第2話 にゃすたファリ

 サーバルちゃんのたっての希望でマタタビの枝を拾い集めるカバンちゃん

「サーバルちゃんがやるとまた酔っ払っちゃうからボクがやってあげないと・・・うん、この位かな?」

 青々とした葉つきの枝を両手いっぱいに抱えたカバンちゃん、大丈夫かなと一抹の不安を抱えつつも、大親友サーバルちゃんのお願いだしフレンズさん達が喜ぶならきっと良いことだと抱えたマタタビを香りながら想った

「カバンちゃーん!袋持ってきたよー!」

 木陰から大きな袋をはためかせながらサーバルちゃんが元気よく駆けてきた

「じゃあコレに詰めておくね」

「カバンちゃんありがとー!」

 しっぽをふりふり満面の笑みを浮かべるサーバルちゃん、そんなサーバルちゃんをみるとカバンちゃんも自然と顔がほころぶ

「じゃあ最初はどのフレンズさんにあげようか?」

「にゃんにゃんじゃないとダメなんだよね?みんながうみゃ~ってなれたらなぁ・・・」

「もう一回ラッキーさんに聞いてみようか」

 バスに戻った二人は荷台に幸せ(マタタビ)を載せて運転席に鎮座したボスに聞いた

「ラッキーさん、マタタビって具体的にどんなフレンズさんなら効果あるんですか?」

「ネコカナラコウカガアルヨ タトエバ スナネコ オセロットノヨウナ コガタカラ ジャガー ライオンノヨウナ チュウガタオオガタマデ ネコカナラ コウカガアルヨ」

「そうなんだー!あ!そうだよカバンちゃん!」

 突然何かをひらめき、目をキラキラさせて声をあげるサーバルちゃん

「なにか思いついたの?」

「ここからならジャガー達のところに近いからジャガーにまずは持っていってあげようよ!」

「あ、そうだね、ちょっといってジャガーさんに渡してこようか」

「よーし!そうと決まれば・・・ボス!」

「ラッキーさん、ジャガーさん達のところに」

「リョウカイ シュッパツシンコー」

 一行を乗せたジャパリバスは一路”じゃんぐるちほー”へと向かう

「それにしても、袋いっぱいに詰められたからこれだけあればたくさん配れそうだね」

「うん!みんな喜んでくれるといいなー・・・まったたびー♪まったたびー♪またたびにゃんにゃんたのしーな♪」

 皆の喜ぶ顔を想像して思わず、自作のまたたびの歌が飛び出すゴキゲンなサーバルちゃん

 そして、程なくしてじゃんぐるちほーの川辺に到着した

 バスから降りて川沿いを散策しているとすぐにジャガーとカワウソが見つかった

「おーい!ジャガー!カワウソー!」

 サーバルちゃんのウキウキした声がじゃんぐるちほーに響く

「お、サーバルとカバンじゃん、どしたの?」

「あ!サーバルとカバンだ!」

「ど、どうもこんにちは、実はサーバルちゃんがジャガーさんに渡したいものがあって・・・」

「へ?私に?」

 突然の申し出に虚を突かれ、素っ頓狂な声がでるジャガー

「とーってもいいものなんだよ!はい!」

「これは・・・?」

 突然渡された謎の枝に困惑するジャガー、それをみていたカワウソは目を丸くして

「いいなーわたしもそれ欲しい欲しい!ジャガーちょっと貸して!」

「はいよ」

「わーい!・・・うーん・・・タダの葉っぱついた枝だねぇ・・・ジャガー分かる?」

「わからん」

 怪訝な顔をしてカワウソがブンブン振り回しているマタタビの枝をジャガーは見つめた

「あ、これはマタタビと言ってねこか?って種類のフレンズさんが喜ぶものなんです」

「これね、すっごいイイんだよ!ふみゃ~ってなるの!ジャガーも試して!」

「へぇ・・・じゃあ私がそのねこか?なんだ…で、これどうすればいいの?」

「えっとね、とりあえず嗅いだり噛じったりしてみて!」

「私やりたいやりたい!クンクン・・・?・・・カジカジ・・・ぺっぺっ!まずーい!たのしくなーい!いらなーい!ジャガーこれ返すね!」

 突然突き返されたマタタビの枝を持って呆れ顔のジャガー

「えぇー・・・なんだよぉ・・・ふぅん、タダの枝にしかみえないけどなぁ・・・クンクン」

「どうジャガー?どう?」

 ルンルンとした瞳でまたたびを嗅ぐジャガーをカワウソが覗き込む

「いや、わからん、ん?まて…これは…わ、わからん…あれ…わからん…おお…」

「どう?うみゃ~っとする?」

 いつものキリっとした顔のジャガーがどんどん恍惚としたとろけた表情になっていき

「あ゛あ゛ああ~ぉぉぉん・・・ゴロゴロ・・・」

 唸るような嬌声を出しながら喉を鳴らし地面を転がり始めるジャガー

 普段からは想像もつかないジャガーの姿を目の当たりにしたカワウソは尻尾をピンと伸ばし目を輝かせる

「きゃははははは!!!ジャガーおっもしろーい!!!あはははは!!!」

 あまりの衝撃的光景に腹を抱えてカワウソも笑い転げはじめた

「うんうん、ジャガーもうみゃ~っと幸せそうで私嬉しいよ!」

「ジャガーさんすごいにやけ…いや幸せそうな顔してるね…」

 ひと仕事成し遂げて満足そうなサーバルちゃんとジャガーの変わりようにたじろぐカバンちゃんは地面で転がる二人を眺めた

 ひとしきり笑い転げたカワウソは立ち上がり手で顔を洗っているジャガーの元に座り込む

「ジャガーすっごくたのしそー!そっかーこれが好きなんだ~・・・”!”・・・こちょこちょ~」

 何を思ったかいきなりマタタビの枝先でジャガーをくすぐり始めるカワウソ

「あぉぉぉぉん~…にょははは!!!や、やめひぇくれぇ~あはははは!」

「きゃはははは!たーのしー!あはははは!!!ジャガーこれ好きなの?ここがいいの?」

「わ、わかんにゃい、じぇんじぇんわかんにゃいぞぉぉぉぉ~」

「ぷっ、ジャガーの顔へんなのー!へんなのー!きゃははは!」

 マタタビとカワウソのくすぐり攻撃で顔が崩壊するジャガー、口が半開きになり笑顔のような泣き顔のような尋常ではない表情で地面を蠢く

「す、すごいことになっちゃったね・・・」

 別人のようになってしまったジャガーをみてすっかりポカンとして棒立ちになっていたカバンちゃんがサーバルちゃんの方を見ると

「二人とも楽しそうでなによりだね!持ってきたかいがあったよ!他の子にも早く分けてあげようねカバンちゃん!」

 既にサーバルちゃんの目は次の目標へと向いて居たのだった・・・

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