第24話 自宅待機

 派遣会社から帰ってきて今日一日がまだ終わっていないのに田沼耕作は非常に疲れを感じた。しかしながら、これから生活に必要な物を揃えなくてはならない。歯ブラシと歯磨き粉、タオル、髭剃り、櫛、服に下着などである。情報を収取するために新聞も購読したほうが良いかもしれない。あとこれは体調を整えるために布団も欲しいがそうなるとかなり出費がかさむかも知れない。東上の部屋に住まわせてもらえることになったが布団までも貸して欲しいと言えば厚かましいと思われるかも知れないと一抹の危惧を抱いたがそこは思い切って尋ねることにした。

 「こんなことは申し上げにくいのですが、布団はありますでしょうか?」

 「布団?ああ、布団ですね~。まあ、今は夏場で暑いからなくても寝れますよ~」

 やはり、案の定厚かましいと思われたに違いない。まあ、冬が来る頃までに用意出来ればいいとも思うがそうなると寝て起きた時に体のあちこちが痛くなっている可能性もある。快眠するためにも必要である。

 「それはそうですが、起きた時に体が痛くなりませんか?」

 「確かにその可能性あるようですね~ちょっと探してみますよ~」

東上の部屋には大量の書籍以外に何に使うのか見ただけでは分からない様々な器具とか道具が置いてあった。奥の部屋に行くと何やらゴソゴソと物音が聞こえたがしばらくすると手に長細いフワフワとした物体を持って出てきた。

 「これは私が昔に発明した一分で寝落ち出来る快眠グッズですよ~」

そんな快眠グッズはどうでもよくて普通の布団が欲しいだけである。それにその長細い物体には顔が描いてあった。しかも何だかアニメに出てきそうな美少女の顔である。それを下に敷いて寝ると快眠どころか余計な妄想をして寝るどころではないとも思う。ないよりはましかも知れないが。とりあえずここは我慢するしかないようである。

 「ありがとうございます。それを下に敷いて寝るのですね」

 「いや~違いますよ~、抱いて寝るのですよ~」

なに!抱いて寝るとは!この世界では布団という概念そのものが違っているのかも知れない。それでは冬場の寒い時期にどうやって寒さを防ぐのか?それとも抱いて寝るだけで寒くはないのか?こうなるとほかの日用品も僕が知らないものだったりする可能性があるかも知れない。ここは一人で買い物に行くと危険な目に合うかもしれないのでいやではあるが東上についてもらうしかないみたいである。

 「そうですか。抱いて寝るのですね。なかなか斬新な発想ですね」

 「そうでしょう。このシリーズは他にもいろいろとありますよ~飽きればカーバを替えて違う女の子を楽しむこともできますよ~」

 この東上という人物はひょっとして変態かも知れないと密かに思ったりするがこの世界では普通なのかも知れない。そう言えば街を歩いていた時に裸に近い恰好をした女の人のポスターがでかでかと貼ってあるビルを見かけたりしたし。

 「いろいろとお気遣いありがとうございます」

 「そんなに遠慮することはないですよ~」

とりあえず問題は解決?したようであるので今日はなにもしなくて明日から本格的に活動することにすると決める。早く派遣会社から連絡が来ることを祈りながら今は自宅待機である。

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