師匠は辛いよ(300字)

※怜路一人称。弟子=日菜子です。


「おりひめとひこぼしはひとよのおうせをたのしみます……ねえねえ、『おうせ』って何?」

 部屋に置かれている、ビギナーズ古典の本をめくっていた小学生が訊く。「弟子」と称してやってくる血縁でも何でもない子供を、今日も適当にあしらっていた俺は言葉に詰まった。

「逢瀬ってのは……夜にコッソリ二人で逢うことだよ」

 夜に恋仲の男女が会えばヤることはひとつだ。しかし、ランドセル女子相手に成人男性が教えるのは流石にマズい。一人で意味を悟るまで適当に流すしかないだろう。

「なんでコッソリなん?」

「さあなあ」

 はぐらかされてご不満そうな子供も、その意味を悟る日は必ず来る。

 巡る想像に覚えた拒絶感を、胸の内で俺は一人笑った。



***

お題:あう

日菜子は同人誌「拝み屋の日々2 禍津地母神」で正式に登場する怜路の弟子。読書感想文書いたり、サンタクロース作戦したり今までも登場しています。

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