第25話 情報弱者

 田沼耕作は思った。この世界で生きていくにはやはり情報が不足していると。手っ取り早く現代の世界がどういった世界か大雑把でもつかむためにはテレビを視聴するに限ると。そこで東上に尋ねた。

 「あの~テレビはありますか?」

 「テレビね~まあ、たまに観ることもあるけど最近はもっぱらユーチューブが多いよ~」

ユーチューブ?なんじゃそれは!?海外の放送局か何かだろうか?BBCとか。日本でも海外の放送局を受信できるようになったのだろうか。

 「それは日本語でも放送していますか?」

 「日本向けのユーチューブですよ~まあ、グーグルが運営しているみたいですけどね~」

 どこが運営していても問題ないけど仮にも公共の場に提供しいるメディアであるならば嘘の情報を流したりはしないであろうと判断する。この時田沼耕作は現代のネット社会について大きな誤解をしていた。

 「今はなにもすることがないのでそのユーチューブとかを見せて頂けないでしょうか」

 「それはいいですよ~なかなか面白い動画もありますからね~」

放送ではなくて動画とはこれいかに?田沼耕作が生きていた時代?にもビデオはあったがそれは個人が楽しむためのものであり一般に公開されるような手段は存在しなかった。なので大いに興味が湧いてきた。

 「是非とも見たいですね。出来ればニュースもあればいいですが」

 「ニュースもありますよ~。しかし、あまり面白くはないでしょうな~」

まあ、今の状況からすると娯楽を求めているのでなくて情報を求めているのではあるが。

 するとまたしても東上は例のパソコンが置いてある机のところまで僕を連れてきた。

 「このアイコンをクリックすると観れますよ~」

現代のパソコンの操作方法は派遣会社を探してくれた時に見ていたので分かっていたのでそのクリックとやらをしてみる。

 一番最初にみた印象ではかなり多くの絵がならんでいるようでその下に説明というかタイトルが書かれていた。アニメみたいな女の子があったり写真に撮った人物もあった。よく見ると時代劇のタイトルがあった。それは僕が今?観ている時代劇だった。お気に入りの「やんちゃ将軍」だった。そのほかにも「必殺苦労人」もあった。

 「すみませんが、このパソコンをしばらく使わせて頂けないでしょうか?」

 「そうですな~、私がいない時なら構いませんよ~しかし、ネット廃人にならない程度にね~」

 ネット廃人とはこれまた分からない概念である。酒とか薬物でなるのは知っているが直接体に入れるものではないものからどうしてそうなるのか?

 疑問を抱きつつも田沼耕作はユーチューブの昔に?放送されていた時代劇にのめり込んで行った。当初の目的を忘れて現代の情報収集をおろそかにするほどに。かくして情報弱者になってしまうのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る