第13話 田沼耕作の考察
とりあえず、まだ時間的には早いが今晩泊まる予定にしてある駅前のカプセルホテルを目指すことにする。ビルの並びを見ていると居酒屋とか怪しげな風俗店もあるなかにネットカフェと看板が出ているのが目に付いた。カフェは分かるがネットとは何のことか?ネットと言えば「網」のことだとするとそのまま翻訳して「網喫茶店」になると思われる。思えば「喫茶店」ほど様々にその業態を変えている飲食店はないだろうと思った。またしばらく歩くと今度は「メイド喫茶」と書かれている看板がありアニメに出てくるような小さい女の子の絵が描かれてあった。何かアニメが好きな同好の人たち向けの喫茶店であろうか?しかし随分とマニアックな店である。ちょっとどんな物か入ってみたい気もしたが無駄遣いは出来ないのでそこは我慢することにする。
まるで異世界に入り込んだ感じがしなくもない。今は収入のあてもないが早く仕事を見つけお金が入ってくるようになれば先ほど見かけた店なんかにも是非とも行ってみたいものである。こう思うとこの異世界も刺激に満ちて楽しく思えてきた。しかしこの世界のことについて考察しなければならない。まあ、人が生まれてくる時は自意識を持たずに生まれてくるのでそんな考察をしなくてもいいが現在の自分は肉体的にも精神的にも大人である。見かけは子供、頭脳は大人というキャッチフレーズの探偵もののアニメもあったがそんな風に見かけが子供なら警察とかに駆け込んで保護してもらえることも可能ではある。ところが残念なことにどう見たっても大人に見える自分が何かの庇護にあずかるとは思えない。仮にそんな行動を取ったとしても世間の誰も相手にはしてくれないだろう。子供の頃は大人になればいろいろと自分の自由に出来て素晴らしい生活があると思っていたが非常につらいこともあるのが今更ながら実感した。
こうやって周りの建物とかを今まではあまり注意深く見たことはなかったが、とにかく今は目に付くものを観察することから始めたほうが良さそうである。何かそこにこの世界を生きて行くヒントがあるかも知れない。「シュレディンガーの猫」の実験をマカロニ荘の謎の外国人からされたという確かな証拠はないし、仮にそうだとすれば死んでいる自分はどうなったのか?そのまま火葬場で荼毘にふされたのか?大家さんの話では死んでいるところを発見されたということらしいがその後遺体をどうしたかまでは聞いていない。
とにかく、今晩はカプセルホテルに泊まりまた明日にでも再びマカロニ荘を訪ねてみることにした。
そんな様子を後ろから観察している白衣を着て頭は総白髪の人物がいた。
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