。それに最近、技術館という、魔術式を習うための施設が追加された。

市井しせいの私塾では習う事が出来ず、軍学校、又は神学校のみが習う事を許された。)

そして、その技術館の講義室で自己紹介が始まった。

コレには金髪の少女も少し辟易するタメ息モノで、ただ名乗って、ちょっとしたエピソードや得意なものを手短に話すだけ、なのに。

身内にこの神学校で教鞭を執るのが居たり、実は飛び級でそれなりに有名人だから今更だったり、羨望なり嫉妬の目に晒されるのだ。


仕方なく、名前と好きなお菓子の話だけでお茶を濁したものの、明日になれば「あるお菓子だけが」流行っていたり、あるいは食べていると、その気がなくても冷やかしがあったり。

かといって、嘘をついてしまうと厳重注意がある。

嗚呼、敬虔なる信徒よ、其の身に幸あれ‼


まあ逆に考えれば、この程度で収まるのなら安くついた、と開きなおるのがベストだと思う。お菓子の好みなんて、新作や食べ飽きたとかいって変更がきく。

なので、この問題はもう忘れる事にした。


次の授業でゴスペルを謳い、午後の紅茶アフターヌーンティーの時間が訪れる。

校内の女子達にとって、最も幸せな時間といえる。が、

さっきの自己紹介の手前、やはり違うのはマズかろう。

学生寮にある食堂でくだんのスイーツ「スコーンとクロテッドクリーム、キルシュさくらんぼソースかけ」を注文して、席に向かう。すると案の定、同じ注文をしてきたという親友二人。

「ま、そうよね。」

午後の時間がゆっくりと溶けていく…


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