狩野怜路は泳げない(300字)
「大体、泳ぐっつー感覚が分からん」
ぼやく大家に、美郷は呆れの視線を向けた。大家殿は泳げない。水に関してトラウマがあるのだ。
「……浮いたまま手足で水を掻くだけだろ」
一方の美郷は水に抵抗が全くないため、話は常に平行線である。
「浮く! まずそっからだよなァ! なんで人間が浮けンのか納得行かねえ」
「いや人間は浮くように出来てますよ」
なぜこんな不毛な言い合いをしているのかと言えば、カナヅチ大家殿が海難事故霊の供養依頼を受けてしまったからだ。
「おれの休みだって有限なんだから早くしてよ」
休日に巻き込まれた美郷はぼやく。
「るせー! つか、美郷任せたァ!」
言ってスタコラ逃げ出した大家に、美郷は憤慨の声を上げた。
***
お題:泳ぐ
美郷は元々水属性(謎)なので水泳関係で不自由した経験はないです。ペット共々すーいすい。
依頼としては「海難事故霊の供養」ですが、世界観的に「亡霊」は存在しないので、何か海の妖魔の類。
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