【300字SS】境界に立つ者


「帰りなさい、お前のせかいに」


 言って、人の世に迷い込んだ狐をあちら側へ。


「帰っておいで、君のいばしょに」


 闇に心を囚われた子供をこちら側へ。


 薄闇の境界に立ちながら幾つもの、あるべき場所へ帰る背を見送る。

 そして、立ち尽くすのは己一人。


「おれの、帰る場所かあ」


 盂蘭盆の繁忙期を過ぎ、疲労と脱力にひっくり返った下宿の縁側で呟く。


 何処にあっても『異邦人ストレンジャー』それが自分達だ。

 特に、自分は。


「家に転がって何言ってんだオメーは」


 寝起きらしい大家が、突然顔を覗かせ呆れた。


「下宿なんだけど」

「持ち家が良いなら稼げ。クソ田舎で土地は余ってんぞ」


 ヤダヤダまーたコイツ夏バテしてやがる。

 他人の感傷を一蹴して、大家が母屋の奥に消えた。




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色々考えた挙句に巴市スピンオフになるっていう。

独立ものも考えたい…です……。

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