返事もない。
全部を持ってはいけない明日には
この言葉を聞いた時には漠然とした理解しかなかった。けれど、今は違う。きっと、わかってしまった。
ふいの直感だった。考えないようにしてただけでそれは自明だったから、もう何もかもがモノクロみたいに色あせた。
ここにいう。
僕の友達は死んだ。
もう会えない。
いつかもう一度だけ会うことだけを励みに生きてきたのにもう会えない。それがこれほどまでに厳しいことだなんて思ってもみなかった。
いや、正確には思うことができなかった。こんな悲しいこと。
僕の友達、女の子で、バンドマンで、僕よりもずっと辛い世界で生きていた彼女。
彼女が頑張ってる間くらいは僕も頑張ろうと必死になって生きていた。
……必死になって、だなんて比喩でも面白くない言葉だと思う。
僕は死なずに彼女だけが死んでる。
それぞれの人生だ。だから彼女は「私に縛られないで」と言っていた。何もしないでいること、その免罪符に彼女の言葉を使っていただけだったと今気づいたよ。
さようなら。
僕の友達。
ねぇ、僕はこれから先、君に縛られて生きたいと、そう考えているよ。もう何の役にも、誰かの役にもならないことだね。分かりきっていることだけど。
しかも僕のことだからいつか君のことも忘れてしまうと思う。
ごめんね。
これまでの僕の人生のように、このモノクロにも少しずつ色づいていつの日か君の色とは違う色で生きていく自分にそのうちなってしまうんだ。
それは怖いけれど、確かな予感なんだ。
ずっとそんな生き方ばかり。
君のことを思う気持ちがあっても、僕は必死になれないから。
必死に
ねぇ、全部を持ってはいけない明日には、君の思い出が、必要なんだ。
ねぇ
返事もない。
彼女は瞳の中だけに あまり @amarimono
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