第21話 派遣会社訪問
登録するにはどうすればいいのかと東上に訊いてみることにする。すると東上はパソコンの画面を指さしながらこう言った。
「なに、ウェブサイトから訪問の日時とその他必要なことがらを入力するだけですよ」
「そうですか?まあ、今は暇なのでいつでもいいですよ」と答えてみる。すると東上はまた目をらんらんと輝かせながらのたまわった。
「善は急げといいますからな。早速、明日あたりはどうですかな?」
また急な話になったものである。いくら暇だと言っても心の準備というものがいると言うか少しはこちらのことを斟酌してくれてもいいではないかと思ってしまうが弱い立場にあることもこのさい否定できないのも事実である。
「それでその派遣会社はどこにありますか。あまり詳しくない地域だと行き方がわかりませんからね」
「そんなに心配することはないですな。派遣会社までの地図をプリントアウトしてあげますから」
ここまで東上と会話を続けてみてなんだか鷹揚な態度が少し鼻についてきたので早くこの場を立ち去りと思ってしまう。しかしながら、その気持ちが悟られないように努めて冷静に言ってみる。
「ええ、そうですね。早速その地図を出してくれませんか?」
「お安い御用ですな。場所は地下鉄を乗り継いで市内の中心地である田梅あたりですな」
そう言いながら東上はプリントアウトされた地図をこちらに渡してくる。なるほど以前から知っていた地下鉄の路線には違いないが知らなかった路線も存在していた。
「ありがとうございます。ところで、明日の何時に予約をいれたのでしょうか?あまり早い時間だと眠たいですからね」
東上は僕のそんな言葉聞きながら今の自分の立場をわきまえろと言わんばかりの表情を浮かべながらまたこう言った。
「予約の時間は朝の十時にしておきましたよ。それから服装はラフな格好でいいですな。持ち物は筆記用具ぐらいあれば事足りますな」
「そうですか?案外気軽に訪問できそうですね」
そう言いながら手渡された地図を見ながら現場までの所要時間をざっくりと思ってみることにする。それから東上の顔をみるとさらにこう付け足してきた。
「明日に備えて今日は早く寝ることですな。泊まるところがないなら私の部屋に泊まっていってもいいですが、どうですかな?」
「ご厚意はありがたいですがそこまでお世話になるのも申し訳ないですからね」と返事をしたが実のところこの部屋で寝ているあいだに何か変なことでもされのではないかという疑心暗鬼が浮かんだというのが本心であったりする。なのでそそくさとこの場から立ち去ることにする。
「今日はありがとうございました。無事働くことが出来たらまたお礼にお伺いしますから」
これからまた例のカプセルホテルに向かうことになるわけだがとりあえず将来に対して少し希望がもてたような気がした。
一方の東上は内心こう思っていた。(なかなか面白いことになってきたわい。はたしてあやつは自分がこんな目になったのがわし等の実験のせいだと分かればどんな行動でるかのう。まあ、最近は電車内で暴れ回る頭のおかしいやつもいるし。まさかわし等以外に同じような実験をしている人がいるとも思えんがのう?)
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