暑さは人を荒ませる&広報
二代目フリーワンライ企画参加作。
【使用お題】
エアコンが壊れた
自称〇〇(職業等入れてください)
接触不良
怜路のねぐらである、茶の間のエアコンが壊れた。外気は最高気温三十五度の猛暑日。おかんむりの大家殿は、わざわざ嘆きに美郷の部屋まで来ている。六畳の和室に、四十度の熱源がひとつ増えた。暑い。
「そういえばこんなチラシ入ってたよ。多いのかな、エアコン故障」
軋みを上げながら首を振るオンボロ扇風機の前に、間抜けに横並びで会話する。美郷が取り出したのはエアコン出張修理業者のチラシだ。こんなド田舎までご苦労なことである。
「バッカ、お前そりゃお年寄り狙いの詐欺だわ。『自称・修理工』ってヤツだよ。ちくしょー、修理はよこいやーー」
怜路はチラシを鼻で嗤って、畳の上にひっくり返る。
「もう頼んだんだ」
「おう、お前の言う通り多いんだとよ。暑すぎて壊れるエアコンが。一週間待ちだぜ、秋ンなっちまう」
一週間かあ、と美郷は復唱した。一週間毎日、文明の利器に見放された大家に絡まれるのは辛い。
「大体が、オーバーヒートで配線がイカレた接触不良だと。場所がわかりゃ自分で直せそうなんだがなあ……下手につついて壊しちまうと修理保証されねぇし」
うだり、うだり。美郷よりは暑さに強いであろう大家殿は、しかしすっかりエアコンのある生活に慣れきっているのか、非常に辛そうだ。
「うーーーーん、水風呂?」
解決策を提示してみる。
「テメーじゃ無ェんだよ、河童か」
「誰が河童!?」
聞き捨てならない。勝手に他人の頭頂部を涼しくするな、と美郷は怒る。
「うるせ、水妖の親戚め。俺ァ水が嫌ェなんだよ」
更に酷い言われようである。
ご機嫌がななめなのは仕方無いが、ウザ絡みが過ぎる。
「ええ……じゃあ好きにしろよ。とりあえず、水属性で熱に弱いおれから唯一の冷房器具を奪わないでくれる!?」
「るせー、お前は白太さん冷凍庫に入れてりゃてめえも冷えるんじゃねーのか!? 俺にソイツを貸し出せ!!」
「断る!!! 自分で買えよ扇風機くらい!! むしろこの部屋にエアコン付けてくれない大家さん!!?」
「エアコン付けて貰えるような家賃だと思ってやがンのかテメーは! そうだ先月の延滞料だわ、その扇風機!」
「酷い! 鬼!! 悪魔!! 天狗!!!」
「最後いっこ余計だわ!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ二人の前では、凍らせた二リットルペットボトルの氷が、扇風機の風を浴びながら結露で畳を濡らしていた。 (了)
------------------以下広報です-------------------
マイクロマガジン社ことのは文庫さまの公式サイトに、『陰陽師と天狗眼』特設ページができました!!!
6000字程度のSSを特別篇として載せております。本編七話と八話の間の一幕です。日常掌編系のユルいお話なので、是非覗いてみてください!
規約未確認なので、いにしえのh抜きURLでご案内いたします(笑)
ttps://kotonohabunko.jp/special/onmyoji/index.html
Pixivノベルの方も、3話が更新されました。どうやら4話以降も公開されそうですね。どこまで行くんだろう。3話もかなり手を入れてありますので、ぜひチェックしてみてください!
ちょうどこの1話~3話がいちばん、初期のWEB版や同人版からアップデートされた箇所になります。特に、2話『余所者と境界』は、話の運びは同じですがほぼほぼリライトです。
その他、1話~3話すべてに怜路視点の場面を足すなど、自分の体感としては一番頑張ったんじゃないですかね…っていうところなので。もし、WEB版で読んでて書籍はまだ…だけど改稿気になる……みたいな方がおられましたら、試読を開いてみてください。(ttps://novel.pixiv.net/works/2314)
4話以降も、美郷が餌付けされてるシーンが増強されていたりとか、7話がエピソードごと変えてあったりとかしますので。よろしくおねがいします!
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