日常のかけら(SNS等からの再録)

観察眼イコール人生経験なのだろう。と美郷が思った話(300字)

 合格祈願の御守が、古いバッグから出てきた。公務員試験の時、知人に持たされた物だ。

「オイオイ、似合わ無ェもん持ってンな」

 眺めている所を見咎められ、大家にからかわれる。

「似合わないって、何」

 言い掛かりに抗議すれば、ズレたサングラスの奥で緑銀の眼が光った。

「何かに祈るだの縋るだの、しやしねーだろお前」

 口調は軽いがその視線は、深い場所を見透かすように鋭い。

「おれをどんな人間だと思ってるんだ」

 自分でも知らぬ己を、言い当てられた心地だ。妙な焦りに動悸がする。

 それすら見抜く異能の眼が、ゆるりと細められた。

「祈る事を諦めて生き残った奴ってのは、独特でなァ」

 憐憫とも憧憬ともいわれぬ、不思議な声音がそう答えた。


 ***

お題:祈る

美郷は、祈る事を諦めて生き残った奴。詳しくはクシナダ異聞にて!

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